拍手小話『八百万間堂昔話』〜『かぐや姫』

 …………。……………。………………。
 ……そうか。俺が、話すのか。
 ………わかった。
 ………むかし、むかし。竹取の翁という、竹を取り、様々な用途に使い生活している老人が、妻の嫗と一緒に暮らしていた。
ライ「俺が爺さんかよ……まーいーけどな、爺さんみてーな髪だってガキの頃から言われてたし」
リューム「ぜーたく言うな、俺なんかばーさんだぜ? なんでまだ生後一年にもなってねーのにばーさんになんなきゃなんねーんだよ」
 ある日、竹取の翁がいつも通りに竹林に出かけていくと、光り輝いている竹があった。
ライ「うわ、なんだありゃ? 竹なのに光ってんぞ、あからさまに怪しいな。あんま近寄んねぇ方がいいな、こりゃ」
 ……………………。
ライ「……へいへい、わかったよ。行きゃいいんだろ行きゃあ……おやー、あれはなんだぁー、不思議だなー調べてみるかー(棒読み)」
 不思議に思って近づいてみると、中から三寸ほどの可愛らしい女の子が出てきた。
ミルリーフ「じゃんじゃじゃーん! かぐや姫だよー! 会いたかったっ、パパぁ!」
ライ「どわっ、ミルリーフっ!? どうしたんだお前っ、なんか小さいぞ!?」
ミルリーフ「うん、それはね、ミルリーフがかぐや姫だからなんだよっ。あと三ヶ月したらどんどん大きくなって、お年頃になるからねっ! そしたら、パパ、ミルリーフとけっこんしてくれる……?(小首傾げ&上目遣い)」
ライ「……親子は結婚できねーってわかってんだろ。ったく、しょうがねぇなぁ、お前は……(抱き上げてなでなで)」
ミルリーフ「えへへっ♪ パパぁv」
 竹取の翁は、その子供を連れ帰り、自分たちの子供として育てることにした。
リューム「……ミルリーフが俺らのガキかよ。なんか納得いかねー」
ミルリーフ「むぅっ、ミルリーフだって納得いかないもん! なんでリュームがパパの奥さんなの? そんなのズルイ!」
リューム「なっ、ばっ、俺だって別に好きでこんな奴の妻になったわけじゃねぇよっ!」
ライ「おい、お前ら」
リューム「あっ……!」
ミルリーフ「あっ、パパぁ♪」
リューム「あ、の、あのな、俺、あの……その……(泣きそう)」
ライ「? なにやってんだ、いいから二人ともとっととこっち来い。飯ができたぞ、今日は鮎の塩焼きと胡瓜のすり流しとしょうがご飯だ!(イイ笑顔)」
ミルリーフ「わーいっ、パパのしょうがご飯大好きー!」
リューム「…………」
ライ「おい、どうしたんだよリューム。早く来ねぇと飯が冷め」
リューム「うるせぇばかやろーあっちいけばかー!」


 その後、竹林に行くと、竹の中に金を見つけることが続き、翁の夫婦は豊かになっていった。
ライ「ったく、驚いたぜ。竹を伐ってみたらいきなり中に金がぎっしり詰まってんだからな」
リューム「? けどお前金とか全然持ってねーじゃん」
ライ「当たり前だろ。持って帰らなかったからな」
リューム「……はぁ!?」
ライ「なに驚いてんだ。だって竹の中に金だぜ? ぜってぇなんか妙な仕掛けがしてあるに決まってんじゃねぇか。そんなもんに首突っ込んだらぜってぇろくでもねぇことに巻き込まれるに決まってんだろ? そもそもそんなことしたらネコババだしな、一応通報したし。俺は犯罪者になる気は少しもねーからな」
リューム「そ、そりゃそーかもしんねーけどさ……」
ライ「人間堅実が一番! 爺さんになるまでこつこつ、まっとうに人生を生きていく! それがまともな人生ってもんだ、あんな怪しげな金拾うなんてもってのほかだぜ」
リューム「はぁ……」
ミルリーフ「わー、パパかっこいいっ!」
ライ「なに言ってんだ、バカ。さ、飯作るとすっか。お前らも手伝えよー?」
ミルリーフ「はーいっ!」
リューム「へいへい」
 ……わけではなかったが、親子三人で幸せに暮らしていた。
 翁が見つけた子供はどんどん大きくなり、三ヶ月ほどで年頃の娘になった。
