前回の冒険での経験点は、
・最大の障害がモンスターレベル9のバグベアード。
・倒した敵の合計レベルは29。
 なので、
・アーヴィンド……4596
・ヴィオ……4606(バグベアードの攻撃防御時に一ゾロ)
・フェイク……1096
 となりました。
 成長は、
・アーヴィンド:プリースト4→5、レンジャー0→1。
・ヴィオ:シャーマン3→4。
 以上です。
候子は初めて生活に苦しむ
「だーっ、くそっ、ムカつくムカつくムカつくっ! なんでこの俺が! オランで最も高名な冒険者の一人デック・ヴァーベンが! こんな可愛くも色っぽくもねえ野郎と一緒に仕事探してうろうろしなきゃなんねえんだよっ!」
「運命の必然ってやつだろ」
 裏通りを歩きながら喚くデックに、ジャルはさらりと答えた。
 デックは背の高くがっちりした体に光を反射してきらめく板金鎧を着込み、並外れて大きな大剣を背負っている。年はぱっと見二十代の半ばだが、まとう雰囲気身ごなしは歴戦の戦士のものだ。男らしい大ざっぱな造形の顔を歪めつつ、両手を振り回して喚いている。
 その隣をしなやかに歩くジャル――ジャル・ボーバルバニーはうって変わって盗賊風。革鎧を着て腰に小剣を下げ、デックとは正反対の繊細で端正な瑞々しい(見た感じ十代後半の)面持ちにしれっとした表情を浮かべている。ちなみにその耳は少し尖っている――彼はハーフエルフなのだ。
 この二人、すでに十年以上のつきあいがある冒険者コンビであった。
「んだよ、そりゃ」
 ぎろりとジャルを睨むデックに、ジャルは指を立てていく。
「その一。お前がパーティを組んでいた奴らの中の恋人がいる女性を口説いてそいつらと喧嘩別れしたこと」
「俺はあの子を救ってやろうとしたんだ! あの子の恋人って男ろくなもんじゃなかったぞ、騙されてるに決まってる!」
「俺には気弱だけど真面目な男に見えたけどね。その二。そのあと酒場の女給に入れ上げてこれまでの冒険で稼いだ全財産貢ぎまくったこと」
「あ、あれは……あの子可哀想な子なんだよ! 病気の親とか弱い妹を抱えて一人で働いてる健気な女の子だったから力になってやろうと……」
「あの子お前から全財産むしりとったらすぐ女給やめただろーが。また別の男捕まえたって聞いたし。その三。空っけつになったからってんで俺にたかるのみならず、俺に借金して劇場の踊り子追っかけたりしたこと」
「う、そ、それは、悪いとは思ってるけど……」
「その四。馴染みの冒険者の店の新人の女の子にちょっかいかけて、しばらく出入り禁止を食らったこと。だからさっさと俺に借金返せるぐらいには稼げる仕事を探して、別の冒険者の店に向かってるんだろ?」
「………俺が悪うございました………」
 とほほい、という顔でしょんぼりするデック。ジャルは軽く肩をすくめて冷静と冷徹の中間ぐらいの口調で言った。
「一定時間女の子を見ないとすぐ不機嫌になるんだから。そんなに女の子が好きなのかよ?」
「たりめーだろうが! 女なくして人生は語れねえぞ! お前もいい加減腐れ縁長いんだから、俺がどのくらい女が好きか知ってるだろーに」
「知ってるけどさ。だからこそ少しは懲りるとかいうことないのかとか思うんだけどな」
「懲りる? なんで」
「だってデックもてないだろ」
 ぐさっ、と(感覚的には)音を立ててジャルの言葉がデックの胸に刺さった。
「お、お前……なんちゅうことをあっさりと……」
「顔は悪くないし性格も右に同じだし腕の方は折り紙付きだし。もてる要素は揃ってるけど、デックは女に対してがっつきすぎなんだよ。十代の木の股見ても勃てるガキじゃないんだからさ、女とみればすぐ突っこんでって鼻の下伸ばすところいー加減なんとかした方がいいんじゃないか?」
「しょーがねーだろ。人生は有限なんだぞ、出会えた可愛い子にはとりあえず唾つけとくのは男として当然だろーが!」
「それにしたってやりようってのがある。少なくとも三回に一回は女に騙されてひどい目見てるんだから少しは学習したらどうだ?」
「ばっ、ちげーんだよバカ、あの子たちにはなにかすっごい事情があったんだよ! それでやむなく頼れる優しい男である俺に縋ったんだ。その女らしい心がわかんねーのかお前にはっ!」
「わかるか」
 そう言いつつもジャルはくすっと笑った。笑うと整った顔立ちが一気に子供っぽく見える。
 デックはふん、と鼻を鳴らすものの口元は笑っている。十年以上一緒にやってきた相棒だ、それゆえの甘えもあるものの、なんのかんの言いつつお互いのことは絶対的に信頼している。デックがどんな女にどれだけひっかかろうとジャルがデックを見捨てることはないだろうし、その逆も然り。お互いそれを理解しているがゆえの軽いじゃれあいだった。
 これまで何度様々な出会いと別れを繰り返しても、二人は離れることはなかったのだから。
「で、その冒険者の店ってどんなとこだ?」
「聞いた限りじゃなかなか評判いいぜ。数年前に開店したんだけど、依頼や品物の目利きも確かだしコネ作りにも抜け目がないって。なんでも主人が賢者で、実践的冒険研究なんてのをしてるらしくて冒険の話をよく聞かれるとか」
「酒と食いもんは? 女いるか?」
