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それは悪夢にほど近いなにか3
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「鬼束さんの家を使わせてもらおう!あの家、広間にカラオケがあ」
「そんなの駄目に決まってるでしょう!?」
「ふわ!?」
一瞬にして血の気が引いた東明はガバッと立ち上がると、最悪なことに既に携帯電話に伸びようとしていた香芝の手を反射的に掴む。
なんとかして止めなければと焦るあまりにベッドに香芝の身体を押さえつけてしまい、香芝が驚きと同時に痛みにか顔を歪ませた。
だが、そんなことは構っていられない。
本気で実行しそうなのほほんとした香芝を縛ってでも止める必要がある。
「あなたはなにを考えているんですか!」
「え……なにって……。カラオケを持ってる人に借りれば危なくないかなって……」
「それにしたって相手を選んでください!なんでよりによってそんな相手に……」
考えただけで恐ろしい。
鬼束。
この世界でその名を出せば出てくる人間はひとりだけ。
吉野親和会現会長の旧知の友であり、組織の重鎮。
隠居した身だが、未だにあの老人を見れば数滴ちびる人間までいるという噂さえある。
そんな相手になにを言うのかと手に力を込めると香芝が戸惑ったように首を傾げた。
「ちゃんと紹介するのに。たまに麻雀でばれっばれのサマするけど、いい人だよ。俺関係で行けば組のことは考えなくてもいいだろうし」
「そうもいきません。そんな簡単な話ではないんです」
「それなら和海の家にする?」
「本家にカラオケだけしに行けますか!?俺なんかがどんな面して行けと!?」
「駄目かなぁ。和海は絶対東明みたいなの好きなのに」
「好きって……。力がない人間には一瞥すら惜しがるときいたことがありますけど」
「うん、無能な人間は嫌いだよ。だけど、東明のことは気に入ると思う。俺にはわかる」
「なにを根拠に……」
組み敷かれたままに何度も自分の言葉に頷いている香芝に溜め息がもれる。
そしてそれは続いた言葉によって量産された。
「だって俺は和海の元愛人だから。和海の好みは熟知してる」
「…………どんな自信ですか」
そっち方向で気に入られてもと溜め息で寒気が走るのを誤魔化した。
あんな恐ろしい人間にそんな理由で気に入られたらどうなるか。
考えただけで気分が沈み込む。
一度通り魔的な出会いをしただけでまともには会ったこともないが、噂だけでうかつなことはできないとわかる。
そこまで考えてハタと気づく。
まじまじと見下ろした東明に、香芝は不思議そうに首を傾げた。
「東明?」
「あなたは……どうやって愛人をしていたんですか?」
「へ?」
唐突な質問は想定外だったらしく、香芝がまた瞬いた。
いちいち揺れる睫毛は長く艶やかで、ついついじっと目を見つめてしまう。
言動によっては幼稚だが、基本的には理知的な香芝は綺麗な顔をしていて穏やかで、どうみても凶暴さや男臭さはない。
「いや、だって……二人とも抱かれる側……ですよね。それでどう成立したのかと」
まさか和久井は抱くこともできるのかと考えるが、そんな噂はきいたことがない。
きこえてくるのは抱かれる側だという噂ばかりだ。
どういうことだろうかと考え込んでいると、不意に噴き出す音が聞こえた。
そして、それは一瞬にして大笑いに変わる。

      

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