ライ「おおー、マジで三ヶ月でもともとと同じくらい大きくなったなー」
ミルリーフ「えへへっ、すごいでしょっ? もうパパと結婚もできるんだからっ」
リューム「そりゃ無理だろ。だってお前もともとと同じくらいになっても人間のガキくらいの大きさしかないじゃん」
ミルリーフ「むぅっ、リュームだってちっちゃいくせにぃっ。リュームのばかばかばか!(ぽかぽかぽか)」
リューム「てっ、てぇなっ、やるかっ?」
ライ「喧嘩すんじゃねぇ、お前ら!」
 この世のものとは思えないほど美しくなった娘に、人を呼んで名前を付ける事になった。呼ばれてきた人は「なよ竹のかぐや姫」と名付けた。
ライ「……へ? まだかぐや姫って名前、ついてなかったのか?」
ミルリーフ「うん、そうみたい。たぶん最初あんまりちっちゃかったから、育たないって思ったんじゃないかなぁ、竹取の翁さんたち。昔は子供が生まれても、ちゃんと育つってわかる生まれてから七日後まで名前とか決めなかったっていうし」
ライ「なんだそりゃ。せっかく子供ができて、一生懸命育てようとしてるってのに、名前つけねぇっておかしいだろ(顔しかめ)」
ミルリーフ「うんっ、そうだよねっ、パパはそんなことしないよねっ!(抱きつき)」
ライ「こら、ミルリーフ、じゃれるなって!」
リューム「………(むすー)」
ライ「……なにむすっとしてんだよ。しょうがねぇなぁ、お前も来い」
リューム「なっ、なに言ってんだよっ! 俺は別にんなことしたくねーやいっ、ばーかばーか!(ぽかぽか)」
ライ「へいへい、そーですか(頭ぐしゃぐしゃ)」
 この時、男女を問わず人を集めて、三日に渡り祝宴をした。
ライ「よっし、宴会か。だったら俺が腕を振るうっきゃねぇな! 魚や肉や麦や木の実はこの前の食材狩りでいっぱい取れたんだ、あとは野菜と米を安く手に入れてやるぜ!」
ミルリーフ「ミルリーフもお手伝いするっ!」
リューム「しょうがねぇなぁ、俺も少しくらいなら手伝ってやるか」
コーラル「……ボクも、頑張る」
ライ「よっし、みんなやるぞ! えい、えい、おー!」
三人『えい、えい、おー!』
ライ「……あれ? 今なんか妙なこと起こんなかったか?」
コーラル「気のせい、かと」


 世間の男達は、高貴な人も下層の人もみな、なんとかしてかぐや姫と結婚したいと思った。
ライ「………はぁ!?」
リューム「なに考えてんだそいつら、いい年こいてこんなガキ相手にしてよー」
ミルリーフ「むーっ! ミルリーフガキじゃないもんっ!」
コーラル「精神的にどうかはともかく、外見年齢が子供のものであるのは言い訳しようのない事実かと」
ミルリーフ「むー、それはそうだけどぉ……」
ライ「許さねぇ」
三人『え?』
ライ「冗談じゃねぇ……誰が許すかなに考えてんだそいつら! うちの子に妙なこと考えてんじゃねぇぞ馬鹿野郎、ふざけんな家に来た奴ぁ全員叩き出してやるっ、二度と顔見せんなっ!」
リューム「うわー、親バカ発動してやがる」
ミルリーフ「えへへー、パパミルリーフのこと大事なんだー。嬉しいなぁ……パパ大好きっ♪(抱きつき)」
 その姿を覗き見ようと竹取の翁の家の周りをうろつく公達は後を絶たず、彼らは竹取の翁の家の周りで過ごしていたが、その内に熱意の無い者は来なくなっていった。
リューム「そりゃそーだろーなー、こいつ来る奴来る奴水ぶっかけるわ塩撒くわそうでなきゃ実力行使で追っ払ってたもんなー」
ライ「たりめーだろーが、あんな変態どもにミルリーフ差し出してたまるか!」
ミルリーフ「うんっ♪ ミルリーフはずっとパパたちと一緒にいるんだもんっ!(抱きつき)」
コーラル「……でも、公達に平民がそういうことをするというのは、状況的に考えてかなりヤバいものはある、かと」
ライ「へ? そうなのか?」
コーラル「公達というふうに呼ばれるのは、親王・諸王などの皇族か、摂関家・清華家などの子弟・子女だけ。つまりかなりの上級貴族、ということになる。それが平民に水ぶっかけられたり塩撒かれたり殴る蹴るされるというのは、この時代だと普通即斬り捨て御免、かと……」
