2009.05.10.

夢  魔
02
MIN



■ 第1章 淫夢2

 朝食を採って支度を終えた美紀は、学校に向かう。
 学校までは1q程、徒歩で10分掛からない道程。
 時間と天候により、美紀は通学手段を変えている。

「ん〜っ…。今日は天気が良いから、歩いて行くかな…。この時間だと、会えそうな気もするし…」
 玄関を出て大きく背伸びを一つして、携帯電話の時計で時刻を確認し、美紀は呟いた。
 通学路を歩いていると、同じクラスの友人や中学時代の知り合いと、擦れ違い挨拶を交わす。
 美紀に声を掛ける者は、かなりいた。
 美紀はその容姿と飾らない性格で、小さな頃から友人の多い方だったからだ。
 ニコニコと微笑みながら、歩く美紀の足がピタリと止まり、一本の電信柱を見詰める。
(あ、ここも…わたしの…おトイレ…。お外の散歩…ここで…するの…)
 美紀の頭の中に、また甘い痺れにも似た感覚が走り、美紀は身体を震わせる。
 立ち止まった美紀の後ろから、小走りに駆け寄り肩を叩く者が居た。
 美紀は肩を叩かれた瞬間、自分が何を考えていたか、忘れてしまった。

 美紀の肩を叩いたのは、同じクラスの親友・前田沙希(まえだ さき)だった。
 沙希はテニス部に所属していて、こんな時間に会うのは珍しかった。
「あれ、沙希どうしたの? 朝練は?」
 美紀の質問に、ニッコリ笑って沙希が答える。
「えへへへっ…寝坊…しちゃった…」
 頭を掻いて、舌をペロリと出しながら、沙希が答える。
「それより、美紀こそどうしたのよ、こんな所で立ち止まって、ボーッとするなんて」
 沙希が美紀に質問を、投げ掛ける。
「えっ? 私そんな事してた?」
 美紀が驚いたように、沙希に答えると
「うん、確実に30秒は固まってたと思う…」
 沙希は美紀の顔を見詰め、形の良い顎を引きながら答える。

 お互い肩を並べて歩き始める。
 1ヶ月ほど前に2年に上がったばかりの、2人は1年の時からのクラスメートで、入学して直ぐにうち解け合い、親友になった。
 美紀は1年の時には、一度も学年4位を譲る事の無い才媛で、沙希は中学の頃から、全国大会に出場する程の実力者だった。
 そして、この2人の最大の特徴は、その美貌とスタイルの素晴らしさだった。
 美紀は身長155pと小柄だが、均整の取れた8頭身でサイズは42sB80W59H75で、幼さが残る笑顔がとても魅力的だ。
 対する沙希は、身長165p体重53sB92W61H87とかなりのボリュームを備え、その身体はスポーツで、鍛え上げられ引き締まっている。
 どちらも違うタイプの相手を羨ましがり、お互いを尊重している関係だった。
 学校に2人並んで歩いていると、誰もが振り返り声を掛ける。
 そんなアイドル的存在の2人。

 しかし、この2人には、お互いに言えない悩みが有る。
 そう、お互いが同じ夢の悩みだった。
 そして、同じ悩みを持つ者がこの町に、後3人居る。
 彼女達は、一様に毎夜のように、淫夢に悩まされていた。

「今日のデーターは、フン…マウスNo.2は、反応が鈍いな…δ波とγ波の混在時間が短すぎる…。やはり、経験の差か…No.3も同じようなモノだな…反応が良いのは、やはりNo.1か…こいつはもうすぐ、次の3段階目に進めるな…。No.5は始めたばかりだが、データーをフィードバックしただけの事は有る、伸び率が格段だ…。問題は…No.4か…こいつは、中々手強いな…意志の強さか…」
 パソコンのモニターに向かって、ブツブツと囁く白衣の男。
 モニターには、No.が書かれた横に4色の折れ線グラフが、伸びていた。
 キーボードを叩き、何かを打ち込んでは、消去しまた打ち込む。
 男は作業を終えると、リターンキーを押し、何かのプログラムを作動させ、パソコンの電源を落とす。

