「わーいっ! あなたがボクのお父さんですねっ!」 「お父さん、はじめまして。わたし、ルビアです」 長い夢から覚めた時のような、目眩のする感覚。 それから醒める間もなく、目の前に幼い顔が二つ並んだ。 「…………」 手が震えた。体中に痺れるような衝撃が走った。それは歓喜のためか、長い別れの時間を嘆く感情のゆえか。 そろそろと手を伸ばす。明るい金髪の下の顔が一瞬緊張した。自分もひどく緊張しているが、それでも湧き上がる感情を抑えきれず手は止まることなく動く。 そっと小さな体に手を回し、ゆっくりと、ぎゅっと抱きしめた。 「お父さん………?」 「ど……どうしたん、ですか?」 お父さん。父という称号。自分があの時なくした資格。 彼らにとっては自分は見知らぬ男でしかないだろうに。君たちはその名で僕を呼んでくれるのか。 たまらず、涙があふれた。 「………ごめんね」 相手が戸惑っているのはわかっていたが、謝らずにはいられなかった。二人を自分の胸に抱き寄せて、二人同時に顔を擦りつける。 「こんなに大きくなるまで、会いにいけなくてごめんね。こんな頼りないお父さんで、本当にごめんね……」 「お父さん……」 「坊ちゃん、それは」 サンチョの言葉にかまわず、いったん顔を離して二人を見つめる。二人の目も潤み、泣きそうに歪んでいた。 自分の顔は多分もうべしょべしょだろう。みっともないだろうけれど、それよりも今は気持ちを伝えたかった。 「会いたかった」 二人が小さく震える。 「僕はずっとずっと君たちに会いたかったよ……会いに来てくれて、ありがとう……」 「う……っ」 「お父さーん!」 自分に抱きついて大声で泣く二人を、アディムは思いきり抱き返し、自分も泣いた。生まれてこのかた、こんないろんな感情の篭った涙は、流したことがなかった。 グランバニア城下町はお祭り騒ぎ、というより宴会のような騒ぎの渦の真っ只中だった。街中にテーブルと椅子が出され、町中の食料庫を空にするような勢いで酒と食糧が供される。 城下町に住まうのは王家びいきの人間ばかり。王が、セデルとルビアの父が帰還したという知らせは、街中の人間にとって福音となったのだ。 どんな高級官僚も、病人も、貧乏人も。等しく酒盃を掲げて、王の帰還を祝う。多くの町民にとって、長らく夢見てきた夜であった。 「グランバニアに乾杯!」 「グランバニア王家に乾杯!」 「セデルさまとルビアさま、アディム王に乾杯だ!」 「忠実なサンチョ殿に、魔物たちに、我らグランバニア国民に乾杯!」 「いやぁ、めでてぇ、めでてぇ、めでてぇこったなぁ!」 街中のテーブルで繰り広げられるそんな騒ぎをよそに――アディムは城下町中央に出された王家専用長椅子に座って、自分の子供たち――セデルとルビアを膝の上に抱き上げていた。 「……お父さん、お膝痛くない?」 「大丈夫だよ。お父さんはこんなことぐらいで痛がるほどやわじゃないぞ」 ルビアのおずおずとした言葉に、アディムは優しく笑って言う。 いかにアディムが長身とはいえ、セデルとルビアの二人を乗せている状態ではかなり膝の上は狭苦しい。だがセデルはアディムに背中を預けてご満悦だった。 「お父さんっておっきいんだね! それに力も強いんだ! ボク、もうおっきくなっちゃったから抱っことかされなくなったけど……お父さんだったらすごく気持ちいいや!」 「そうか。よかった」 アディムはまた笑って、セデルの頭を撫でる。そして、次にアディムの顔をちらちら見上げながらもじもじしているルビアに話しかけた。 「ルビアは、もしかして膝に乗るの恥ずかしいのかい?」 「え!」 ルビアはかあっと顔を赤くして、勢いよく首を振った。 「少し恥ずかしいけど、いいの! お父さんのお膝だから」 「そうか……」 アディムはまたも微笑んで、ルビアの頭を撫で、顔をのぞきこみ言った。 