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それは悪夢にほど近いなにか2
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「東明、ペアルックしよ! 俺もこういう服着てみる!」
バサッと目の前に見開かれたページに盛大に眉間に皺が寄ったのがわかった。
「駄目です」
ばっさりと切り捨て、ローテーブルに50パック298円の紅茶が注がれたカップを置く。
(そういえば静貴さんは常識外れなほど金持ちだけどこんなのでも文句言わずに飲むよな……)
むしろ香芝用に清水の舞台から飛び降りるレベルの値段がする紅茶を準備していたら怒られた。
もてなしは無理にまでするなと言われたし、そもそも不要だとまで言われた。
そういうわけにもいかないのだとごねたのだが結局はいまのやり方に落ち着いている。
贅沢な生活をしているくせに、贅沢ではない暮らしもできるようだ。
贅沢しない生活ができるのはどうやら生育環境によるらしいのだが詳しいことは東明にはわからない。
(早くに両親が亡くなってるんだったか。施設育ちだとか言っていたし。ん?死因はなんだって言ってたっけな……)
「東明」
(ああ、そうだ。確か)
「東明!」
「え!?あ、はい。なんですか?」
すっかり自分の考えに沈み込んでいた東明に、香芝はいたく不服そうだ。
三十路をとうに越えた男がぷくっと頬を膨らませている。
大層不本意な評価だが、可愛いと思えてしまう。
そのせいで、怒っていてもちっとも怖くない。
「勝手に話を終わらすな!一緒にこういう服着る!」
「……ああ、まだその話続いていたんですか。駄目です」
これで終了とばかりに再度告げた東明に香芝が騒ぐ。
きっとこのアパートの壁が薄いことなどもう忘れてしまっているのだろう。
「なんでだよ。いいだろー。減るもんじゃないし」
「そんな体験が増えることが問題だからです。どこのチーマーになる気ですか」
「東明がいたところは?」
「……冗談でも勘弁してください。あなたを危ない目には遭わせられません。そんな絡まれやすい格好も駄目です。第一、そんな服をどこに着ていくんですか」
着ていく場所もないのに勿体ないと心の中で呟いてしまう己はどれだけ貧乏が染みついているのかと東明は悲しくなった。
ちらりと視線を向ければ黒に金のラインが入ったセットアップがうつりこむ。
背中にはでかでかと『それっぽい』絵柄がプリントされている。
香芝に相応しいとはとても思えない。
「どこでもいいよ。カラオケとか?」
「またカラオケですか?」
ややうんざりした東明に香芝はしぱしぱと目を瞬いた。
「カラオケ嫌い?」
「いえ……」
嫌いではないが如何せん頻繁に香芝に連れて行かれているためにやや飽きている。
だが、香芝はそれをどうやら勘違いしたようだ。
「あ、わかった!」
絶対にわかっていないだろうなという東明の眼差しをものともせず、香芝はにっこりと笑った。
「カラオケなんて絡まれるから駄目とか言うつもりだろ。それならそんな杞憂は解消できるから大丈夫!」
「……一応聞きますが、どうやって?」
手招かれるままにベッドに腰掛けると香芝がるんるんと音が聞こえてきそうなほど上機嫌に東明の腰にまとわりついてくる。
布団ごしとはいえほぼ裸と思えば落ち着かない。
が、そんな落ち着かなさなどその次に出てきた言葉で盛大に吹き飛んだ。

      

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