 場所は変わって、学校の保健室。
 保健医の上郷弥生(かみさと やよい)は、白衣を羽織りながら、気怠い身体をさすって居る。
「ふぅ…この頃寝が浅いわね…やっぱり、あの夢のせいかしら…。確かに今は彼氏も居ないし…満たされて無いけど…あんなのって…」
 一人呟きながら、乳房に触れると、自然と指先がうごめき出す。
(ああぁ…白衣を着て…保健室にいると…つい…手が動くわ…)
 弥生は夜毎、繰り広げられる、夢の中で決まって、保健室でオナニーをして、大切な方を待つのである。
(ああ…こうしてると…扉が開いて…私の首にリードを掛けてくれる…大切な方…ああぁ…本当に…私を…)
 弥生の指が白衣の中に忍び込み、スカートをたくし上げ股間に指が伸びる。

 その時、保健室の扉をノックする音に、弥生は我に返る。
 着衣の乱れを、慌てて直し扉に向かって、声を掛ける。
「は、はいどうぞ…開いてるわよ…」
 ややうわずった声で、弥生が答えると
「失礼します。上郷先生…お腹の具合が悪いんで…薬をもらえませんか…」
 一人の男子生徒が、扉を開けて入ってくる。

 メガネを掛けた長身で線の細い生徒を見詰め、弥生は記憶を探る。
(あれ…この子…確かどこかで見た事有る…どこだっけ…なんかの本に載ってた?…)
 この学校は2年前まで女子校で有ったため、男子生徒の数が極端に少ない。
 全校合わせても40人を切る程度だが、その分優秀な成績を修める者が多い。
 生徒の一人が、どこかの雑誌で賞を取っているのも、何人もいた。

 少年はそんな中の一人かもしれないが、妙に記憶が曖昧で判然としなかった。
 弥生はその少年がとても気に成ったが、授業の時間も迫った生徒に、手早く整腸剤を与えた。
 男子生徒は、一言礼を言うと直ぐに薬を飲み込み、保健室を出て行った。
 後に残された弥生は、またも記憶を探り出すが、一向にその記憶を見つけられず、仕事に戻った。
 身体の気怠さを耐えながら、日誌を書いて事務仕事をこなす。

 上郷弥生は26歳で、この学校のOGだった。
 東京の大学を出た後、都内で働いていたが両親を事故で亡くし、自宅の管理のためこの町に戻って来た。
 薬学を専攻していた彼女は、自宅に戻って父親の跡を継ぎ、漢方の薬剤師に成ったが、それだけでは生計が立たず、去年の春から母校の養護員を始めた。
 弥生の身体は身長160p体重47sB83W60H80とモデル並みで、少し吊り上がった大きな目、すらりと伸びた鼻梁、薄い唇に細く無駄のない顎のラインを持ち全体的に、冷たく気の強そうな顔に、銀縁のメガネを掛けている。
 しかし、実際は内気な性格で無口なため、友人も居らず人付き合いが苦手なタイプであった。
 そんな彼女は、夜毎自分を悩ませる淫夢に、どっぷり嵌り込んでいた。

 授業のチャイムが鳴り、弥生は椅子に深くもたれ掛かる。
 実際授業が始まれば、弥生の仕事は無いに等しい。
 たまに気分が悪くなって、生徒が保健室を訪れるのは、3時限目を過ぎた辺りだし、今の時間帯に生徒や教師がここを訪れる事は、まず無かった。
 深く椅子に腰掛けた、弥生がうつらうつらと居眠りを始めた時、どこからとも無く時計のアラームが聞こえる。
 すると、弥生はフラフラと立ち上がり、保健室のベッドに歩いて行き、コトンと横になると途端に眠りについた。
 眠りにつくと同時に身体から、すっと力が抜け瞼の裏で、瞳が激しく動き出し、うっすらと開いた唇から淫声が漏れ始める。
 弥生はここでも、淫夢に侵され始めた。

 弥生が淫夢に侵されている頃、郊外の森下家では、昨晩深夜勤を終えた、美紀の母親、森下梓(もりした あずさ)が疲れた身体に、熱いシャワーを浴びせていた。
 梓はこの町の総合病院に勤務する、形成外科医だった。
 高校で夫と出会い、卒業と同時に結婚、第一子で有る美紀の姉美香を出産し、直ぐに美紀を身ごもる。
 しかし、出産直前に夫は事故で亡くなり、乳飲み子二人を抱え途方に暮れたが、持ち前の努力と頭脳で大学に合格し、夫の保険金を使いながら、医師免許を習得し今に至る。
 実年齢は36歳だが、バイタリティー溢れるその姿勢のせいか、10歳は若く見える。
 美姉妹の母親だけ有り、その容姿もスタイルも申し分の無い、美人女医であった。

