2002.10.18.

淫辱通学
02
木暮香瑠



■ 待ち伏せ、そして恥辱1

 放課後、有紗はいつも使う駅とは反対側の駅に向かって急いでいた。聖愛学園の裏側は、大きな森になっている。森の向こう側にある駅に行こうと、木立の中の道を歩いていた。今日の午後7時から、有紗がファンである「ウインターズ」のお笑いライブに出かけるためだ。ライブ会場には、いつも使ってる路線ではなく、学園を挟んだ反対側に在る駅の路線を使ったほうが早く着くのである。

 ライブには、同級生の何人かに声を掛けてみた。しかし、お嬢様学校で有名な聖愛学園には、お笑いライブに一緒に行ってくれる友人はいなかった。
「ウインターズ、面白いのになぁ……。どうして興味ないんだろ? みんな……」
 一人ブツブツ言いながら、誰一人通っていない道を駅に向かって歩いた。有紗は、痴漢から守った小林美由紀にも声を掛けてみた。有紗は、どうしようか迷っている美由紀に、ウインターズがどんなに面白いか、ライブの様子やライブ会場までの道のりを詳しく話した。結局、お笑いに興味のない美由紀は、有紗の誘いを断った。

 木が鬱蒼と茂っている9月の森の中の道は、まだ4時だというのに暗い。木々が日差を遮り、広い森が静寂に包まれている。森の中の道をちょうど半分ほど進んだとき、有紗の目の前に一人の男が現れた。その男は、有紗の視界を遮るほどの大男だ。2m近い身長と100kgを越えそうな体重の男が、木の陰から現れた。100kgを越えると言っても、ただ太っているわけではない。日に焼けた肌と、肩幅が大きく逆三角形の鍛え上げられた筋肉質の体形をした大男だ。筋肉の鎧を纏ったと言う言葉がピッタリくる。黒いTシャツとレザーパンツ、その色と境目が判らないほど日焼けした肌。細身の両側が吊り上がった形のサングラスで目を隠し、角刈りの髪型。自らの凶暴性を撒き散らしている。華奢な有紗と比べると、ライオンとその前で脅える子猫と言った感じだ。
「なに? 何か用?……」
 有紗は、少し後ずさりしながら言う。男は、後ろを振り返りながら言った。
「こいつか? お前に恥をかかせたってヤツは?」
 大男の影から、もう一人男が現れた。その男は、一週間前、痴漢をしているところを有紗に捕まえられた大学生、権堂康次である。大男は、康次の5歳年上の兄、権堂雄一である。
「こいつだよ、兄貴。この女に恥をかかされたんだ。やっちゃってくれよ!」
「誰なの? あなた達! わたしが何かしたって言うの?」
 有紗は、強気を装い康次を睨みつけながら言う。
「憶えてないのか? 先週の朝、電車の中で……」
「あっ! あの時の痴漢……」
 有紗は、後ろの男があの時の痴漢だと気が付いた。
「間違いないようだな。こんな小娘に恥かかされたのか?」
 雄一の言葉に、康次はバツが悪そうに笑った。

 権堂雄一の腕が有紗に伸ばされる。有紗は、雄一に得体の知れない危険を感じた。とっさに、有紗は蹴りを繰り出した。有紗のスカートが翻り、すらりと伸びた脚はきれいな円弧を描いて高く蹴り出される。白いパンティーが丸見えになるが、それを気にしている余裕は無かった。雄一の見下げるような視線に威圧されていた。有紗の爪先は、雄一の顎にヒットした。バシッと音が森に響いた。しかし、雄一は表情一つ変えない。
「お前、あの高木有紗だな? 中学時代、美少女拳士って言われた……」

 表情を隠すサングラスの裏で、雄一はワクワクと目を輝かせていた。二年前、有紗が雑誌で取り上げられた時、雄一は有紗のかわいさに酔った。端正な顔立ちに、型を決めたときのキリリとした大きな瞳が印象的だった。雑誌の写真の瞳は、雄一を見つめているような錯覚に襲われるほどの力を持っていた。雄一は毎晩のように、有紗の載った雑誌をマスターベーションのおかずにしていた。その有紗が目の前に居る。当時の幼かった少女の面影を残しながらも、大人の女性へと成長しかけていた。スラリとした手足はそのまま、胸やお尻は、当時より遙に膨らんでいる。少女と大人のはざ間の、危うい色気を漂わせ始めている。