ライ「……上等じゃねぇか。どんな偉い貴族さんなんだか知らねぇけどなぁ、俺の家族に手ぇ出そうってんならいくらでも喧嘩買ってやらぁ!」
ミルリーフ「パパ、カッコいー!(ぱちぱち)」
リューム「へっ、まーお前らしいよな」
コーラル「……うん。お父さんらしい」
ライ「けど、数を頼りに攻められたら負けるからな。よしみんな、家財道具まとめろ、いつでも逃げ出せるように準備しとけよ。俺も調理道具と簡易台所をきっちり準備しとかねぇと」
ミルリーフ「はーいっ!」
リューム「んー、まーしょーがねーか。着るもんとか持ってった方がいいよな……」
コーラル「……万事、了解……」
 最後に残ったのは好色といわれる五人の公達で、彼らは諦めず夜昼となく通ってきた。
ライ「……来ねぇな。敵」
ミルリーフ「うん。てっきりブシさんとかがどんどん来るのかなーって、いつでも逃げ出せる準備してたのにねー?」
リューム「なんか、拍子抜けだな。おいコーラル、きんだちってのホントにそんなに偉い奴らなのかよ?」
コーラル「……偉いかどうかは、ともかく。身分が高いのは、確か」
リューム「なら、なんでなんも来ないんだよ?」
コーラル「…………」
ライ「ま、来ないなら来ないでけっこーなことだけどな……っつか好色な奴らが通ってきただとぉ!? 上等だてめぇら命がいらねぇ奴からかかってきやがれ!」
 五人の公達は、石作皇子、車持皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂といった。


 彼らが諦めそうにないのを見て、翁がかぐや姫に「翁も七十となり今日とも明日とも知れない。この世の男女は結婚するもので、お前も彼らの中から選ばないか」と
ライ「ふざけんなてめぇらうちの子相手になに考えてやがんだ叩き出されたくなけりゃとっとと帰りやがれ!」
ミルリーフ「そーだよ、帰ってよぉっ」
リューム「こんなガキ相手になに考えてんだよー、へんたーい」
 ……言わなかったが、とにかく
コーラル「公達が平民の娘に声をかけるということは、まず間違いなく体だけ弄んでポイ路線しかないかと。そもそも貴族にとっては平民の娘に声をかけるということ自体恥なはず。つまりとんでもなく好色な奴らが、超美人だというかぐや姫と(ピ―――)したいと考えたとしか思えない」
ライ「なんだと……? 上等だ。てめぇら、ぶっ殺されたい奴からかかってきやがれっ!」
 ………………。
遼太郎「いや……俺としても別に好きでこういう役になったわけじゃなくだな……そう、菜々子! うちの菜々子の遊び相手になってもらおうかと思ってな!」
ライ「……おっさん、それ本当だろうな?」
遼太郎「本当だ! 普通の男はこんな小さい子にどうこうしようなんぞと」
ピサロ「無垢なものを育てる楽しみ、というのもあるがな」
遼太郎「おおおぃ!!?」
ピサロ「無垢なものを自分の好みに育て、食べ頃になった時に収穫する……というやり方も、魔族の中ではごく普通のものだ」
遼太郎「ここは人間の世界だ! 法律を守れ法律を!」
来須「…俺には、気を遣わなくてもいい」
ライ「は……? なに言ってんだこいつ?」
来須「…似合ってる(来須は、それだけ言って、帽子を深くかぶり直した)」
ライ「だから意味わかんねーんだよ、おいっ!」
ディリィ「まぁ気にするな、そういう奴だ。ああちなみに言っておくがな、わしは幼女でも問題なく愛せる男だ、寿命も長いしそなたが成長するまでたっぷりねっとり見守ってやれるぞ?」
ライ「てめぇ今なに考えた言ってみやがれ……!」
マグナ「ああ、確かに幼女って男のある種の本能を呼び覚ますものがあるよなぁ……はっ!」
ライ「……マグナ……」
リューム「マグナにーちゃん……」
ミルリーフ「マグナおにいちゃん……」
コーラル「マグナさん……」
