2010.05.12.

許して悪魔様
02
非現実



■ 命を大事にね2

いつの間に現れたのだろうか。
その人は……人?。
あぁ……これは所謂コスプレの一種なのだろう。

「ぇえっと……健太のお友達です……か?」
「フン、お友達と来たか」
「ぁぁ、えっと……凄いで…す……ね。
ああっと、あの私は…アレ?!」

そう、そう言えば身体が動かないのだった。
あまりのインパクトで腕が痛いことも忘れていた。
窮屈すぎる格好は腕が万歳のままである事を理解して、私は見上げて声を上げていた。

「ぁ…と、えぇえーーーっ……な、何コレ?」
「余り賢い娘ではなさそうだな、自分が何されているかも解らんか?」
「いや、いやいやいゃ……それは解るけど……状況が輪から……まっ!!。
まま、ま…まままさかっアンタ強盗っ!!。」
「ゴウトウ……何だソレは?」

大柄なコスプレ男が首を傾げて聞いてきた。

「あの強い光は何かの兵器で、私を縛って……お金を盗む気でしょっ!?。
って……っていうか、私をまさか……!!。」
「クックック、ようやく話が噛み合ってきたようだな」

全身から汗が吹き出た。
(コイツ……変態だ……変なコスプレしながら私を犯す気だ……)
Hは好きだが、こんな変態染みたのは絶対に簡便だ。

「わ、私が……な、何をしたって…い、いう…のです……か?」
「罰を与える為に私がお前を召喚したのだ」
「……罰って」
「身に覚えがあるであろう?」

…… ……全く持って思い当たらない。
(っていうか火!)

「あ……あの、せめてアノ火だけは何とかしてもらえませんかっ!。
火事になったら、それこそマジでヤバイです!。」
「……召喚された罪人如きが私の部屋を火事呼ばわりか?」
「いや、もうアノっ、火事に…… ……え?」

周囲に目をやるとそこは……。
(健太ん部屋じゃってか、ココ何処?)
ごっつい荒削りな石で積み立てられた部屋で、そう言うなれば……。

「地下室?」
「そうだ、ここは私の城の地下牢だ」
「城? 地下牢? ……は?」
「そして、お前が罰を与えられる場所だ」
(変態コスプレ男に誘拐され、天井から両手をつるされているのが今の私……?)

身が危険だという事は重々理解したが、いつどこで私は誘拐されたのだろうか……いくら思い出しても出てこない。

「あ……あの……手を解いて」
「初めての罰儀式だからそれは出来ぬそうだんであるわ」
「わ、私はっ……私を……帰して!!」
「罰儀式が終わったら元の世界に帰してやる」
「も…ぅっ、なっ……何訳解んない事っを、真面目に聞いてくださいっ!」

この変態は心底頭がイカレているのだろう。
言葉遣いや口にする言語がおかしい。
健太の友達とはいえ、こんな形での身の貞操は断固守るしかないのだ。

「くだらない服とか着てないで、さっさと正体見せろ、こンの馬鹿オタクヤロー!」
「私の服が下らないだと?」

覆面の効果なのだろうか、黄色い瞳が私を捉えた。
……変態オタク野郎……そう思うと何だかちょっと勇気が沸いてきた。

「そ、そうよっ、緑色のボディースーツなんか着込んでキモイんだよっ!。
どうせガリガリの癖にスーツは筋肉ムキムキでさぁーっ!。」
「…… ……小娘、これが肌だと解らんのか?」
「……バッカじゃないの?」
「貴様の方がオカシナ格好をしてるではないか」

うちの制服は結構可愛いと有名で、制服が着たいからという理由で入ってくる子もいるのだ。
女子高生の制服がおかしいとか意味が不明だ。

「はぁ?、制服だってのも解らないの?」
「征服とは随分でかく出たな、小娘」
「普通ジャン、手言うかアンタのその小汚い服さっさと脱ぎなさいよ」
「ふぅむ……肉体だというておるのに解らん小娘め。
……いいだろう、肉体だという事を証明してやろう。」
「ぇ……ぇぇ……なっぁ、何っ……よ、よらっぁ!」

ゆっくりと近寄ってきた、緑色のボディースーツの変態男に頭を掴まれた。

「目を……開けよ」

嫌々をするのだが、ガッシリと掴まれた頭が動かない。
若干遠くから見ていた分ではそれがボディースーツであると思っていたのに……。
……今ではそれは間違いだったというのが直感的に気付いてしまっているのだ。
近付くにつれ、その肉体的な血管、被り物とはいえない目や口に耳。
そして極めつけの体毛。
(嘘だ……嘘だ……よ)
最終的に目で確認してしまったら私は狂ったのだと思う他ならない。