「恥ずかしいのにこんなことしてごめんね。だけど、僕はお前たちをほとんど抱っこしたり膝に乗せたりしてあげられなかった。それを完全に取り戻すことはできないけれど……せめて今日ぐらいは、ようやく再会できた今日ぐらいは……この八年間してあげられなかったことを、少しでもしたいんだ」 言葉を切って、顔を見つめるセデルとルビアの肩をそっと抱きしめる。 「わがままなお父さんで、ごめんね」 「そんなことない!」 セデルは叫び、ルビアはぶんぶんと首を振った。そして口々に言う。 「ボクだってお父さんにしてあげたいこといっぱいあるもん! してほしいこともいっぱいあるし!」 「それに、お父さんがしたいことをしてくれること、わたしたちすごく嬉しいの」 「これからだって取り返せるよ。ボクたちどっちも、いっぱいしたかったことしよ?」 「わたしたち、お父さんと仲良くなりたいの。仲良くなるために、いろんなことするって決めてたの。……仲良くしてくれる、よね?」 最後はすがるような目になってアディムを見上げる二人を、アディムはぎゅっと抱きしめた。 「当たり前じゃないか……僕は、お前たちとすごく仲のいい親子になりたいって、お前たちが生まれる前から思ってたんだから……!」 「お、お父さん……苦しいよ」 「あ、ご、ごめん! 大丈夫だったかい!?」 「うん……へいき」 「………セデル、ルビア………」 アディムは潤む目で双子を見つめ、優しく言った。 「僕は、お前たちが、大好きだよ」 セデルとルビアは嬉しそうに笑いあい、アディムに抱きついた。 「ボクたちもお父さんが大好きだよ!」 「うん。お父さん、大好き………」 「セデル、ルビア………!」 そしてまたぎゅっと抱きしめる。 こんな調子で別れていた八年を全力で取り戻そうとする親子に、話しかけようとする者は一人もいなかった。アディム王に八年ぶりに挨拶しようと近寄ってきたものは何人もいるのだが、ほとんど子供たちしか見えていないアディムに気を遣った、というか気を遣わざるをえない気迫が感じ取れたのである。 サンチョやオジロンも遠巻きに見守ってこっそり涙ぐむだけで、話しかけようとはしない。セデルとルビアがどんなに父親に会いたいと思っていたか知っていたし、アディムがどれだけ双子を大切に思っているかということも八年前の記憶から想像がついたからである。 王家の親子を遠巻きにしながらも、宴は長いこと続いた。 夜もふけて、宴でもあらかたの人間が沈没した頃。 「よっ……と」 アディムはそっと、セデルとルビアをベッドの上に下ろした。セデルもルビアもぐっすりと寝入っている。 二人の上から優しく布団をかけてから、部屋の中を見渡した。二人の部屋はきれいに片付いていて、おもちゃの類が見当たらなかった。 召使いの人とかが片付けてるんだろうか、と思いつつ手近の棚を開けてみて思わず微笑む。おそらくは宝物を入れる棚なのだろう、蛇の抜け殻やらきれいな小石やら壊れた懐中時計やら、さまざまなものが整理されずにぎっしりつまっている。 僕もまだ父さんと一緒にサンタローズにいた頃は、こういうの集めてたよな。 二人の方を振り返り、近寄って顔をのぞきこむ。二人ともぐっすり寝ているようだった。 自分も部屋に戻って休むべきなのだろうとは思う――だが、どうにも離れがたかった。八年も離れていたのに、また離れるなんてはっきり言って冗談ではない。 この双子の姿をもっと見ていたかった。寝ている姿もあますところなく見たい。寝言も全部聞きたい。もし寝言で『お父さん……』なんて言ってくれちゃったりしたら! 