読書にまつわる五つの話。

お礼小話その1・ガンパレ。
舞 「なんだこれは。保護者の方々へ……? アンケートか?」
滝川「うん、そう。ひなたが幼稚園でもらってきたんだよ。なんつーかこーいう時にひなたもでっかくなったんだよなーって実感しねぇ?」
舞 「うむ、それは確かにそうだが。なぜ私に答えさせるのだ」
滝川「……だってアンケート内容が『普段読んでいる本について』なんだもん! 俺漫画しか読んでねーからさっ、正直に書いたらひなたが幼稚園でいじめられちまうかもしれないじゃん!」
舞 「……たわけ」


大人って本を読まない人は本当に読みませんからね。


お礼小話その2・サクラ大戦X。
ダイアナ「……こは生ける姿か、非ずただ陰をしも見るか……細き指と指の輪とを唇に触れしめて……」
新次郎 「ダイアナさん、なに読んでるんですか?」
ダイアナ「あら、大河さん。ふふふ、私のお気に入りの詩集です。ステファーヌ・マラルメですよ」
新次郎 「マラルメ……って確か、フランスの詩人ですよね」
ダイアナ「あら、よくご存知ですね。十九世紀後半に活躍した、フランス象徴派の最高峰とも言われる詩人なんですけど、その難解さからか少し敬遠されがちなのが可哀想な詩人です」
新次郎 「はぁ……ダイアナさんって本当に詩が好きですよね。普通そんなにすらすら詩人の特徴とか出てこないですよ」
ダイアナ「ふふ、好きなことはよく覚えるものですよ。大河さんだって私たちのプロフィールを一回聞いただけでしっかり覚えてるじゃないですか」
新次郎 「………う」


帝国軍人としてそれはどうなんだろう、とかちょっと思ってしまった新次郎でした。


お礼小話その3・九龍。
八千穂「……さいつ頃、雲林院の菩提講に詣でて侍りしかば、例人よりはこよなう年老ひ、うたてげなる翁二人、嫗といき合ひて……」
七瀬 「あ、八千穂さん、ここの現代語訳違ってますよ」
八千穂「……ううう、あーもう古典って日本語なのになんでこんなに難しいのー!?」
九龍 「まーまーやっちー。場所と時代によって言葉が違ってくるのは当たり前だって」
八千穂「九チャンはいいなー、頭よくて。ずっと外国にいたのに古典も得意なんだもん」
九龍 「頭がいいわけじゃないって。俺は要領がいいんだよ。戦闘術の訓練と一緒、コツさえ覚えればあとは簡単なんだって」
八千穂「そのコツ教えてよー! あたしだって要領よく勉強したい!」
九龍 「そ? じゃあ遺跡に行こうか」
八千穂「………へ?」


九龍はどんな勉強もサバイバルの中で覚えたので、椅子に座りながらコツを教えることはできないのだそうです。


お礼小話その4・テニプリS&T。
天野  「ううう、難しい字ばっかで全然読めない……」
リョーマ「……まだまだだね」
天野  「そーいうリョーマくんだってさっき読めない漢字辞書引いてたじゃないかー!」
リョーマ「……漢字苦手なだけ。天野ほど頭悪くない」
天野  「リョーマくんひどいっ!」
桃城  「およ? こんなとこでなにやってんだよお前ら」
天野  「あ、桃先輩……実は国語の授業で出た課題図書が難しくって……」
桃城  「なんて本?」
天野  「ガリバー旅行記です」
桃城  「ガリバー旅行記ぃ!? お前らあんなもんもまともに読めねぇのかよー!」
リョーマ「……じゃあ、桃先輩なら読めるっての?」
桃城  「たりめーだろ、ガキの頃何度か読んだことあっからな」
天野  「じゃ、読んでみてくださいよ(渡す)」
桃城  「……へ? なに、この分厚い本」
天野  「ガリバー旅行記です」
桃城  「へ……だって、ガリバー旅行記って絵本じゃ……」
リョーマ「読めるって言ったよね?」
桃城  「いや、その……」
天野  「言いましたよね?」
桃城  「あの……」


平謝りして帰りにジュースおごってようやく許してもらいました。
(ガリバー旅行記の原作は毒のある風刺に満ちた数百ページはある文学作品なのです)


お礼小話その5・DQX。
先生  「じゃあ今日渡したご本を家に帰って読んで、感想文を書いてきてください!」
生徒たち『は〜い!』

セデル 「……っていうわけでぼくたち今日はご本読まなくちゃいけないんだ」
アディム「……そうなのかい」
ビアンカ(……今日は一緒に遊べないのか……とかがっかりしてるわねあの顔は……)
ルビア 「わたし、このお話好き。お父さんはなにか好きなご本ってある?」
アディム「え………」

ビアンカ「……あなた、なにもそんなに必死になって本読まなくても……」
アディム「だってビアンカ! 君はあの時の二人の顔を見なかったのかいっ!? 父親がまともに本を読んだことがないと知った時のあの二人の絶望に満ちた顔……! 僕は二度と二人にあんな顔をさせたくないんだ!」
ビアンカ「絶望って……二人ともちょっと驚いてただけじゃない……」


奴隷→旅暮らし→王様の仕事、と多忙だったアディムはこの世界ではまだ高価な本を読んだことがなかったのです。


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