マグナ「そ、そんな目で見るなよー頼むから! 俺は別に変態とかそういう奴なわけじゃ」
ライ「……短いつきあいだったな、マグナ。先に言っておくぜ、これまでありがとよ(すらぁり)」
マグナ「わーっ! ちょっと、戒刀乱魔は洒落になってないから!」


 ………………。
リューム「おーい、黙るなよナレータぁー」
 …………。しかし、展開が変わった以上、俺にできることはないだろう。
ライ「しょーもねーこと言ってんなよ、変わったっつったってそんなに変わってねーだろ……えっと、原作なら翁が結婚したがらない娘にこの五人の中の誰かと結婚しろっつって、かぐや姫に無理難題出されて諦める……? なんだそりゃ、なに考えてんだこの翁ってやつ、嫌がる娘結婚させようなんてどーいうつもりだふざけんじゃねぇよ!」
遼太郎「まったくだ! 娘の意思を無視してどうこうしようなんつう親は子を持つ資格はねぇ!」
ライ&遼太郎「(がっしと握手)」
マグナ「いやでもさぁ、この翁ってもう七十にもなるんだろ? 当時の七十っつったら、もう本当いつ死んでもおかしくないくらいだよな。それなら娘に嫁いでもらわないと心配だってのはわかんないでもないよ、もちろん娘の意思無視しようなんてのは問題外だけどさ」
ライ「まぁ、確かに経済力は大事だよな……よしミルリーフ、今のうちに手に職をつけて自分の面倒は自分で見れるようにしとくんだぞ。リュームもコーラルもな」
ミルリーフ「はーいっ」
リューム「なんだよその展開……つか、実際こいつらの求婚どうやって退けんだよ?」
ライ「まずきっぱり断る、それでも力ずくで押し通そうってんならこっちも力で返す」
ピサロ「ほう、面白い……魔王相手に、その小さな体でやりあえる、と?」
マグナ「おいおい本気で喧嘩すんなよー」
コーラル「……はい」
ライ「どうした、コーラル?」
コーラル「ボクに、考えがある」

遼太郎「ええと、俺は仏の御石の鉢……? これをどうすればいいんだ?」
ミルリーフ「えっとね、仏の御石の鉢のかぐや姫もでるっていうのをあげるからね、菜々子ちゃんに持って帰ってあげてほしいの。それを使っておままごととかしたら、菜々子ちゃん喜ぶんじゃないかな? 最新流行ばーじょんだよっ」
遼太郎「む……そ、そうか。確かにお嬢ちゃんぐらいの女の子が言うんなら……そうだな、今日くらい早めに帰るか……(そわそわ)」
ピサロ「ふん、私は根が銀、茎が金、実が真珠の蓬莱の玉の枝か。それをどうしろと?」
コーラル「……造形図面をあげるから、これを元に作ってみるといいかと。そしてそれをロザリーさんにあげるといい。浮気のお詫びの点数稼ぎくらいにはなるはず」
ピサロ「……貴様……どこでロザリーのことを……」
コーラル「秘密」
リューム「そんであんたはこれな、火鼠の裘、こと太陽のローブ。防御力が高いローブだから戦いの時に使えるだろ。これやるからいざって時は手伝えよな」
来須「…その提案、受けよう」
ディリィ「ふむ、それでわしは?」
ミルリーフ「えっとぉ……ディリィさんには、龍の首の珠、なんだけど」
ディリィ「ほう……竜王のひ孫であるわしに、龍の首の珠、か」
ミルリーフ「うん、だからね、ミルリーフたち、先代の守護竜の瞳を装備する時は首にかけてるからね、これをちょっとだけ貸してあげるの」
リューム「そん中の記憶読みとれる分は読んでいいからさ、そんかわし俺たちにもあんたの記憶読ませろよな。せっかく竜同士なんだ、そーいう交流したっていいだろ」
ディリィ「……ふむ。心得た」
マグナ「え〜っと……んで、俺は?」
ライ「マグナは燕の産んだ子安貝だ」
マグナ「燕の子安貝……? そんなの渡されても正直使いどころがないんだけど……」
ライ「心配すんな、単に崖に上って燕の巣取ってこいってだけだから」
マグナ「……はぁ!?」
ライ「うちのミルリーフを妙な目で見たんだ、ただで済むとは思ってねぇよなぁ?(ヤバい笑み)」
マグナ「ちょ、そ、ま」
