|
サンジの腕がゾロの首に絡む。 深いキスをしかけてきたサンジに、ゾロは、積極的に応えた。 重ねた唇の合間で、濡れた音が鳴る。 サンジの舌は随分と機敏な動きで、ゾロの口内を舐め回した。 絡めては擦り抜けるサンジの舌を追い、いつの間にか逆に絡め取られて、甘噛される。舌の裏を舐められながら吸われて、背筋が大きく震えた。 良く動く舌に歯の裏側や口蓋をくすぐられ、サンジの背を抱いたゾロの腕に力がこもった。 さすが、というのか、サンジはキスがうまい。と、思う。たぶん。ゾロはあまりキスをしたことはなかったけれど、サンジの舌がゾロの口内のどこかしらを舐めるたびに、体の芯からしびれるような熱さが上がってくる。 とても気持ちがよかったが、しかし、このままではまずい、と、ゾロはサンジの胸を押した。 けれどもサンジは離れることを嫌がって、ゾロの首をがっしり両腕で締め付けてくる。 あ、と思う間もなく、ゾロはサンジに引き倒された。 どさりとサンジの上に倒れ込んでしまい、ゾロは慌てて床に肘をついて体を浮かせる。 サンジの腕はゾロを抱きしめたまま離れず、脚まで絡み付いてきた。 上気した、やわらかい表情で、サンジがゾロを見上げている。
サンジとする喧嘩が、嫌だった訳ではない。けれども、他の奴らのように、優しい顔を向けられてみたいと思っていた。絶対無理だとも思っていたのに、サンジはゾロを、とても大切なものを見るような目で見つめてくれている。 「ゾロ。」 サンジは小さな、とても甘い声でゾロを呼んだ。指先もずっと、ゾロの背中をくすぐるようにたどっている。 どれもこれも全部、ゾロにとっては嬉しいことだったけれど、しかしこのままでは、どうにも体が兆してしまいそうだ。 落ち着かずに身動ぎするゾロの肌に、サンジの、硬くなった熱がふれた。 思わず動きの止まるゾロに、サンジは、恥ずかしそうな困ったような顔になる。 それでもサンジはますますゾロを抱きしめ、遠慮がちに、それを擦りつけてきた。 「なあ、ゾロ。……もう一回、ちゃんとしたい。……って云ったら、怒るか?」 サンジはおずおずと、そんなことを云いだした。 思わずゾロが目をむいてしまうと、あからさまにしゅんとした様子になる。 「だっておれ、先刻……、びっくりしちゃって、何もできなかったし……。」 先刻、というのが何を示しているのか悟り、ゾロは硬直してしまった。正直もう思い出したくないような恥ずかしさだ。 しかしますますサンジは誤解したようで、慌ててゾロに云い募る。
「ああっ、ゾロ、ゾロはすごかったよ! 目茶苦茶気持ちよかったし、ゾロはすごく色っぽくてえっちで最高だった!」 サンジは一生懸命、ゾロがどうだったかを語ろうとするし、本人的には賞賛のようだが、思い出したくないゾロにはたまったものではない。 耐えきれなくなって、ゾロはサンジの顔をつかむようにして、よく動く口を塞いでしまう。 サンジはしゅんとした様子でゾロを見た。しかし違うのだ、怒っているのではなくて恥ずかしいのだ。 「あれは…っ。女好きのてめえが男のおれに勃つなんてありえねえから、絶対夢だと思って……、目え覚める前にって必死で……。あんなやり方が好きな訳じゃ、断じてねえ!」 とにかく訴えておきたいあたりをどうにか告げる。 しかし何かどこかがサンジのツボにはまったらしく、青い瞳がきらきら輝きだしたので焦った。 「うわっ。」 サンジの口を覆っていたてのひらをぺろりと舐められ、ゾロはびくっとして腕を引く。 「ゾロ。」 優しい、甘ったるい声に呼ばれて、ゾロはますます身を縮めた。 「好きだよ、ゾロ。なあ、もう一度、おまえのこと抱かせて。ゾロの好きなやり方教えてよ。……無理矢理おまえのこと犯そうとしてごめんな。今度はちゃんと、おれの気持ちがおまえに伝わるように抱きてえよ。名誉挽回させてくれよ。おねがい。」 固まっているゾロの肩に、サンジの腕がするりと伸びてくる。 また密着した体の熱さに、頭のてっぺんから血を吹きそうだった。 云ってやりたいことは大量にあるような気がするのだが、サンジの唇が顔中にふれてくるから、そのたびに心臓がどきついて口も思考も動かない。 「なあ。いい?」 許可を乞うサンジに、ゾロは微かにうなずくのが精一杯だった。
互いに中途半場に残っていた衣服をすべて取り去り、あらためて、唇を重ねた。 月明かりにサンジの肌の白がよけいに冴えて見え、ゾロは息を飲む。 細くて白いが、強靱な蹴りを繰り出す引き締まった体だ。 サンジの視線も、ゾロの体に注がれている。 「……あんまり、見るな。」 「何で。恥ずかしい?」 サンジはとろけるように笑って、ゾロの体にふれてきた。