「酒と食事もなかなからしい。今は女給はいないらしいけど、なんでもそこはお茶とお菓子を酒と一緒に売ってるらしくて、その味に惹かれて昼間は女の子が結構集まるって」
「茶に菓子ぃ? んな冒険者の店聞いたことねえぞ……ま、でも女の子がいるっつーからいいか」
「でも店内では女口説くの禁止だとさ」
「……なんだそりゃ―――っ!」
 絶叫するデックに、ジャルはくくっと笑った。
 ふと、その顔に真剣な表情が浮かぶ。
「どうした?」
「声が聞こえた。多分、悲鳴だ」
「なに?」
 デックも目を閉じて耳を澄ます――聞き耳に不向きな板金鎧だったが、それでもデックの耳にはかすかな悲鳴が届いた。
「………女の声だ!」
「は?」
「うっしゃあ、待ってろよまだ見ぬカワイコちゃん! 逞しくてカッコいい戦士様が助けに行ってやっかんなー!」
 叫ぶとデックは走り出す。重たい板金鎧を着ているのにその動きは軽い。ジャルも肩をすくめるとあとについて走り出した。
 角を曲がるとすぐ悲鳴の元が見つかった。いかにもチンピラ〜という顔の男がローブに杖の魔術師姿の小柄な相手から杖を取り上げようとしている。
「これは大事なものなんです! 渡すわけにはいかないんです!」
「うるせえ、金がねえってんなら今日はこれで勘弁してやろうっつってんだ。ありがたく思いやがれ!」
「そんな! だって……ぶつかってきたのはあなたの方じゃ……」
「ああん、ぐだぐだ言ってっとその顔切り刻むぞてめぇ!」
 チンピラの野太い声に必死に抵抗する澄んだ声――デックはにやりと笑うと二人の間に割って入った。
「そこまでだ」
「な!? なんだてめぇは!」
 いきなり突き出された拳にチンピラは慌てて飛び退く。拳を遡ってデックを睨もうとして、そのいかにも屈強そうな身体と背負った大剣に思わずといったようにびくりと震えた。
 あからさまにびびっている相手に、デックはにやりと笑い背後の魔術師をかばいながら一歩前に進み出る。
「ただの通りすがりのいい男さ」
「は? い、いい男……?」
「いい男の条件その一。女性の危機を見過ごすべからずってね――女の子から持ち物を奪おうなんて野郎はぶん殴ることに決めてんだよ」
 迫力のある笑みを浮かべながらの一言に、チンピラは汗を流しながらもせせら笑う。
「は、はっ! 馬鹿かてめぇ、そいつをよく見てみろ! どっからどう見ても男だぜ!」
「へ?」
 言われて初めて魔術師の方を見て――デックはがっくりと膝をついた。
 確かに男だった。魔術師のよくつけている体型のわからないローブを着ているが、女にしては凹凸がなさすぎる。
 なにより顔が男だった。小さな鼻眼鏡をかけた、細面のちょっと可愛らしい感じの童顔でちょっと無理をすれば見ようによっては女の子と見られなくもない顔だったが、それでもその顔には女にはない芯の太さがある。
 背も低いからたぶんまだ声変わりしていないのだろう。俺としたことが女の子と男のガキの声を聞き間違えるとはーっ、とデックはがっくりうなだれた。
 チンピラはいやらしい笑いを浮かべて、魔術師に一歩近寄った。
「女じゃねぇんだから手ぇ出すなよ。俺はそいつから怪我させられた代金を徴収しなけりゃならねぇんだよ」
「あ、あなたは怪我なんてしてないじゃないですか! ただぶつかっただけでしょう、僕の方が押されて転んじゃったぐらいなのに!」
 言い返す魔術師の少年――ちらりとその姿を見て、体がわずかに震えているのを知った。おそらく喧嘩の経験などほとんどないのだろう、細い体を必死に意思で支えてチンピラに立ち向かう少年魔術師。
 ふ、と息をついて口元に笑みを佩くと、デックは立ち上がった。しっかり足を踏みしめて、迫るチンピラに向けぐいっと拳を突き出す。
「な……っ」
「失せな」
「お、男なんだからあんたには関係ないだろ!?」
「女を助けるのは当然だが、男を助けちゃいけないって法もねぇ」
「………っ、覚えてろよっ!」
「即行忘れるっての」
 逃げさっていくチンピラをなんとなく見ていると、ぽんと後ろから背中を叩かれた。振り向くとそこにいたのは予想通りジャルだ。
「ちゃんと少年助けてたか。偉い偉い」
「お前な、曲がりなりにもマイリーの神官に、そりゃあないんじゃねぇか?」
「デックは男には厳しいからなー」
「女に優しいだけだっつの」
「あ、あのっ!」
 細いが芯の通った声を張り上げられて、デックとジャルは少年魔術師の方を向いた。
「なに?」
「あ、あのっ、助けてくださってありがとうございました」
「どーいたしまして」
「お前はなんにもしてねぇだろ。……別に気にするこたぁない、けど気をつけろよ、このへん時々ああいうの出んだから」
「はい、気をつけますっ。あの……お二人とも、冒険者、ですよね………?」
 一瞬顔を見合わせて、デックとジャルはうなずく。
「そうだけど?」
「あの、あのっ、お願いがあるんです」
 顔を真っ赤にして、必死の表情で、少年魔術師は叫んだ。
「僕を、お二人の仲間にしてくださいっ!」

 少年魔術師は、ヴィアトと名乗った。
「賢者の学院の、正魔術師をやってました」
「……君、いくつ?」
