やきもち 2 

 浅いところをゆったりと舐めていると、もどかしそうにウソップの舌がゾロの舌にちょっかいをかけてくる。 
 唾液を絡ませるようにしてウソップの舌を舐めると、抱きしめた体がぶるっと震えるのを感じた。深く舌を舐め合うのにつれて、ウソップの震えが全身に広がっていく。
 ゾロの背筋もぞくぞくとしっばなしだ。
 ウソップの腰を抱き、数歩のところのベンチに進ませても、従順についてくるのが愛おしかった。
 先にゾロが座った膝の上に、横抱きにウソップを乗せる。
 背を抱いた腕の先で、ウソップの首筋や肩を撫で回しながら、もう一度唇を重ねる。
 肉厚の柔らかい唇が、とても気持ちがいい。
 ウソップの舌を吸いながら、ゾロは開いている方の手で、細い体を服越しに撫でた。
「ん…っ。」
 重ねた唇の合間から、ウソップがくぐもった声を洩らす。
 ゾロはもっとウソップの肌にふれたくて、オーバーオールの留め金を外した。
 胸当てをめくろうとしたが、しかしその手をウソップに捕まれる。
 驚いて唇を離し、ウソップを見ると、何やらまた良くないことを考えたのか、拗ねた表情になっていた。
「おれ、貧弱だし……、胸とかもないし、こんな体、つまんないだろ……。」
「あのな。」
 ゾロは思わずため息をついた。男の体に胸を求める意味などないし、多分ロビンの体と比べているのだろうが、あれと比較するなどと、並の女でも無理にほどがあると思う。
 いや、もう一人の女の船員であるナミも、黙って立っている分には極上の女ではあるが。
 そう考えたところで、ゾロは嫌なことを思い出した。
「ウソップこそ、おれに不満があるんじゃないのか。こんなごつい体の男にあれこれされるのは嫌か。胸のでかい女の方がいいんじゃねえのか。」
「はあ!?」
 ゾロの言葉に、ウソップは盛大に目をひんむいている。
「アラバスタ。」
 ヒントを出してもウソップには理解できなかったようで、ゾロとしてはあまり嫉妬をむき出しにするのはとも思わなくもないのだが、はっきり云ってやることにした。
 ウソップはゾロばかりを疑うが、ゾロだってたまには、ウソップに対して拗ねたくなることもあるのだ。
「てめえ、あん時、ナミとビビの風呂のぞいてやがっただろ。女の体に興味があるってことだろ。」
「えええええ!?い、いやだって、覗くだろ…っ?」
 うろたえまくるウソップに、ゾロはあの時の気持ちを思い出して辛くなった。
「その時はまだつきあってなかったし、おれに何か云える権利はなかったけどな。でも、ウソップが覗きしてるの見て、おれは悲しかった。」
 そう、当時既にウソップに想いを寄せていたゾロにとっては、女湯なんかより、ウソップの全裸の方に意識を惹かれていた。なのにウソップは、嬉しそうに女湯を覗いたりしていたものだから、どちらかに気があったりするのではないかと、ゾロはとても切なくなったのだ。
「あー、いや、その、あれは単なる、青少年の女体への興味って奴でだな、その。」
「おれは、どんな女の裸より、ウソップの裸が見てえ。そりゃあ、見たら見たで反応しちまったのは認める。悪かった。でも、おれが自分から見たいと思って、見て嬉しいのは、ウソップの裸だ。ウソップはどうなんだ。」
 切実に訴えるゾロの言葉に、ウソップは真っ赤になって、あーうー云っている。つい最近、スリラーバークでナミの裸を見る機会に恵まれ、反射的にお礼を云ってしまったウソップなのである。
「ごめん、ゾロ!」
 ウソップが謝罪の言葉と共にしっかりと抱きついてきたので、そんなことがあったとは知らないゾロは、すっかり満足してウソップを抱きしめ返した。
「おれにとっては、ウソップが一番いいんた。それが惚れてるってことだ。判れ。」
 頬を擦り寄せ、唇を押しつける。こんなふうに誰かを愛おしく思うのはウソップが初めてだ。そんな幸せが自分に訪れるとは思ってもいなかったから、ますますゾロは、ウソップが恋しくてたまらなくなる。