寝ていながらも、答えがなかったらきっとセデルもルビアも寂しく思うに違いない! ダメだダメだダメだこの上さらに二人に寂しい思いをさせるなんて! やはり自分はずっとこの二人のそばにいなければ! ああでも困ったことに人間には睡眠という無粋なものが必要なのだ。自分も眠らないわけにはいかないだろう。もし睡眠不足の顔なんて見せたら二人ともきっと心配するだろうし―― などとアディムが一人煩悶していると、ふいにがちゃりとドアが開いた。 入ってきたのはサンチョとオジロンだ。 「サンチョ、叔父さん……」 小さく言うと、二人は微笑んで、アディムの側に寄ってきた。二人一緒に寝ている双子の顔をのぞきこんで、顔を見合わせ囁く。 「よく寝ているようだな」 「ようやくお父上と会えて、今までの疲れが出られたのでしょう。お二人ともおはしゃぎのようでしたし」 「ああ……そうだな」 「……サンチョ、オジロン叔父さん」 「はい、なんでしょう坊っちゃん」 「なんですかな?」 「ありがとうございます」 アディムは深々と頭を下げた。 「セデルとルビアを、こんなにいい子に育てていただけて……感謝の言葉もありません。本当に……本当に、ありがとう」 「な、なにをおっしゃるんです坊っちゃん! 坊っちゃんの御子をお育てできるってことは、私にとってもこれ以上ない光栄なんですよ? 感謝するのはこちらの方ですとも!」 「そうだとも。それにわしはこの子たちからすれば大叔父に当たるのだから、誠心誠意育てるのは当然だ。それに、この子たちを育てたのはわしらだけではないぞ」 「え?」 「あなたの残された魔物たち、乳母や召使いや兵士たち。城下町に住まう者たちはほとんどがこのお二人を我が子我が孫のように思うておる。城中がこの子たちのことを慈しんでおったよ」 「そうですか……」 アディムは静かに、優しく、どんな者も一目で惹きこまれる笑みを浮かべて、そっと双子の髪を撫でた。 「じゃあ明日は城中、街中のみんなに挨拶しなきゃならないな。僕の子供をいい子に育ててくれてありがとうって」 「それがよろしいですよ」 「そうと決まればアディム王も早く休まれた方がよいぞ。アディム王のお部屋はそのままにしてあるゆえゆっくり休息をとられるがよろしかろう」 「それはそうなんですけど……立ち去りがたいですね。この子たちから一瞬たりとも目を離したくない。この子たちの姿全て、この目に焼きつけておきたいと思ってしまう……」 双子の髪を撫でながら真剣な口調で言うアディムに、サンチョとオジロンは微笑んだ。 「それをお聞きになったらセデルさまもルビアさまもさぞ喜ばれることでしょう」 「気持ちはお察しするが、お体をお厭いになられよ。これからはずっとお二人と共にあることができるのだから」 「ええ……」 静かに部屋を出て行くサンチョとオジロンを見送るのもそこそこに、アディムはまた双子を眺め始める。すうすうと静かな寝息を立てている双子を、毛の一本一本に至るまでじっと見つめた。 大きくなったなぁ。僕がこの前見た時は両手を使えば二人一気に抱き上げられるくらい小さくて、髪の毛もまだほとんど生えてなかったのに。 セデルの髪は明るい金髪だ。太陽の光がよく似合う。 ルビアの髪はどちらかというとプラチナブロンドに近い。月の光みたいに静かな輝き。 こうして見ると、セデルの方がビアンカに似てる。目のあたりとかそっくりだ。口元は僕似だけど。 ルビアは輪郭が僕の小さい頃に似てる気がするな。目元も。瞳の色はビアンカと同じ、碧色だけど―― 大きくなったんだ、本当に。僕が見ていた頃は、まだ顔の作りもはっきりしていなかったのに。 それが、八年という歳月の重みか。アディムはぐっと拳を握り締めた。 もう、離れない。離さない。僕はこの子たちを、絶対に守る。自分の手で、育ててみせる。 そう心の中で何度も繰り返した誓いを噛み締めていると、こんこん、とドアを叩く音が聞こえた。 