「二週間前に十五になったばっかりです」
「へぇ……」
 ジャルとデックは感心したことを表すために目を見開いた。賢者の学院というのはここオランに本部を置く、魔術師と賢者たちのギルドだ。古代王国の魔術や世界の知識を研究し、民間に役立てることを目的と掲げており、国家機関とも深い関わりがある。
 正魔術師というのはきちんと魔術が使用できる人間であると学院が認めた者。新米ではあるにしろ胸を張って魔術師と言ってもいい資格だ。世界でも最も優秀な人材が集まるオランの学院で、五人に一人と言われる狭き門を十五でくぐり抜けて魔術師になったということは、相当に優秀だと言っていいだろう。
「オイゲンっていう導師に師事して、付与魔術と召喚魔術の関係性について主に研究してました。だけど――昨日、オイゲン導師の発表された論文を読んだら………」
「もしかして、自分の書いた論文が剽窃されてたとか?」
 ジャルが意図して軽い口調で言った言葉に、ヴィアトはこっくりと頑是なくうなずいた。
「僕の書いたオイゲン導師に見てもらっていた論文の、題名と序文をのぞいたほぼそっくりそのままが転写してありました」
 おいおい。ジャルとデックは思わず天を仰いだ。
 十五の子供の論文を剽窃するとは、その導師にはプライドがないのだろうか。
「……それで、君はどうしたの?」
「オイゲン導師に聞きに行きました。これはどういうことなのかって。そうしたら――」
 ジャルは顔をしかめた。その先は言わないでも大体予想がつく。
「あれは最初から最後まで全部自分の考えた文章だ。変な言いがかりをつけるなって言われたんです……」
 予想通り。
「僕も一生懸命抗弁したんですけど……のらりくらりと言い抜けられて、しまいには僕の家のことまで悪く言われて……僕、オイゲン導師を殴っちゃったんです」
「ほー。それはそれは」
 デックは頬を緩めたが、ジャルは逆に眉をしかめた。
「そりゃまずいな……理由はどうあれ暴力を振るったら無条件でそっちが悪いってことになっちまうだろ、賢者の学院なら」
「そうですけど。わかってますけど。でも、僕の育ったスラムのことを薄汚い野良犬どもの寝床だのあんなところに住む奴らは全員性根の曲がったクズどもだ、だの言われて、黙っているなんて、できっこないです。スラムの人たちがどんな思いで毎日送ってるかも知らないような人に」
 ジャルは一瞬、目を見張った。
「……ヴィアト、君はスラムの出身なのか?」
「え? はい。生まれた時からスラムで暮らして、十二の時に正魔術師になって部屋をもらったんでそっちに移り住んだんです。休みの日にはスラムに帰りますけど」
「十二で正魔術師!? そりゃすげー……っつーか、スラム出身ってことは特待生なんだよな?」
「はい」
 賢者の学院の授業料は高いが、優秀な人材を確保するため特待生枠を設けている。優秀な成績を収めた者は授業料を格段に安く、あるいは無料にしてもらえるのだ。どうということもなさそうな顔でうなずくヴィアトをじっと見つめるジャルを見て、デックは笑った。
「ま、十二の年まで育ててくれた場所を悪く言われて黙ってられねぇのは男として当然だわな。気にするこたぁねぇよ」
「……でも、僕……そのせいで、学院を追放になっちゃったんです」
『はぁ!?』
 デックとジャルは思わず声を揃えた。
「追放って、どうして」
「導師に暴力を振るうような人間は魔術師になる資格はない、ってオイゲン導師に言われて、部屋の荷物――っていっても着替えが数着しかありませんでしたけど、それごと放り出されて」
「放り出されたって……曲がりなりにも正魔術師の資格をそう簡単に奪えるもんじゃないだろ。出るところに訴え出れば虚言感知≠ナ」
「でも、暴力を振るったのは確かですから。資格がないって言われたら、そうかもなって……それに、追い出されて学院に入れてもらえない以上、訴えるところもありませんし……」
「…………」
「でも、僕、立派な魔術師になりたいんです。いろんな知識を身につけて、みんなが――スラムのみんなが、世界中の貧しい人たちが、元気に暮らせるようにできるような人間になりたいんです」
「………だから?」
「だから、冒険者になりたいんです。……一緒に冒険しようって約束した奴には、もう、迷惑かけられないから」
 ジャルは顔をしかめた。
「その話の繋がりがよくわかんないんだけど?」
「冒険者っていうのは命がけの仕事で、知識も魔術も限界まで使って戦わなきゃならないって聞きました。だから冒険者の中には、優れた人材が大勢いるんだって。だから……」
「つまり自分を鍛えるために冒険者になろうって? そりゃまた甘っちょろいことだね」
「どうしてですか」
 顔を上げてヴィアトはジャルを見つめる。
「冒険者ってのはそんなにいいもんじゃない。命がけで戦って日々の糧を得るのがやっとなんだ。そりゃ英雄になることを夢見て冒険者になる奴も大勢いるけどな、そういう奴らは現実が見えてないだけだ。毎日暮らすのもやっとの人間に、夢を見る余裕があるもんか」
「そんなこと、ないです」
「ある」
「ないです」