ライ「心配すんな、怪我したら治してやるし、燕の巣取ってきたらそれ使ってスープ作ってやるよ。……生きてたらな」
マグナ「お―――いっ!」
コーラル「……これにて、一件落着、かと」
 ………………。そういうことになった。


 そんな様が帝に伝わったそうで、かぐや姫に会いたい、という文を帝がよこすようになった。
ライ「……会いたい? ミルリーフをどうこうしようってんじゃねぇだろうな?」
コーラル「そういうことは、書いてない。ただ、会って話がしたい、とだけ」
リューム「ふーん……具体的にどこで話すんだろ。やっぱその帝ってやつの家で?」
コーラル「会ってもいい、と決まったら具体的に話を詰めようとしてる、と思う」
ミルリーフ「ふーん……でも、ミルリーフはあんまり会いたくないなぁ。なんだか珍しがられてるみたいで」
ライ「まぁな……じゃあ、とりあえずお断りの返事書くか?」
ミルリーフ「うん」
コーラル「…………」
 とりなしにも関わらず、かぐや姫はあくまで拒否を貫く。が、
ライ「は? 帝が訪ねてきた?」
リューム「……らしーんだよな。狩りの帰りに寄ったんで、悪いんだけど泊めてくれないかとか言ってたぜ」
ライ「怪しい話だな……けどまぁむげに断るわけにもいかねぇか……どうしたい、ミルリーフ?」
ミルリーフ「うーん……別に泊めてもいいけど……なんでそんなにミルリーフに会いたいのかなぁ」
ライ「まぁな……なんか裏があるのかもとは思うが、今から考えてもしょうがねぇよ」
リューム「そーだなー」
 そして帝はかぐや姫の家に泊まった。そして、
ライ「帝がいなくなったぁ!?」
リューム「ああ、あいつらが泊まってる部屋の方様子見に行ったらそんなこと言って右往左往してた! なぁこれってもしかしてっ」
ライ「……まさかとは思うが、一応ミルリーフのこと守りに行っとくか……」
ミルリーフ「きゃーっ!」
ライ「っ! どうしたっ、ミルリーフっ!」
リューム「おいこら帝ってめぇいくら帝だからって俺らの娘――」
コーラル「お邪魔、してます」
ライ「……は? コーラル?」
ミルリーフ「コーラルコーラルっ、それ取ってぇっ!」
コーラル「了解(ひょい、ぽい)」
リューム「……なんだよ、虫かよ。人騒がせな奴」
ライ「なぁミルリーフ、なんでも帝が急にいなくなったらしいんだが、こっちにそういう奴が来なかったか?」
ミルリーフ「帝? うん、来たよ」
ライ「なにっ!? どこにだっ!」
ミルリーフ「そこ(指差し)」
ライ&リューム『は……?』
コーラル「こんにちは。帝です」
ライ「………はぁっ!!?」
リューム「あ……なんかいろいろわかった。お前が帝だから、公達とか叩き出しても別に問題にならなかったんだ」
コーラル「ご明察、かと」
ライ「ちょ……待て! お前んなこと全然言わなかったじゃねーかよっ!!」
コーラル「聞かれなかったから……」
ライ「うぐ……つか、お前が帝ならなんでわざわざミルリーフに会いたいなんて手紙出したんだよっ!」
コーラル「そろそろバラす頃合いかと思って、効果的な演出になるよう狙ってみた」
ライ「むぐ……つか、第一なっ! 帝だってーんならなんでいきなり唐突に平民の家に現れてんだよっ!」
コーラル「それは暴れん坊帝的ななにか、ということで」
ライ「お前なぁ……」
コーラル「……お父さん、ボクと一緒にいるの、嫌?」
ライ「……(ふっ)。んなわけねーだろ。けどだったらもっと早く言えよ。無駄な気遣っちまったじゃねーか(頭わしわし)」
コーラル「(目を閉じてされるがまま)」
 …………。そういうことになった。


 帝と出会って三年の月日が経った頃、かぐや姫は月を見て物思いに耽るようになった。
ライ「お、どうした、ミルリーフ?」
ミルリーフ「……うん………」
 八月の満月が近付くにつれ、かぐや姫は激しく泣くようになり、翁が問うと「自分はこの国の人ではなく月の都の人であり、十五日に帰らねばならぬ」という。