きゅっと眉をしかめたものの、放っておくわけにもいかない。扉の方に向かいドアノブに手を触れた瞬間、アディムが開ける前に扉が引き開かれた。 その向こうから現れたのは―― 「……ドリス、さん?」 「ドリスでいいわよ。従兄弟なんだし。第一あなた王様じゃない」 「………はあ」 八年前よりはるかに大人っぽい落ち着いたドレスを着たドリスは、部屋の中に入ることなく顎をしゃくった。 「ちょっと顔貸して。大事な話があるの」 「……ここじゃ駄目なのかい?」 「子供たちを起こしたいの? 心配しなくても大して時間は取らせないわよ」 「……わかった」 口調を意識してやや砕けたものにすると、アディムは名残惜しげに双子の方を見やってから、ドリスのあとについて歩き出した。部屋の扉はそっと閉めてもらっておいた鍵をかける。 連れ出されたのは王家の人間の居住区の真ん中のテラスだった。月光が辺りに蒼い影を作っている。 ドリスはテラスに出ると、くるりと振り向き、単刀直入に切り出した。 「聞きたいんだけど。王様、これから王妃を探しに旅立つつもり?」 アディムは表情を変えずに、きっぱりとうなずいた。 「ああ」 ドリスは深いため息をつく。そして、続けて訊ねた。 「セデルとルビアは、どうするの?」 「もちろん、連れて行く」 「…………」 ドリスはきゅっと唇を噛み、アディムを睨む。王に対する礼儀なんてお構いなしだが、どちらもそんなことは気にも留めていない。 「王としての責任とか、自覚とかないわけ? 八年も国を放りっぱなしにしてこれからまた国を空けるの」 「それは本当に申し訳ないと思っているよ――だけど今の僕が国で玉座を暖めていたところで、国に対してさして役立てるわけじゃない。僕は王になることが決まってから勉強はしたけど、まだまだ国政に関しては素人の若造にすぎないんだからね」 「だから勉強して役立てるようにするんじゃないの? 街のみんなは正統な王様の存在をずっと求めてたんだよ」 「正統な王といっても、みんなが求めているのは象徴だ。王という旗頭だ。オジロン叔父さんは立派に国を運営して、国民はみんな飢えることなく豊かに生活している。このままでは絶対にいけない、とは僕は思わないよ」 「象徴、けっこうじゃない。みんなはあなたにパパス王の子供として国を治めてほしいのよ。もともと象徴として王になってくれって言われたんだから、それでいいじゃない」 「……こんなことを言うのはおこがましいかもしれないけれど、僕は遊びで王を引き受けたんじゃないんだ。父さんが国を僕に残したというのなら、受け継ごうと思ったから。僕はだからお飾りの王になるつもりはない。よい王になって国をよくしていきたいと思っている――だけど、今のままじゃそれは絶対に適わないんだ」 「………なんでよ」 ドリスの声は低く掠れて、それでいて興奮の熱を感じさせた。怒っているのとはまた違う、深い熱情。 アディムはドリスの心を想い、心痛を感じながらも、きっぱりと言う。 「ビアンカが、いないから」 「………………」 ドリスはいったんうつむいてから、ばっと顔を上げてまくしたてた。 「兵士を動かして待っていればいいじゃない。それが国王の仕事でしょ」 「僕は人を動かすだけの人間になりたいとは思わない。それに、はっきり言ってしまうと僕以上に信頼のおける人間がいないんだ」 「人を信頼するのも王様の仕事じゃないの。グランバニアの兵士たちがそんなに信じられないわけ?」 「僕はただ手をこまねいて待っていたくはない――なにより、これは僕の、僕たちの家族の問題なんだ。自分自身で探し出したい、人任せにしたくないんだ」 「第一! 王妃さまがいるかいないかがどうして王の資格に関係あるのよ。