 じっと真剣な顔で、けれど睨んでいるというには澄みすぎている眼差しでヴィアトはジャルを見つめた。ジャルは十年以上の冒険者経験を積んだ人間ならではの年季の入った迫力でヴィアトを睨む。
「君の言ってることは絵空事だぜ。世間を知らないから言える台詞だ。騙し騙され日々生き馬の目を抜く毎日の中で、そんな夢を抱いてたら早死にするぞ」
「早死にするかも、とは思います。世の中にいるのはいい人ばっかりじゃないのは僕だっていやってほど知ってます、スラム出身なんですから」
 ジャルはう、と口ごもった。確かに十二までスラムで暮らしていたなら、しかもその中で賢者の学院の特待生になるほど頭脳を磨いてきたのなら、身につまされた苦労は並大抵のものではないだろう。
「でも、だけどそれでも、夢がなかったら生きてなんてられないじゃないですか。少なくともちゃんと自分のことを好きなように生きてはいられない。だったら早死にするかもしれなくても、僕は自分のできるめいっぱいで夢追いかけてみたいです。だからジャルさんも、冒険者やってるんじゃないんですか」
「…………」
 むすっと黙り込むジャルに、デックがくくっと笑った。
「お前の負け」
「うるさい」
 じろりとデックを睨むが、デックは含み笑いをしながら言う。
「いーんじゃね? 魔術師は絶対必要だし。十二の年に正魔術師の資格得たくらいなら才能あんだろ。実力を磨くには実戦が一番っつーのは俺たちが一番よく知ってんじゃねーか。将来有望な少年が自分の意思で俺たちの仲間になるっつーんだから、有能な冒険者としては受け入れてやるのが筋だろ?」
「けどな……腕の問題もあるだろ。あんまり俺らと実力が違うとついてこれなくなる可能性もあるぜ? ……おい、君はどれくらいの魔術を使えるんだ?」
「えと、発動体作成≠ニか酸の雲≠ョらいまでなら」
『はぁ!?』
 デックとジャルは声を揃えて叫んだ。
「酸の雲!? 導師級の魔術じゃねーか!」
「つか、発動体作成≠チて……もう私塾を開けるくらいの腕前だってのか!?」
「いやあの、一応魔術は一般の導師ぐらいには使えはするんですけど、人格やらなにやらが未熟だとか、若すぎるって理由で導師試験は受けさせてもらえなかったんで、導師ってほどのことは」
「それだってすごすぎだぜ。君何気に天才?」
「いや、でもアストラ次席導師だって僕の年にこれくらいの魔術を修めてたそうですし」
「…………」
 ジャルが口に拳を当てて数秒考える。
 それから言った。
「ヴィアト」
「は、はい!」
「オイゲン導師、って言ったよな? 君の論文を剽窃して学院から追い出した導師」
「はい。モーリッツ・オイゲン。高導師級の魔術を修めてらっしゃるんですけど、なんだか以前上の方と喧嘩したとかでまだ導師に甘んじてらっしゃるとか」
「そいつ以外に君を追い出したのに加担した奴はいるか?」
「いえ……たぶん、いないと思いますけど。なんでですか?」
 ジャルはにやり、と笑みを浮かべた。
「君を追い出した奴を学院から追い出し返さなきゃならないだろ? 君を学院に戻すためにはさ」
「え……えぇ!? でも、僕はもう」
「言っとくが、冒険者として生きていくにしたって賢者の学院との繋がりは大事なんだぞ。大事な顧客にもなるし文献調査も学院の書庫を借りれなきゃ困る。魔術師としての力を高めるためにも勉強できる場所はやっぱりあった方がいいしな」
「でも、なんでジャルさんが僕のことを」
 ジャルは片眉を上げて肩をすくめる。
「ちゃんと能力を発揮できるようにしてもらわなきゃ困るだろう? 生死を共にする仲間なんだからな」
「え……」
 ヴィアトが目を見開いた。デックがにっと笑って背中を叩くのを呆然と見返し、う、と涙ぐむが無理やりに笑って手を差し出す。
「これから、よろしくお願いします!」
「おう、よろしく!」
 固い握手をかわし、とりあえず予定通り冒険者の店に向かってこれから先のことを話そうと歩き出す。歩きながら軽く相談をした。
「けどなー、学院って外部の奴にはすっげー冷たいからなー。中に入って動いてくれる奴がいねーとまずくねーか?」
「そうだな……上層部にコネのある奴がほしいよな。オイゲンって奴の弱みを握るのは当然としても、それを密告できる相手がいないと困るし。ヴィアト、お前学院追い出されても力になってくれるくらい親しい友達とかいるか?」
「いえ……僕、必死に勉強ばっかりやってきたし。議論相手くらいならいますけど……それに、学院の生徒ってすごい世界狭いお坊ちゃんばっかりで話してても正直話が合わないっていうか」
「あーわかるわかる、いるよなーそーいう自分の回りの世界がすべてだと思ってる奴」
「さっき一緒に冒険しようって約束した奴がいるとか言ってたよな。そいつは違うのか?」
「いえ、そいつはスラムにいた頃からの幼馴染で。……そいつ歌を歌うのがすごくうまくて、この前道で歌ってるところをオルガノン音楽堂に誘われたって言ってましたから、もう冒険に連れ出すわけにはいかないなって」
「オルガノン音楽堂!? すごいなそりゃ、超一流どころじゃんか」
「……となると俺らの冒険者の知り合いの中から選ばなきゃなんねーか。上層部にコネがあって、学院の内部事情に詳しくて、できるだけ金払わないで俺らの力になってくれる奴……」