リューム「はぁ!? そーなのかよ!?」
ミルリーフ「うん……そういうことみたいなんだ。ミルリーフは、月に帰らないとならないんだって」
ライ「………。ミルリーフ。お前は、帰りたいのか?」
ミルリーフ「……ううん………」
ライ「帰りたくないのか? ここにいたいのか?」
ミルリーフ「うん……できるなら、ずっとパパのそばにいたい……」
ライ「よし、ならそうしろ。俺たちも協力するから、お前もそうできるように根性振り絞れ」
ミルリーフ「パパ……いいの? ミルリーフ、いっぱいいっぱい迷惑かけちゃうかもしれないのに……」
ライ「いまさらだろ。そんなもんお前を拾った時にとうに覚悟してるよ」
リューム「つかな、これまでだって迷惑かけてんだ、いまさらちょっと迷惑増えたくらいで変わりゃしねーよ!」
ミルリーフ「むーっ! リュームの意地悪!」
リューム「へっ、文句があんなら恩返せるぐらいここに居座ってみせろっての」
ミルリーフ「あ……」
コーラル「帝の権力で、防衛陣を敷く。できるだけのことはやっておくべき」
ミルリーフ「うん……そうだね、ミルリーフも頑張るっ! パパとずっと一緒にいれるように、頑張ってみるっ!」
ライ「おっし、そうと決まりゃ、やることやるぞ!」
三人『おーっ!』
 そういうことになった。


 そして当日、子の刻頃、空から天人が降りて来た。
遼太郎「弓矢隊、前へ! てぇっ!」
レヴェジンニ「……昏睡の呪言=v
雑魚「(ばたばたばたばた)」
来須「…(ライフルすちゃっ)」
レヴェジンニ「畏れよ我を=v
雑魚「(わたわたわたわた)」
ライ「く……!」
コーラル「……やはり、モブは、役に立たない」
レヴェジンニ「かぐや、姫。迎えに、来たわ」
ミルリーフ「い……いやっ!」
レヴェジンニ「……いや?」
ミルリーフ「ミルリーフ帰らないっ! パパたちのそばにずっといるのっ!」
レヴェジンニ「……それは、できないわ、かぐや姫。あなたと、あなたの父親、と、では、生きる世界、が違い、すぎる」
ミルリーフ「う……」
レヴェジンニ「まず、月の世界、の住人で、あるあなたは、基本的に、老化、をしない。あなたの父親、が亡くなったあとも、ずっとこの世に、在り続ける。それは、あなたにとって幸せ、なこと?」
ミルリーフ「う、う……」
レヴェジンニ「のみ、ならず、月の世界の、この世界にはない力、を持つあなたは、この世界にいては騒乱を呼ぶ。それを放置しておく、ことは、天人の一人として、できない」
ミルリーフ「で、でも、でも……」
レヴェジンニ「で、も?」
ミルリーフ「み、ミルリーフ、ミルリーフ……パパと、一緒にいたいんだもんっ……!」
レヴェジンニ「……そう」
 天人は、うなずき、大きな袋を差し出した。
ライ「? これは……」
レヴェジンニ「天の、羽衣。中に、不死の薬、が入っている」
ライ「え……!」
レヴェジンニ「その薬を飲んで、不死になり。天の羽衣を着て一緒に来る、というならば、許可できなくもない、わ」
全員『…………!』
レヴェジンニ「けれど、その薬を飲む、ということは、本当に、これまでの世界すべて、に別れを告げなくてはなら、ないという、こと。二度と、地上に戻る、ことはで、きない。月の世界で、荒涼とした月を大地とし、風も吹かない暗黒を空とし、生きて、いかなけれ、ばならない」
全員『…………』
レヴェジンニ「竹取の、翁。あなたにとって、その娘は、そこまでしなくてはならない、存在?」
ライ「………―――」


ライ「……答える前に、ひとつ教えてくれ」
レヴェジンニ「私に答え、られるこ、となら」
ライ「こいつが地上にいちゃいけないってことなら。なんであんたらはこいつを地上の、竹の中になんて入れたんだ」
レヴェジンニ「………。それは、身内の恥を、さらさなくては答えられない、質問、だけれど。答え、るわ。かぐや姫は、両親が、月の世界の有力者、だったのだけれど、政争に負けた……というか、月の世界に、革命を起こそ、うとしたので、罰されたの。その時強い権力を、握っていた人間が、まだ生まれてもいなかった、かぐや姫に、地上流しの、刑罰を与え、たのよ」
