2004.03.13.

亜樹と亜美
02
木暮香瑠



■ 出会い系サイトの罠2

 一人きりになった部屋で亜樹は、ベットの上に横になり、携帯の画面を見詰めていた。届いているメールは、いつもの遊び仲間からのお誘いメールばかりだった。
「つまらない……」
 どのメールもいつものことであり、亜樹の興味を引くものなど無い。仲間と遊び歩くのも、ただの暇つぶしで別に楽しいわけではない。家に帰ると亜美がいる。健吾と付き合いだした亜美が眩しいのだ。ただそれだけのことだった。そのうち、母親の言うことが鬱陶しくなって、亜美の言うことまでが窮屈に感じ出したのだ。誰が悪いわけでもない……。亜樹自身がそれを判っていた。ただ自分が、そう感じてしまっているだけだ。判っていても押さえ切れない感情に戸惑い、家に帰るのが遅くなってしまうのだ。

「何か面白いこと無いかな?」
 亜樹は、メールをスクロールしていく。その中に、出会い系サイトの案内メールが目に入ってきた。
「出会い系か……」
 独り言のように呟き、そのサイトの中に入っていった。単なる暇つぶしのつもりだった。

《 寂しい人、僕とメル友になりませんか? 》

「ばか。お前が寂しいんだろ……」

《 上戸彩に似た彼女、友達になって…… 》

「ばっかじゃない。上戸彩は一人……、他に居る訳無いじゃん。そんなことも判らないの?」

 どのコメントも在り来たりの物ばかりだ。
「馬鹿な男ばっかり……。まともなヤツ、いないの?」
 別に探し人がいるわけではないが、亜樹は、どんどんスクロールしていった。その中に、亜樹は一つのコメントを見つけた。

《 レイプさせてくれませんか? 》

「なに? これ……。本物のバカ? そんな人、居る訳無いじゃない」
 亜樹は、呆れて次へとスクロールしていった。しかし、どのコメントを見ても亜樹の心を揺さぶるコメントなど無かった。

 亜樹はベットの上に横たわり、右手に持った携帯越しに天井を見詰めた。
「レイプか……」
 呟くように、口から言葉が洩れた。
「変なヤツ……。どんなヤツなんだろう?」
 思い出したように、さっきのコメントが気になってきた。詰まらない生活の中、たった一行のコメントが、堤防に開いた穴に染み出した水が穴を広げていくように、亜樹の中に広がっていく。

「名前を明かさなければ大丈夫だよね」
 亜樹は独り言のように呟き、スクロールし先ほどのコメントを探した。
《 あなた何者? どうしてレイプなんかしたいの? 花◎子より 》
 打ち終わったメールを送信する。どんなヤツなんだろう? メールは返ってくるのだろうか? 得体の知れないワクワク感が亜樹を包む。

 どのくらい待っているだろうか? ベッドの上に仰向けで天井を見詰めていた。
「やっぱり来ないか……。メール……」
 そう呟いた時、携帯が着信音を発した。亜樹は、待ち焦がれた恋人からのメールを確認するかのように、携帯を取り上げた。