そうではない。ゾロは元々、同性を対象とする男だから、サンジの裸が見られるのは嬉しい。けれど女好きのサンジが、自分の裸を見て嬉しがるとは思えない。 告げてくれた好意は嬉しいし、疑いたくないが、ごつい男の体に萎えないかと、ゾロはどうしても気になってしまう。 サンジは嬉しそうにゾロに口づけ、肌に手を滑らせてきた。 そっと床に押し倒し、顔や耳元や首筋や、鎖骨の方にと、指と唇でふれてくる。 ゾロの快感を探るような愛撫は、とても巧みだ。 さすがだな、と、思った言葉は口には出さなかった。 ゾロはゆったりとサンジに腕を回して抱きつき、髪や背をそろそろと撫でる。 時折サンジが、自分からゾロの手に頭を擦りつけてきたりするのにどきどきする。 「ん…っ。」 乳首を含まれる頃には、ゾロのものはすっかり硬くなり、腹を打つほど反り返っていた。 「ちっちゃいのに、感じやすいんだな。可愛いな。」 サンジは嬉しそうに、ゾロの乳首を弾いている。 快感と興奮に、皮膚が薄く張りつめたそこは、サンジの愛撫に切なくなるような快感を生み出しているけれども。 「……比べんな…っ。」 女の乳首とは明らかにサイズが違うことくらいは、ゾロだって知っている。 いい気分ではなくて、ゾロはサンジの頭をはたいた。 「怒んなよ。敏感で嬉しいっつってんじゃねえか。」 「……女抱くみたいなやり方しなくていい。」 サンジはぷうっと膨れるが、ゾロの方だって、何だかおもしろくない。 「おれは、男だ。」 「そりゃもう。見てもさわっても、どこから見ても男です。」 サンジはむぎゅっと、ゾロの大きくなったものを握った。 全身を快感がかけ抜けて、ゾロはびくんと跳ね上がる。 「おれ、レディとしかしたことねえもん。男のやり方の決まりなんか知らねえよ。教えてくれんなら覚えるけど、とりあえず今は、好きな子を抱くやり方でやってるだけだよ。」 「……バカコック。アホコック。ぐる眉。」 いとおしさのたっぷり込められた、どこかだだっ子をなだめるような口調にゾロは恥ずかしくなり、悪態を付いた。しかしこれもまた子供のような云い方になってしまい、いつも短気なサンジすら怒らせることができない。 「今はさ、おれが、ゾロを抱きたいやり方でやらせてよ。」 サンジはゾロの乳首をそっと撫で転がしながら、優しく唇をふれてきた。 「好きだよ、ゾロ。大好き。すげえ好き。」 サンジはゾロの唇を啄みながら、何度もそうささやいてくる。それと同時に指を動かし、乳首を摘まんだり転がしたりして、ゾロのそこをますます尖らせようとする。 「大好き、ゾロ。ゾロ。好き。」 唇がふれるたびに微かな濡れた音、小刻みに何度も唇を吸われ、押しつけられ、舌の付け根のあたりが変な感じになって、口の中に唾液が沸いてきてしまう。 けれどもゾロが小さく口を開いて誘っても、サンジは短い言葉をくりかえしながら、甘ったれたようなキスを深めようとしない。 乳首への愛撫もしつこく続き、ゾロの体が芯から疼き始めてしまう。 サンジは嬉しそうにゾロにキスをし、体を押しつけてきた。 「ゾロ、ゾロ、大好き、好きだよゾロ、好き…。」 いつの間にかサンジの腕はゾロの首の下を通り、しっかり頭を抱きかかえている。その手の先は耳やうなじをくすぐり、ぞくりとするような官能を駆り立てる。 「コック…っ。」 気持ちいいけれど、もどかしい。そしてとっても気恥しい。 乳首が熱を持ってはれ上がっているような気がするし、だったらいっそ、そこではなくて下を弄ってくれればいいのにとか、そんな気持ちにすらなる。 焦れたゾロは、サンジの頭をつかんで引き寄せ、口腔に舌を押しこんだ。 目一杯深く舌を差し込んで舐め回すと、サンジもそれに応えてくる。キスと同時に、乳首を弄る指の動きも強くなり、ゾロはたまらずに腰をもじつかせていた。 下にいるゾロの方に、混ざった唾液が流れ込んでくる。口を重ねたまま何とか少しずつ飲み込んでいると、サンジもゾロの喉の動きに気付いたようだ。奪うように掬うように舌が動き、またゾロを駆り立てる。 乳首をこねられ、激しく口づけられて、ゾロは息を詰まらせ、唾液を飲みそこねて小さくむせた。 「……ゾロ。」 サンジはすぐに口を離し、ゾロに呼吸をさせる。途切れたキスを惜しむ気持ちもあったが、サンジが心配そうにしているので、何度か咳をし、ゆっくり息を吸った。 けれども、わざとなのかたまたまなのか、サンジの指はゾロの乳首をきゅっと引っぱり上げたところで止まってしまっているし、その視線はゾロの顔に釘付けだ。耳元を弄っていた指も、ちょうど耳孔に差し込まれているところで、ゾロの微かな身じろぎにも、ぞわぞわとした快感を送り込んでくる。 「コック、……なあ。」 ゾロはサンジの背を腰まで撫で下ろし、ぐい、と自分に引き寄せた。
|
2010/04/21 |
|