「信じた、ようだな」
「…… ……」

信じられない、信じたくない。
何かどうかしてしまったのだろうか……変な夢でも見ているのではないのか。
夢なら早いところ覚めて欲しい……。
嫌な事が起こればきっと起きるだろう……。

「あ、あなた……誰? …… ……ココは何処?」
「私の名は魔王ヴァイン、ココは私の城だ」
「ああ……夢の中で会話しちゃってるよ……私」
「これは夢ではない、お前は私に召喚されてここにいるのだ」
「召喚って……マンガやゲームじゃないんだし……私は……」
「そうだ、その通り、ココはゲームの中の世界だ」
「ゲームか……そんなの私やった事ないよ」

ゲーム……ゲーム……なんか最近で関わったような記憶があった。

「お前はこの世界と通ずる件があり、私に召喚されたのだよ」
「ゲームと通ずるってナニよソレ……」
「胸に手を当てて思い出すがよい」
「手、吊るされてるんデスケド」

夢と理解すれば何だかどうでもよくなってきていた。
さっさと覚めてくれれば、後は好きな音楽でも掛けながら気分転換すればいいのだ。

「この大陸の名は、淫行姫君の懲罰の汁地獄というのだ」
「はぁぁ〜〜?」

酷く卑猥な名前というよりも、馬鹿馬鹿しくなってくるくらい酷い夢だ。

(ナニよソレ……大陸の名前がおかしいよ)
「どうだ、お前に通ずるものがあるであろう?」
「無いよ、ある訳な……」

頭の片隅で大陸の名前が浮かんだ。
(…… ……私がHをしてるから?)
今日の相手は正直あまり上手くは無かった……だから身体が満足しておらず、不覚にもHな夢を作り出してしまっているのかもしれない。

「お前がこのゲームと接触し、ようやく私はお前に罰を与える事が出来るようになった」
「接触って私ゲームなんかやらな……あ!」

そう言えば気絶する前に健太のPCを……何となく夢の創りが解った気がした。
(それにしても……健太の奴ぅぅ〜〜エロゲなんてやりやがってぇぇ〜〜〜)
沸々と怒りが込み上げてきた。
(パパに言いつけてやる!)
そうとなればさっさとこの気絶状態の夢から離脱しなければ……。
目が覚めるような怖い展開までさっさと進めてしまおう。
罰というのが怖い要素っぽい。

「んで、私は何の罰を受けるの?」
「お前の名は?」
「希美子」
「罪人希美子、お前は夜な夜な色んな男とセックス三昧だ」

何だか面倒である。
夢の癖して展開が丁寧なのだ。

「ハイハイ」
「貴様の罪は淫行による不埒罪だ」
「はぁ……」

一気に夢の質が落ちた気がした。

「よって貴様には…… ……悪魔の子を孕んでもらう」
「ナニソレ、意味解んない」
「貴様の穢れた身体は、悪魔の子を産むに相応しい程穢れておるからだ」
「……何でよ」

何か夢とはいえ……それは酷いような気がして、私は反論している。

「貴様の膣内は、今まで受けた精子の死骸が充満しておる」
「あ、あっ…洗ってるってば!!」
「それは無駄だ、精子の死骸は怨念として貴様の膣内にこびり付いておる」
「……酷っいい!!」
「酷いのは貴様であろう、ただ欲望に溺れ何億何十億という精子を殺したのだ。
まぁそのお陰で悪魔の子を宿す主が決まったのだがな。」
「ちょっと待ってよ……ねぇ……これってゲームの内容なの?」
「そうだ、ようやく理解したか」
(健太ぁぁぁああああーーーーっ、あンの馬鹿弟ぉっ、何で変態が家族にっぃいいい!!)

怒りは頂点に達していた。
なので、魔王ナントカの次の言葉は耳に入っていなかったのだ。
いきなり赤いチェック柄が入った紺のスカートを捲られ、私は叫んだ。

「ちょっ、何すんのよっぉ!!」
「先に言うたであろうが、悪魔の子を種付けするのだ」
「た、た……種付けとか……変な風に言わないでよっ」
「希美子というたな……お前は大分誤解しておるぞ」
「……な、何がよ」



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