「うん。ゾロ…、大好き。」
 ウソップは甘い声でささやいて、ゾロの頬を撫で、指先でピアスを揺らした。
 そんな仕草に、愛撫に戻ってもいいようだと感じて、ゾロはウソップについばむように口づけながら、服の胸当てを下ろした。
 今度は何の抵抗もなく、ウソップの上半身を曝け出す。
 褐色の肌が、窓から差し込む月と星の明かりで、なまめかしくゾロの目に映る。
 ゾロは手のひら全体で、ウソップの胸から腹までをべったりと撫でた。
「んっ、…ひぁ…っ。」
 指先で腹筋をたどると、ウソップはくすぐったそうに身をよじる。
「お前も、腹筋はちゃんと割れてんだよな。」
 細っこいのは相変わらずだが、船での暮らしの間に、最初に会った時に比べれば、随分と筋肉がついてきているのが判る。
 柔らかい体を望むのではないし、ウソップなら何でもいいというのが正直なところではあるが、ウソップの体がしっかりとできていくのは、ずっと一緒に生きていくつもりのゾロにとって、とても望ましいことだ。
 腹を撫で、ついでに臍もくすぐってから、手を胸に滑らせる。
 広げた五本の指全てに、ウソップの乳首をひっかけながら胸を撫でると、小さな、可愛らしい声があがった。
「や、あん…っ。」
「胸はねえけど、乳首、可愛いよな。感度もすげえいいし、おれは気に入ってる。」
 ウソップの背を抱いていた腕で持ち上げ、浮かせた胸の先に、ゾロはキスをした。
「んんっ。」
 ウソップの体がびくりと跳ねる。ここまで感じやすくさせたのはゾロだから、ますますこの小さな突起が、可愛く愛しいものになる。
 含んで吸うと芯が入ったような感触になり、舐めて転がすゾロの舌も気持ちいい。
「んっ、あ、……やぁっ。」
 ウソップは先刻よりも大きくなった声を上げ、真っ赤になって自分の口を塞いだ。
「こら。」
 ゾロが咎めると、ウソップはいやいやと首を振る。恥じらう姿も可愛いのだが、展望台から下まで声が届く筈も無し、今は遠慮なく声をあげて欲しい。
「……ばか、ゾロに聞かれんのが恥ずかしいんじゃねーか…っ。」
「ウソップが可愛くてあちこち弄くり回して、そんで自然に出る声だろ。お前が感じてるのをおれに伝えてくれてるんじゃねえか。いくらでも聞きてえよ。」
 手を取り上げても、唇を噛まれるのも可哀想で嫌だしと、ゾロは何とかウソップを説得しようとする。
「だって、男のそんな声なんて……。」
「ウソップの声も好きだし、ウソップなら何でも好きだ。」
「……ばか。」
 ウソップの全身からくったりと力が抜け、口元にあった手も一緒に落ちた。多分、口を塞ぐのはやめるということなのだろうから、ならばもっと感じさせれば、ウソップは可愛い声をゾロに聞かせてくれる筈だ。
 うつむいているウソップに顔を寄せ、強引に重ねた唇で持ち上げるようにして上向かせる。
 舌を差し伸べればウソップの唇もすんなりと開き、奥深くまでゾロが舐めることを許された。
「ん……。」
 重ねた唇の隙間から、ウソップが熱い息を洩らす。
 混じり合う唾液を、ゾロはウソップの口腔から舌で掬うようにして飲む。
 濃密に舌を絡ませるうちに、ウソップはゾロにしがみつき、腰をくねらせるようになってきた。
 柔らかい唇を、きつく吸ってキスを切り上げる。
 真っ赤になった唇から、ウソップは微かな声の混ざる荒い息を零していた。
 ちらりと見れば、ウソップはもうずいぶんと自身を膨らませているようだ。
 握ってやろうか、含んでやろうかと、ゾロはわくわくしてきたが、しかしまだ充分に胸を愛でていないことを思い出した。
 それに、ウソップが素直に甘い声を聞かせてくれるようになるまで、ちょっとここで待っていた方がいいような気もする。
 なのでゾロは、またウソップの胸に顔を伏せ、乳首を舌先で転がし始めた。
   
2009/05/31 






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