「…………」
 しばし考え込んでから、ジャルは気が進まなさそうにため息をついた。
「しょうがない。月の兄貴に頭下げるか」

『古代王国への扉』亭の一席で、アーヴィンドとヴィオは深刻な顔を突き合わせていた。アーヴィンドの深刻さとヴィオの深刻さには、だいぶ隔たりがあるような気がしないでもなかったが。
「どうしよう……本当に、どうすればいいんだろう」
 アーヴィンドがこの世の終わりのような顔で呟くと、ヴィオがわかってるんだかわかってないんだか怪しげなちょっと困ったような顔で首を傾げる。
「どーしよっか? 困ったよなー」
「困ったなんてもんじゃないよ。本当にどうしよう。このままじゃ、本当に、僕たち」
「うえじにしちゃうんだよなー? それはやだなー、俺。どーしよう?」
 首を傾げるヴィオに、アーヴィンドはこの相棒が事態を解決する役には全然立たないことを知りうつむいて頭を抱えた。
 どういうことかというと、話は簡単。今現在アーヴィンドとヴィオの二人は、深刻な財政難に陥っているのである。
堕ちた都市≠ノ挑んでから一週間。今日も元気に訓練をこなし、宿に帰ってきて食事を注文した二人に、店主のランドが告げたのだ。
「もうツケはきかないからな。これからは現金払いで頼むぜ」
 なんでそんなことを言い出すのかわからずきょとんとする二人に(そもそも二人は『ツケ』という言葉すら知らなかった)、ランドは告げたのだ。
「お前らが店に預けてる金額が100ガメル切ったからな。これまでは店に預けてる金から宿代食事代差っぴいてったけど、金が切れたら出て行ってもらうことになるんだ、そろそろ自分たちの持ち金を自覚しといた方がいいだろ?」
「え……えええぇぇぇぇ!?」
 アーヴィンドは仰天して叫んだ。
「お、お、お金が切れるって、100ガメル切ったって、えぇ!? 追い出すってそんな、え、なんでですか!?」
「そりゃこっちも商売でやってるんだ、金がない客は客じゃないんだから出て行ってもらうしかないだろ」
「だ、だって、お金がないって、そんな、僕たち別に贅沢なんてしてませんよ!?」
 愕然として惑乱しながら叫ぶアーヴィンドに、ランドは哀れむような目で優しい笑みを浮かべた。
「坊や? 教えておいてやるとな、贅沢してようとしてなかろうと、使えば金は減るんだ。知らなかったのか?」
「え、だって、そんな、知ってましたけど、だって……」
 アーヴィンドは顔面蒼白になった。確かに知っていた。知識としては。しかし、そんなことが起こるなど考えたこともなかったのだ。
 アーヴィンドはアールダメン候子として、オランの貴族の中でも五本の指に入るほど富裕な家で生きてきた。当然家には金が腐るほどあった、なので生きるのには金がいるのだということを実感したことすらなかった。買い物をしたことすら冒険者になるまでほとんどなかったのだ。金は必要になれば当然のように湧き出てくるものとどこかで認識していた。生活費というものが財政を圧迫するなど、アーヴィンドにしてみれば想像の範疇外だったのだ。
「ついでだ、教えておいてやる。お前ら当然のように朝飯も昼飯も晩飯も値段考えずに注文してただろう? 初心者冒険者がそんなこっちゃ生きていけんぞ。ある程度金に余裕ができるまでは、一番安い定食で飢えをしのぐ。これが冒険者の常識なんだよ」
「そ……そうなんですか!?」
 アーヴィンドはくらくらする頭を押さえた。アーヴィンドは食事に贅沢をする質ではなかったが、食べたいものを我慢する、という経験などしたことがなかったのだ。
「そう。さらにいうとな、お前ら毎日湯屋に行ってるだろ? あれも駄目。初心者冒険者が湯屋に行くなんぞ十年早い」
「え、だ、だって、毎日お風呂に入るのは、普通というか、人間の常識では……そりゃ、冒険の時はいくらだって我慢しますけど」
「お前さんの常識を通すにはな、金がいるんだよ。初心者冒険者は街の外に出た時の水浴びで垢を落とす。だから湯屋を使えるのは、せいぜいが数週間に一度、だな」
「す……」
 くらっ、とアーヴィンドは立ちくらみを起こした。水浴び。数週間に一度。そんなことが、あっていいのだろうか。
 そういえば、とアーヴィンドははっとする。この辺りを歩く冒険者の中には、いつお風呂に入っているのだろう、と顔をしかめたくなるほど不潔な雰囲気の人が何人もいた。あれは、不精なのではなく湯屋に行くお金がないからだったのだろうか。
「最後に言うと、宿に泊まるのにも金は必要だ。もちろんうちにもな。冒険者の店は冒険者を普通の宿よりはるかに割安で泊めてるが、それだってタダじゃない。食事を残飯で済ませるにしても、最低10ガメル。その金もなければ出てってもらうことになる」
「で……あの、追い出された人間は、どこに泊まれば……」
「そりゃ、橋の下で野宿だな。で、物乞いでも日雇い労働でもして金を稼いで、食費を確保する、と。でなきゃ飢え死にだ」
「も……」
 くらくらっ、とふらつく頭をアーヴィンドは必死に支えた。橋の下で野宿。そんな生活を人間の生活と呼んでいいのか? 物乞い。日雇い労働。冒険者が、そんなことを?