 しかし、この美人女医も、淫夢に悩まされる一人だった。
「ふ〜っ…最近どうしたのかしら…欲求不満なのかな…確かに、慶一郎さんとは最近会えてないけど…それにしても…あんな夢…」
 梓は同じ病院の外科部長である、柏木慶一郎と現在不倫関係にある。
 柏木は梓の6っつ上だが次期、副医院長の呼び声の高い、切れ者で有った。
「最近少しも会ってくれないから…身体が疼くのよ…フンだ…」
 梓は火照る身体をシャワーで鎮め、疲れを癒そうとする。

 しかし、そのシャワーを浴び始めると、梓の身体に変化が起こり始める。
 身長162p体重51sB90W63H85の身体は、うっすらと脂肪が乗りそれが艶と成って現れた豊満な身体。
 2人の子供を産んだとはいえ、早くに夫を亡くし、女手一つで子供を育てていたため、女の喜びを知ったのは、ごく最近だった。
 その熟れた身体は、喜びを教えられただけで、満足する程の回数をこなしていない。
 言わば、お預け状態が続いているような物だった、その身体がシャワーの水流で、目覚めてしまった。
 自然に乳房に伸びた手が、緩やかに乳房をもみ始めると、シャワーヘッドを掴んだ右手が、下腹部に降りて行き、オ○ンコに熱い水流を当てる。
 熱い奔流がクリトリスを刺激し、急速に快感を押し上げる。

 高ぶる快感の中で梓は、自分の彼氏以外の名を呼んでいる。
(ああぁ…お願いします…許可を…許可を下さいませ…○×△様…梓はもう我慢できません…)
 しかし、おこりが掛かったように震える身体は、絶頂を向かえる事が出来ない。
(お願いです…お願いします…何でも…従いますから…イカせて下さい〜…)
 そして、どれだけ快感が襲おうとも、梓は絶頂を迎えられなかった。
 はぁはぁと荒い呼吸をする梓は、拗ねたような表情でシャワーヘッドを放り投げると、お湯を止めた。
 欲求不満は高ぶるばかりで、その身体を鎮める事も出来ず、梓は風呂場を後にする。

(何なんだろう、最近こんな事ばかり…前は簡単にイケたのに…こんなんじゃ、生活にも影響出ちゃうわ…)
 梓は火照った身体をもてあまし、バスルームから出てバスローブを羽織ると、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。
 冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出すと、プルトップを開け一口あおる。
「あーもう…ムシャクシャするー! 何なのよ一体…」
 梓は言いようのないフラストレーションをため、地団駄を踏む。
 すると、どこからとも無く時計のアラームが鳴り、それを聞いた梓の表情から意志が消える。
 缶ビールを置くと、フラフラと寝室に進み、ベッドに横になると、そのまま深い眠りに落ちてゆく。

 梓が寝室で眠りに着いた頃、美紀と沙希は移動授業で廊下を歩いていた。
 3時限目の授業は、化学実験室で実験の授業だった。
「ねぇ…小室先生ってさ…何か良くない…」
 沙希が小声で美紀に耳打ちしてくる。
 美紀は、驚いた顔で沙希を見詰める。
 化学教師の小室はどちらかと言えば、もてるタイプの人間では無く、人によっては激しく嫌悪するタイプの、中年の陰気な教師だった。
 だが、美紀はその事で驚いたのではなく、美紀も人知れず想いを寄せていたからだ。

「あの白衣を着て長身で、メガネの奥から覗く瞳が…ゾクって来るの…変かな私…」
 頬を赤らめながら沙希は、美紀に告白する。
(ど…どうしよう…私も沙希と同じだ…。沙希も小室先生…でも、みんな気持ち悪いって言うのに…どうして…)
 美紀は親友の沙希と思い人が被ってしまった事に、強い罪悪感を感じながらも、同意した。
「そ、そうね…良いかもね…私は…そんなに思わないけど…。見る人が見たら…そう思っても仕方がないんじゃない…」
 美紀はしどろもどろに成りながら、沙希に答えた。
 沙希はそんな美紀の言葉を、訝しむ余裕もなく、自分の思い人に意識を向けていた。



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