《 オレ、レイプ魔。レイプさせてくれるの? やらせてくれるのなら五万払うよ。メール待ってるから 》

(変なヤツ。どんな人なんだろう?)
 不思議なメールに興味を持った亜樹は、すぐに返信を返した。

《 なぜお金払ってまで、レイプしたいの? 変じゃん、お金払ってたらレイプじゃないじゃん 》

 今度は、すぐに返信があった。

《 だって、レイプって犯罪だろ。同意の上なら犯罪にならないし……。でも、レイプしてみたいんだ 》

 亜樹もすぐに返信する。二人のメールのやり取りが続く。

《 あくまで同意の上。でも、レイプの芝居はして欲しいな。あくまで嫌がってほしい。嫌がる女を犯してみたいんだ。興奮するだろ? 傷つけたりはしないよ 》

《 あなたって変! 頭、おかしいんじゃない? 》

《 おかしいかな。そうかもしれない。でも、無理やり犯してみたい。レイプしてみたい。普通の毎日ばかりじゃ、つまらない 》

《 面白いヤツだね、君って。普通の毎日って、私もつまらない 》

《 オレが面白い? 友達はつまらないヤツって言うよ。真面目で…… 》

《 面白いよ。レイプさせてくれって言うなんて。どこに住んでるの? 何してる人? 》

《 それは言えない。レイプさせてくれるんなら教えてもいい 》

《 教えてくれるんなら考えてもいいかな? あなた次第だよ 》

《 教えちゃおうかな。オレのメールに答えてくれたの、君だけだったから。慶田大の二年生、大芝に住んでる 》

《 近くじゃん。わたし、旭日ヶ丘、高校三年 》

《 本当、結構近くだね。でも、君って変わってるね。レイプしたいって言うオレに、顔も知らないオレにメールくれるなんて 》

《 お互い様だよ。レイプしたいって言うほうが変わってるよ 》

 二人のメールのやり取りは、夜通し続いた。『レイプ魔』と名乗る相手のメールは、『レイプしたい』という点を除けば普通のものだった。文面の乱れも無いし、亜樹の疑問にも正直に答えてくれる。そのことが亜樹に安心感を与えた。毎日がつまらないという共通点で繋がった二人は、飽きることなくお互いに返信メールを送った。

《 オレ、もう寝るよ。じゃあまたね 》

《 私も眠たくなっちゃった。じゃあまたね 》

 お互いに最後のメールを送りあい、亜樹はベットの上にで転がった。しかし、眠たくなったと言ってはみたが、なかなか寝付けない。不思議な興奮が眠気を妨げている。レイプという言葉が、脳裏に思い浮かぶ。亜樹は、手をパンツの中に忍ばした。

「あん、あん……。あはっ……、ううん……」
 忍び声を上げながら、指先を亀裂に這わせていく。潤みだした秘孔から愛蜜を掬い取り、淫芽に塗る。愛液に濡れた指先で、クリ○リスをコロコロと転がした。
「あんっ、いいっ……」
 レイプという言葉が気になっていた。亜樹は、クリ〇リス包皮を二本の指で剥き直接擦った。
「いやっ、だめ……」
 亜樹は自らの指で慰めながら、見ず知らずの男にレイプされる自分を思い浮かべた。左手で胸を強く握り締める。
「ゆっ、許して……。触らないで、犯さないで……、やめて……」
 自分の発した言葉で、興奮を昂ぶらせていく。
「そんなとこ、触らないで……。そ、そこはだめぇ……」
 うわ言のように呟きながら、クリ○リスを嬲っていく。

 二本の指が、自らの愛液で濡れていく。亜樹は、ベトベトになった指を二本同時に膣口に宛がった。
「いやっ、入れないで……。たっ、助けて……」
 拒絶の言葉を口にしながら、亜樹は二本の指を一気に押し込んだ。

「ううっ、ううう……」
 淫靡な喘ぎ声を上げながら、指を動かしていく。左手では、相変らず胸を揉み続けている。時折、尖り出した乳頭を二本の指で摘みながら、コリコリと転がした。
「はあ、はあ、はあ……」
 どんどん息が荒くなっていく。亜樹は、秘孔に入れた指をさらに奥へと送り込んだ。
「だっ、だめえ……。な、中には出さな、はっ、はうっ……」
 極度の興奮に、時々息が詰まる。見知らぬ男に犯されるおぞましさを思い浮かべながら、動かす指を早めた。

 初めて想像するレイプシーンに心臓が高鳴り、張り裂けそうにドクン、ドクンと大きな音を立てている。妄想の中で、男の怒張が大きく膨れ上がり亜樹の秘孔を押し広げる。
「やめて、健吾! だめっ、こんなこと……。許して……」
 興奮が高まった時、脳裏に浮かんだのは健吾だった。ここ数ヶ月、最初はアイドルを思い浮かべてオナニーを始めても、絶頂を迎える時に思い浮かぶ顔が健吾になっている。いつからだろうと思うと、それは、亜美と健吾が付き合いだした頃からだった。

「ああ、も、もう……、だっ、だめえ……」
 健吾の放った精液が膣の中に満たされていく。
「ああっ、あう……、あああ……、いっ、いいっ……、い、いくう・……」
 亜樹の肢体がベッドの上で震える。首を退け反らし、爪先がピンと伸びる。
「ううっ、ううう……」
 肢体がガクンガクンと弾んだ。朦朧とした意識の中、健吾に嬲られながら亜樹はエクスタシーに達した。

「はあ、はあ、はあ……。また健吾が出てきちゃった……」
 官能の後訪れるのは、言いようの無い虚無感である。
「どうして? どうして出てきちゃうの? 健吾は亜美の彼氏なのに……」
 亜樹は、涙でシーツを濡らしていった。



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