「それが嫌なら必死で仕事を見つけて稼ぐこった。訓練してりゃ仕事が舞い込んでくるなんて思ってちゃ大間違いだぞ」
 そう告げられ、アーヴィンドは衝撃で呆然としながらも、必死に打開策を考えなければ、と思ったのだ。
 そしてランドの忠告通り一番安い定食を頼み(くず肉とくず野菜のスープにパン、それのみ。味は意外にも悪くなかったが、毎日毎食これなのだろうか、と考えると頭がまたくらくらした)、ヴィオと一緒に対策を練っているのだが。
「仕事っていっても、冒険者の店の仕事は、ランドさんが管理しているし」
「それ以外に冒険者の仕事見つける方法ってあるのかなー? 困ってる人探してみよーか?」
「でも、その人が報酬を支払えるかどうかもわからないし……」
 ちっとも建設的な意見が出てこない。自分は本当に素人だ、とアーヴィンドは悔しさのあまり泣きそうになった。
 と、だいぶに酔っ払った風情の顔見知りの冒険者たちがアーヴィンドたちの卓に寄ってきた。相当に胡乱な声でにやにやと話しかけてくる。
「どーしたんだよー、アーヴィンドちゃんよー。そーんな困った顔しちゃってよっ、うぃっく」
「そーいう困った顔も色っぽいぜぇ、ぎゃははっ。なんならおじさんが相談に乗ってやろっかー、ひっく」
 普段なら叩き込まれた優雅で貴族的な微笑みを浮かべて「ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ」と拒絶しているところだろう。酔っ払いは好きではないし、アーヴィンドはこの店を訪れた時の歓迎のされ方もあり、自分たち以外の冒険者に対して少しばかり警戒するところがあった。
 だが切羽詰った者は藁をもつかむ。宿を追い出される恐怖の前では酔っ払いに対する嫌悪感もかすむ。アーヴィンドは食いつくような表情で、その人々に叫んだ。
「本当ですか。お願いします!」
「おぉ?」
 真剣な表情で相談をするアーヴィンドに少し酔いが醒めたのか、冒険者たちは無言でアーヴィンドの話を聞き、それから遠慮なく爆笑した。
「な……なぜ、笑われるんですか!?」
「だってよー、アーヴィンドちゃんよー」
「冒険者としてどー生きてきゃいいのかわかんなかったんなら、どーして俺ら先輩冒険者に聞かねーんだよ。いっくらでもいるだろ? そいつらにどーか教えてくださいって頭下げりゃいいのによ」
「あ……」
 アーヴィンドは顔を赤らめた。そうだ、知らないことは聞けばいいのに。そのくらい判断できただろうに。これまで、知識は当然のように目の前に用意されているものばかりだったから失念していた。
「すいません……僕は、本当に……」
 顔を羞恥に染めて小さくなるアーヴィンドに、冒険者たちはにやにや笑いながらも教えてくれた。
「冒険者の仕事を探すんならな、あちこちの冒険者の店の主人に頼みこむのが第一だぜ。金がないから仕事を紹介してくれ、と頭を下げる。まぁ、そうほいほい仕事が回ってくるもんでもねぇし、すぐ見つかるのは日銭稼ぎ程度のもんだろうが、その日宿に泊まる金にも事欠く状態だったらないよりマシだろ?」
「自分の属する組織に頼み込んで小遣い稼ぎするってのもありだな。たとえば司祭なら神殿に奉仕すればその日の飯と寝床くらいは恵んでくれるだろ? まぁ、金を貯めるには不向きだが、そっちに頻繁に顔を出してりゃそっち関係の仕事も頼まれやすくなる」
「それでも駄目なら、夜道に立って金持ちそうな旦那の袖を引くしかねぇなぁ。ま、アーヴィンドちゃんならすぐに売れっ子になるって!」
 ぎゃはははっ、と笑い声を立てる冒険者たちに、アーヴィンドは真剣に訊ねた。
「袖を引く、というのはただ袖を引っ張ればいいんですか? お金持ちの人が夜道を歩くということはあまりなさそうな気がするんですけど」
「え……いや、本気にするなよ。冗談だってアーヴィンドちゃん」
「僕は、僕とヴィオがちゃんと宿に泊まってご飯を食べられるなら、どんな苦労も厭いません! 方法があるなら、どうか教えてください」
 じっと真面目な顔で冒険者たちを見上げる。その顔は(アーヴィンドは意識していなかったが)凛としていつつも禁欲的な色気があり、冒険者たちはこっそりごくりと唾を飲み込んだ(ことにアーヴィンドは微塵も気付いていなかった)。
「……なんなら、俺たちがおごってやろうか?」
「え? そ、そんな、申し訳ないですよ」
「いや、君が一晩付き合ってくれるならいくらでも」
 しゃり。鎖を引っ張った時のような音がして、目の前に白銀に輝く小剣(鞘入り)が突き出された。
「なんだって? 今ここで、もう一度大きな声で言ってくれるか?」
 アーヴィンドとヴィオと冒険者たちは目を見張った(特に冒険者たちは顔から血の気を引かせた)。
「フェイクさん」
「つ、月の主≠ウん!」
「俺の言った言葉がお前らには理解できなかったようだな? 俺はこいつらには手を出すな、と言ったはずだが?」
「す、す、す……すんませんしたぁっ!」
 慌てて立ち上がり逃げていく冒険者たちを見送り、フェイクはふん、と鼻を鳴らしてアーヴィンドの向かいの椅子に座った。
「お前ら、もう少し相手を選んで話を聞け」
「え? なぜですか?」
「そーだよ、あの人たち俺らにどうすれば仕事が手に入るか教えてくれてたんだぜ?」
「………。貞操の危機に陥ってもいいっつーなら別にいいがな」
「………。………!?」
 アーヴィンドは数秒沈思し、ようやくフェイクの言っていることに思い当たりぱっと顔を朱に染めた。そんな、だって、冒険者が、そんなこと、あって、いいのか!?