「そうよ、それがどうしたって言うの?」
「でも、効かねえな、そんな蹴りじゃあ。確か、県大会で優勝したのは型の部門だったな。こんな蹴りじゃ、組み手は無理だな」
 有紗の実力は、一瞬に見抜かれていた。美しく優美な動きだが、軽量な有紗の蹴りや突きは実戦向きではなかった。
「ううっ、それが悪い?」
 有紗は、強がっているが権堂雄一との力の差をヒシヒシと感じていた。非力な有紗の蹴りでも、顎にヒットすれは普通の男なら倒れこむだろう。しかし、雄一は微動だにしなかった。
「兄貴に敵う別けねえよ。兄貴はプロレス団体に入ってたんだぞ。実戦で鍛えてるんだ」
 雄一の後ろから、康次がニヤニヤしながら言う。雄一は、女癖の悪さと、血の気の多さから道場内での喧嘩が原因でプロレス団体を辞めさせられた。今は、やくざの用心棒などをして生活をしている。

 有紗は、圧倒的な体格差と力の差を感じていた。助けを呼ぼうにも、森の真中まで来ている。学園側にも、駅のある街にも、人がいるところまでは声は届きそうにない。
(どうしよう? あいつ、強いわ……。私じゃあ負ける……)
 もちろん、有紗は殴り合いの喧嘩などしたことは無い。実戦で鍛えられたものだけが発する威圧感を感じ、有紗の中に恐怖感が芽生えていた。

 戸惑っている有紗の一瞬の隙を付いて、雄一の右手が有紗の手首を掴んだ。
(このままじゃ、ダメ! 何されるか判らないわ)
 有紗は、雄一の側頭部を狙って廻し蹴りを繰り出した。足が真っ直ぐに伸び、円弧を描きながら、こめかみに向かう。
「うっ!」
 有紗は、小さく声を上げた。有紗の脚が、雄一のこめかみに打ち込まれるより一瞬早く、雄一の手が有紗の振り上げられた足首を掴んだ。
「お前の動きは素直すぎるんだよ。何をしようとしてるか、すぐ判る」
 2メートル近い雄一のこめかみを狙った脚は、180度に開かれていた。スカートが捲れ、白いパンティーに包まれた股間を二人の男に見せるような格好で捕まえられてしまった。
「うひょーーー! パンティー丸見え……」
 康次が嬉しそうに声を上げる。
「いやぁ、見ないで……。離して、離してよ……」
 左の手首と右の足首を掴まれた不自由な格好で、有紗がもがくが雄一の力には敵わなかった。

 バシッ!!
 雄一は、有紗の頬に平手を食らわす。有紗の瞳が見開かれた。今まで、誰にも殴られたことのない頬の痛みに、有紗は唖然とする。空手を習っているときも、幼い少女だった有紗に、蹴りや突きを食らわす者はいなかった。練習は、寸止めが基本だったからだ。

 雄一は、掴んだ足首を持ち上げていく。片手で有紗を軽々と引き上げる。有紗の身体が完全に宙に浮いた。
「だ、だめえ……。おっ、降ろして……」
 片足を掴まれ、逆さに吊り上げられた有紗は、スカートの中を覗かれまいと太股を合わせ、落ちてくるスカートを手で押さえた。
「いやあ、見ないで……。恥かしい……。お、降ろして……」
 二人の視線が股間に注がれる恥かしさと、宙吊りにされ頭に血が上り、有紗の顔が真っ赤になる。
「じゃあ、望みどおり降ろしてやる」
 雄一は、有紗のパンティーに手を伸ばし掴んだ後、有紗の足首を掴んでいた手を緩めた。
「だめえ、パンツ……、パンツから手を離して……」
(ぬ、脱げちゃう……パンツが脱げちゃう……)
 有紗の体重が、パンティーを脱がしていく。パンティーが伸び、お尻からずれた。染み一つない丸い肉球がプリンと飛び出す。股間の淡い茂みが露わになった。
「おおっ、おケケが見えたぞ」
 康次がにやけた視線を有紗の股間に投げかける。
「み、見ないで……。は、離して……」
 有紗の望みは、儚く裏切られた。必死でパンティーを押さえたが、雄一に掴まれていたパンティーは、有紗が地面に落ちると同時に引き千切られた。ただの布切れと化したパンティーが、雄一の手に残った。



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