ライ「……親のやったことなんて、こいつにゃなんの関係もねーってのにか?」
レヴェジンニ「……ええ。恥ずかしい、話だけれど」
 そう答えた天人に、竹取の翁はうん、と小さくうなずいて言った。
ライ「なら、月の世界も地上と大して変わんない世界ってことだな」
レヴェジンニ「え……」
ライ「だってそうだろ、子供が産まれそうだってのに革命起こそうとする奴や、親のやったこと勝手に子供に責任取らせるような奴が権力握ってるとこなんだろ。そんなんこっちと大して変わんねーよ。こっちだって横暴な権力者だの勝手なことしやがる親だのぞろぞろいるしさ」
レヴェジンニ「…………」
ライ「なぁ、なんで月の世界と地上は関わっちゃ駄目なんだ?」
レヴェジンニ「……寿命が、違いすぎるとか、技術や、力が違いすぎるから、とか、諸々の理由で、だそうよ」
ライ「つまり絶対関わっちゃいけない理由があるわけじゃないわけだろ。だったらさ、月の世界の奴らが関わりたくないっつってんのを無理に引っ張り出す気はねーけどさ、もう関わっちまってる奴らぐらい、自由に関わりあい続けられる仕組みとかあってもいいんじゃねーか?」
レヴェジンニ「…………」
ライ「俺は、それを作ってほしいし、作りたい。そのために必要だってんなら、その薬、飲んでもいい」
レヴェジンニ「……それなら、素直に、月の世界、へ来てもいい、のではない?」
ライ「そうじゃねぇ。俺はそれは嫌なんだ。……だって、ミルリーフは、地上で育ったんだぞ。こっちで関わった奴もいっぱいいる。そういう奴全部振り捨てて、もう会えねぇってしちまうの、なんか違ぇだろって俺は思うからさ。どうかな?」
レヴェジンニ「…………」
 天人たちの乗った雲は、すいと天へと浮き上がった。
ライ「お?」
レヴェジンニ「私の一存では、判断、できない。上に諮って、みるわ」
ライ「そっか。頼むぜ」
レヴェジンニ「竹取の、翁。あなたのような人が、いるならば、地上に来るのも、悪くは、ないわね」
ライ「お? おお……そか。サンキュ」
ミルリーフ「……パパのうわきものっ!!」
ライ「お、っと! って……はぁ!? 誰が浮気者だよっ!」
ミルリーフ「だってうわきものじゃない、ミルリーフというものがありながらっ、他の女の人にでれでれしてぇっ!」
ライ「な、だからな、浮気だのなんだの言う前に親子は結婚」
ミルリーフ「でも、パパ。……だーいすきっ!」
 そう満面の笑顔で告げて、かぐや姫は背伸びをし、竹取の翁にキスをした。

リューム「……なに固まってやがんだこのくそ親父ーっ!(飛び蹴りっ)」
ライ「のわぁっ!?」
コーラル「お父さん。顔、真っ赤」
ライ「な……っ」
コーラル「ミルリーフばっかり、不公平。公平を期するため、ボクも、キス」
ライ「な、お前なぁっ!」
ミルリーフ「あーっ、だめーっ、パパはミルリーフとだけキスするのぉっ」
コーラル「それは不公平、かと。ミルリーフとしたんなら、ボクともリュームともするのが筋」
リューム「なっ……俺は別にんなことしたくねーよっ、気色悪ぃっ」
コーラル「素直になるべきところでは、素直になっておいた方が得かと。第一、さっきのキスシーン見て、泣きそうになっていた奴の言うことじゃない」
リューム「う……ぐ……がーっもーばかーっあーもーっ、このくそ親父ーっ!(タックル)」
ライ「どわっ!?」
コーラル「……後れをとった(タックル)」
ミルリーフ「あーっ、二人だけずるーいっ!(タックル)」
ライ「こ、こら、重っ……お前ら、いい加減にしろーっ!」
マグナ「とか言いながら、顔緩んでるよなぁ」
遼太郎「当たり前だろ? それが親ってもんさ。子供に好かれて嬉しくない親なんざ、親じゃねぇってね」

戻る   次へ
『そのほか』topへ