 真っ赤な顔で怒りと衝撃で頭をぐるぐるさせているアーヴィンドに、フェイクは肩をすくめて言う。
「あいつらの肩を持つつもりもないがな。冒険者のパーティの間には仁義はあるが、規則はない。仲間意識はあるが、当然のように善意を期待するのも間違ってる。冒険者なんてやってりゃ生活苦に苦しむこともしょっちゅうで、だからこそ金を稼ぐのに必死になる。その気持ちは今のお前ならわかるだろ。これからも何度も思い知らされるだろうがな」
「…………」
「だから当然利害が反すれば騙しあうこともあるし、本気で殺しあうことだって当然ありえる。だから世間知らずなところにつけこまれて食事の代わりに貞操を失ったところで、命じゃなくてよかったな、と言われてしまいなんだよ」
「…………っ」
 アーヴィンドはぐらぐら揺れる頭を必死に支えながら、ぎゅっと拳を握り締めていた。本当に? 本当に冒険者とはそういうものなのだろうか? 自分の憧れ、なることを切望し、生きる場所をそこに求めた冒険者という仕事はそんなものなのか?
 それではまるで、本当にならず者ではないか。
 世間の世知辛さも冒険者の暗部も、理解しているつもりでいた。でも、だけど。冒険者という存在には、きっとそれを超えるものがあると信じたのに――
「ついでに言えば、お前自分にかけられた呪いのこと忘れてないか。ここの奴らはそれなりに経験積んだやつらだから流されるようなことはそうそうないが、欲情はいつも掻き立てられてるんだからな、男女問わずで。これまで子供に抱きつかれる程度のことしかなかったから気が抜けてるんだろうが、お前の貞操は普通の絶世の美女よりもはるかに危険なんだってことを自覚しろ」
「う」
 痛いところを突かれてアーヴィンドは口ごもった。確かに、そう言われると返す言葉がない。四週間前に初めて見知らぬ男に欲情され抱きつかれてから呪いの効果を実感する機会がなかったので、それまでと同じ感覚で、いや自由を思う存分満喫して毎日あちこち出歩いてしまっていた。気を抜きすぎだと叱られても仕方がない体たらくであったと思う。
「……すいません……」
「つかさー、フェイクなにしに来たの?」
「なにしにって、ヴィオ」
「もしかしてさ、なんか仕事持ってきてくれたんじゃねーの? 今までずっとそーだったし」
「………! そうなんですかっ!?」
 思いきり目を輝かせて勢いよくフェイクの方を振り向いたアーヴィンドに(自分の愚かさに落ち込む気持ちはむろんあるが、それ以上に飢え死にの恐怖はずっしりとアーヴィンドにのしかかっていたのだ)、フェイクは肩をすくめた。
「お前に見抜かれてると思うと複雑な気分にはなるが。ま、そういうことだ」

「……あなたが、天才少年のヴィアトさんですか」
 アーヴィンドは思わずまじまじと眼鏡の幼顔少年を見つめてしまった。ヴィアトは少し顔を赤くしつつ居心地悪げに身じろぎしただけだったが、ヴィオが目をきらきらさせて聞いてくる。
「アーヴアーヴ、天才少年ってなに? すげーの? 強い?」
「うん、今の僕たちよりはずっと強いよ。ヴィアトさんは、賢者の学院の歴史の中でもその才能は随一といわれるほどの天才なんだ。九歳で下位上位の古代語を完璧に理解し、史上最年少の十二歳で正魔術師の資格を得て、十五歳で導師級の魔術を使いこなしている。いずれは伝説のマナ・ライ師にすら匹敵するほどの大魔術師になるだろうと言われてるほどの逸材なんだよ」
「へー、そりゃすごい」
「大したもんだとは思ってたけど、そこまでだったたぁなぁ……」
 仲間のデックとジャルからも感心した目で見つめられて、ヴィアトはわたわたと慌てた。
「そんな、僕はそこまで大した人間じゃないですよ! ただの専門馬鹿っていうかなんていうか」
「ご冗談を。魔術のみならず学問知識もすべて最優秀の成績を修め、主席導師であるバレン師からも多大な期待をかけられていらっしゃるのに」
 つい貴族を相手に話している時のような気分になってしまい、優雅な笑顔でヴィアトを持ち上げると、ヴィアトは顔をますます赤くしてきっとアーヴィンドを見つめてきた。
「そ、それを言うならアーヴィンドさん、あなたでしょう。オランでも有数の大貴族でありながら十五歳で正魔術師の資格を取られるなんて、普通じゃ考えられませんよ。ほとんどの貴族出身の魔術師は跡を継ぐ必要のない人間が金と暇にあかせて資格を取ったものなのに、驚くべき熱心さと誠実さだってみんな感心してましたよ」
