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愛玩奴隷2
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廊下を抜けると目の前に出てくるのは、先程と同じようなベージュの冷たい二つの扉。
向かって右手は、観客席へと続く。
香芝も数度なら足を踏み入れたことのある場所だ。
左側は、ステージにあがる者達の控えの部屋へと続いている。
左側の扉を再び指紋認証であけると、迷いなくその中へと入る。
真っ白な、研究所か病院を連想させる真四角の部屋がそこにはあった。
光など照明くらいしかないにも関わらず、やたらとまぶしい。
神経が侵され狂いそうなほどに眩しい世界に立ちくらみすら起こしそうだ。
真四角の部屋には、一面にのみ大きなガラス窓が埋め込まれている。
正しくは窓ではなく、続き部屋を監視できるマジックミラーだ。
続き部屋は、くすんだコンクリートのうちっぱなしの、固そうな木の椅子しか
置かれていない部屋とも呼べないような部屋。
まるで、一昔前のドラマでみる留置所や独房のようだ。
打ちっぱなしの壁には手枷つきの鎖がいくつも垂れ下がっている。
店である以上、衛生的に保たれているとわかっていてさえ、
常人ならば入ることを躊躇したくなる部屋だろう。
常人とはかけ離れているという自覚のある香芝は、来ていた服を一枚ずつ
脱ぎ落として白い部屋のカゴへと畳んでいれながら、ぼんやりと
マジックミラーを見つめる。
仕事が休みだったにも関わらずスーツを着ていたことには意味がある。
自分の日常にある立場を意識してこそ、捨てることに意味があった。
その意味を噛み締めながらスーツを全て脱ぎ捨てると、全裸でまっすぐに
コンクリートに埋め尽くされた部屋へと入った。
扉を閉めれば、今まで眩しいほどの部屋にいたから余計にこちらは暗く感じた。
この部屋に入ってしまえば、白い部屋の様子などうかがい知ることもできない。
素足で触れる床は冷たく、これから行われるだろう加虐に動悸が激しくなる。
椅子に座る立場ではないと判断し、ぺたりと床に座り込む。
汚れるとわかっていても、立ってなどいられない。
覚えこまされた苦痛に足が竦んで、がりっと爪がコンクリートの床を掻いた。
がたがたと震える身体を止められない。
望んで受ける愛すべき苦痛だったとしても、恐怖がないわけではない。
いつだってそれをふるわれている最中は苦悶に喘ぐ。
時として、喘ぐことすらできずに打ち捨てられた汚物のように、
這うことすらできないこともある。
いつだって心はバラバラになりそうなほど揺さぶられる。
怖い。
冷たい汗が尋常ではない昂奮の熱を帯びた身体に伝った。
息遣い以外に音は聞こえない。鏡を見ても明るい場所は窺えない。
ただ心許なく縋るものを探すような惨めな香芝の姿が映りこんでいるだけだ。
何度か入ったことのある部屋を見渡せば、いつも通りの光景が広がっている。
壁に設置された鎖。むき出しの水道。その下に巻かれ置かれたホース。
かすかな斜面を描く地面には排水溝。
部屋の片隅にぽつんと置かれた棚にはあらゆる道具が眠る。
見上げた天井には、何の演出なのか丸い電球がいくつかぶら下がっている。
その横にはイルリーガードルまでぶら下がっていて、それだけでここが
どんな場所なのかを思い知らせてくれる。
椅子だけは以前来た時と変わっていた。相変わらず貧相なつくりのものだ。
きっと、何かしらの事情で前のものは破損したのだろう。
来るたびに椅子だけは変わっている気がする。
「ご主人様……」
緊張感と高揚にぐらぐらする頭を宥めるように、香芝に残された唯一の
縋りつける対象を口にする。
苦痛を与えてくれるのも主ならば、許してくれるのも主だ。
こうして被虐に精神を研ぎ澄ましていると、香芝の中には主人以外になにもなくなる。
だが、それでは不十分であることを神近も香芝も理解していた。
あらゆるものを手放したつもりでも、香芝だけの力では失えないものはたくさんある。
思考や理性、感情や意志、人としての矜持、人格。
それらはむごたらしいほどの苦痛と、何もかもを溶かすほどの悦楽でしか
捨て去れない。
何もわからなくなるまで狂い、五感全てが神近の与えるもので埋め尽くされ、
それのみを求めるようになるには、主の手を借りるよりない。
一番恐ろしくて、一番愛していて、唯一縋り、跪ける相手。
それが香芝にとっての神近だ。
「ご主人様……」
世界にそれしか意味がなくなったかのように、唇は同じ言葉だけを
まるで戒めるかのように刻み続ける。
口の中が期待と恐怖にカラカラになり、薄く開いた唇から熱っぽい吐息が漏れる。
不意に、後方にある扉が開いた。

      

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