あとがき。

 本当に、長らくというかもはや待ってくださっていた方々もお見捨てになられたのではないかと思うほどえんえんとお待たせいたしました。ようやく、ようやく、ようやっと、テドン〜グリーンオーブ編、終了です。
 ここまで時間がかかってしまったのは、それぞれのキャラクターの『既に死んでいるけれど想いを残している人』との関わり方、対話のやり方を描くのに難儀した(やっぱり死ぬの生きるのって話なんだからどうしたってそれ相応にしっかり書かないと駄目だろうと思い……)というのも大きいですが、一番の原因は単純に、老化です。少しずつ頭の中身が風化・劣化してきていて、言葉を思い出すのに時間がかかるわ文章をうまく構築できないわそもそも考えていたことをどんどん忘れていってしまうわ、という状況にうまく対処できなかったというか。
 本当に自分にとってはもう年月は成長のための時間ではなくて、迫りくる老化・劣化に必死に抗うための時間になってしまったのだなぁ、と正直愕然としてしまいました。これ自分はまともに最後までこの話を書ききれるのか、という自信を持つことすらおぼつかなくなってしまうほど。
 ただ同時に、『これマジでとっとと書き終えないと読んでくださっている方々をお待たせしている間にあの世に行ってしまうかも』という焦りやらプレッシャーやらも如実に感じるようになってきたので、モチベーション自体はある意味上がってきた気がします。とにかく待ってくださっている方々に、たとえそういう方がいなくてもたまたま読んでくださった方に、そういう方もいなくても書いている自分自身に、少しでも満足を与えられるだけの作品をとっとと書き上げてしまわねば……!
 そううまくいくかどうかは定かではありませんが、とにかく自分なりに自分の作品と人生にけじめをつけるべく、頑張りたいと思います。

 今回はテドンイベント。幽霊村侵入編です。自分は当初、ここはもうちょいぶっ飛んだイベントにするつもりでした。『幽霊というものはこの世の理の上にはないもの』『どんな力を持っていてどんなことをしでかしてのけても不思議ではない』という設定が先にあったので、勇者としての力を必死に振るってそれに対抗するようなホラー系戦闘イベントを考えていたのです。
 ただ、これまで書いてきた話の中で、仲間たちの設定――というか作中での経験というかで、『もう死んだ人』に対する執着というか、思いきれないやるせないなにかを抱いているキャラがけっこういるな、ということに気づきまして(某盗賊以外)。そういうキャラが死人と対話なりなんなりして、その執着をなんとか解放というか、すっきりさせられるイベントを無理なく入れられるのはテドンだけなんじゃないか、ということを遅まきながら理解し。
 なんとかかんとか死者との交流イベントをねじ込んでみたという次第です。某盗賊はともかくとして(いや彼も幼少期のプチトラウマを(仲間内にああいう類の子は確かにいただろうし、その当時は彼も自分の足場を固めるのに必死でガチで向き合うとかなかなかできなかったと思うし)幾分すっきりさせられたとは思うんですが)、いつかは書いておかなくちゃ、と思っていた仲間たちの普段は表面に出さない死者に対する想いを昇華するところを、曲がりなりにも形にできてほっとしています。
 ストーリーの流れ的にも、ネクロゴンドを目指す理由とモチベーションを一応は形にできましたし。神々の思惑とどう対峙するか、楽しんでいただけるように書きたいなぁと思います。

 次回はネクロゴンド。戦闘イベントから、できればラーミアまでたどり着きたいなぁというところ。イエローオーブのイベントも、きっちり納得できるように書くべく頑張ります。

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