そりゃ……あたしだって、王妃さまに帰ってきてほしいけど、それとこれとは全然無関係でしょ!?」 「無関係じゃないよ」 「どこが!」 アディムはじっと、静かにドリスを見つめて、言葉を紡ぐ。 「子供に母親を会わせられないような父親が、いい王になれるとは思えない」 「…………」 ドリスは不意を討たれたように目を丸くした。 「いい父親になれない男が、家族も幸せにできない男が、国を幸せにできると思うかい?」 「………だから、王妃さまを探すの?」 アディムはうなずく。 「セデルとルビアを、母親に会わせてあげたいんだ。二人とも、この八年ずっと僕たち両親を探してきた。父親に会えたように、母親にも会いたいと思っているんだよ」 「……でも! なんでセデルとルビアを連れて行くわけ! 危険だってわかりきってるじゃない、危ない目に遭わせたくないとか思わないの!?」 アディムはその言葉に、ぐっと奥歯を噛み締めた。それは、何度も何度も考えて、その度に苦しんだ問いだった。 「思うよ。すごく強く思う。セデルもルビアも、傷つけたくない、傷つく心配のない場所で大事に大事に育てられたらどれだけいいかと思う」 「じゃあなんで!」 アディムはじっとドリスを見つめた。そのひどく深さを感じさせる瞳に思わずドリスが身を震わせた時、アディムの口から言葉が飛び出た。 「セデルとルビアが、僕といっしょに行きたいと思っているから」 ドリスが身体の奥に触れられた時のように身を震わせる。それが自分の言葉のせいであることを自覚しながら、アディムは言った。 「僕は子供の頃、父さんと一緒に旅暮らしだったけど、少しも辛くはなかった。父さんと一緒にいれて嬉しかった。父さんに置いていかれると、不安で寂しかった。僕は父さんと一緒にいたかったんだ。どんなに辛くても」 「…………」 「もちろん僕とあの二人は違う。だけど二人とも、僕と一緒にいたいと思ってくれていることはわかるんだ。僕だってずっと一緒にいたい、離したくない。もちろん自分の感情よりセデルとルビアの方が大切だけど、二人とも僕とずっと会いたかったのはわかるんだ。離れたくないって思ってるのはわかるんだ。その気持ちを無視して、身の安全だけを優先するようなことはしたくない」 そう言うと、アディムは深々と頭を下げた。 「………なに?」 「ごめん。そして、ありがとう。心配をかけてしまって――そして、心配してくれて」 「……いいよ、そんなの。あたしにとっても、あの子たちは大切な兄弟みたいなもんなんだから」 言うと、ドリスは空を仰いだ。 「あーあ、あたしこれでも王様を説得しようと決死の覚悟で来たのに。あっさり説得されちゃったなぁ!」 その目が潤んでいるのにアディムは気づいたが、優しく微笑んだだけでそれについては触れなかった。 「君もセデルとルビアを育ててくれたんだね。本当にありがとう、ドリス」 「いいって言ってんでしょ、そんなの。――それに、あの子たちはあたしたちじゃなくて、あたしたちよりもずっとずっと、あんたを求めて、あんたに会いたいって思ってたんだからさ」 ちらりとアディムを見て、くるりと背を向ける。 「大切にしてやってよ。泣かせたら承知しないんだから」 「もちろん。絶対に泣かせない。僕の全てをかけて、あの子たちを守るよ」 「――よし」 ドリスは背を向けたまま手を振って、テラスから去っていく。アディムは一瞬月を見上げて、一人誓った。 セデルとルビアを育ててくれた全ての人に感謝して、あの子たちをきちんとまっすぐ育てていく。あの子たちを育ててくれた人たちに顔向けできないようなことは、絶対にしない。 そう月に誓うと、アディムは足早に子供部屋へと向かった。寝顔を一晩中でも見ていたい、それになにより明日は朝一番に子供たちに『おはよう』と言うのだ! |