「っ、それはたまたま僕が」
「へー、アーヴすげー!」
「え、マジ、この子お貴族さまなの?」
「デックお前知らなかったのかよ、オランの冒険者ならみんな知ってるぞ、アールダメン候子が魔獣に呪いをかけられて冒険者に身を投じたって」
「へー、すごいね君、まだ若いのに」
 すっとさりげなくアーヴィンドに体を近づけ(隣に座っていたのだ)、肩に手を乗せきらんと歯を光らせるデック。戸惑いながらアーヴィンドがデックを見上げると、またさりげなく肩を少し抱き寄せられた。
「よかったらこのあと少し飲まない? 先輩冒険者としていろいろ教えて」
 がづっ、と音がした。立ち上がったジャルがデックの脳天に踵落としを放ったのだ。
「ってぇな! なにしやがるボケっ」
「阿呆。その子をよく見てみろ、その子は男だ」
「はぁ?」
 デックは眉根を寄せてアーヴィンドをちらりと見、すぐに顔をしかめてまたジャルを睨んだ。
「阿呆はてめぇだろ。この子のどこが男に見えんだよ」
「お前な、少しはその腐った目を……。ああ、そうか。わかった。おいデック、お前この子に欲情してるだろ?」
「は、はぁっ!? お、お前な、馬鹿なこと言い出すんじゃねぇよ、女の子の前で!」
「だから女じゃないって。いいか、この子は呪いをかけられてるってさっき言ったろ。老若男女問わずで誰にでも欲情される、そういう呪いがかかってんだよ、この子には」
「………は?」
 驚愕の表情でデックはばっとアーヴィンドの方を振り向き、まじまじと見つめ、数秒後にぽかんと口を開けてばっと胸を触ってきた。
「………あの」
 アーヴィンドの困惑の表情を無視し、デックはがっくりとうなだれる。
「……俺としたことが……男なんぞに欲情しようとは……! 女好きとしてマイリーに申し訳が立たねぇっ……!」
「………あの」
「名前で気付けっつの。はいごめんねーこいつ馬鹿だから。気にしないで話進めていいよ」
 デックの足を蹴りつつにっこり笑うジャルに気圧されて、この人はマイリーの神官なのかと少し気にしつつもアーヴィンドはヴィアトに向き直った。
「ええと……つまり、オイゲン導師によって貶められた名誉を、回復したいということですね?」
「ええと、はい。挑発されたとはいえ殴ったのは自分の責任ですからその罰は受けたいですけど、論文を剽窃されたのは確かですから、そこのところをちゃんと上の人にもわかってほしいって思って」
「なるほど……」
 アーヴィンドは少し考えた。ヴィアトの素性は有名だ。顔も聞かされたのと同じ。なによりフェイクの知り合いが身元を保証してくれているのだから相手が嘘をついているということはないだろう。フェイクが虚言感知≠使ったかは確かめる必要があるが。
 なのでとりあえずこの仕事を受けることについては異存はない。なので情報を集めるのが第一ではある。
 だが、依頼人との交渉はこれが初めてだ。どう自然な流れで報酬の話に持っていったものか。というか、今は切実に金がほしい。なんとしても一ガメルでも多く報酬をもらいたい。
 ああなんだかこういう風にせせこましくお金のこと考えるのってなんだか嫌だなぁ、と思いつつ見かけ上はゆったりとヴィアトを見つめたとたん、ヴィオがすぱっと言った。
「で、報酬いくら?」
「ヴィ、ヴィオっ!」
「へ? どしたの、アーヴ?」
「いや、どうしたのって、そういうことは最初から聞くものでも……」
「へ、なんで? だって一番大事じゃん。仕事して金もらわねーとうえじにするし!」
「いやだからー!」
 そういうことは大声で言うことでも! と泣きそうになりながら慌てていると、くっくとデックとジャルは揃って笑った。
「なるほどなー、飢え死にかー。初心者の頃は誰でも一度は通る道だよなー」
「おいこら、俺まで一緒にするなっつの。少なくとも俺は飢え死に寸前までいったことはないぜ」
「そりゃてめーが金足りなくなったら人からちょろまかしてたからだろーがよっ」
「仲間の財布にゃ手をつけてないだろ」
 余裕たっぷりという顔で面白がられるのはアーヴィンドとしては当然面白くはない。だが依頼人に文句をつけるわけには当然いかないので、できるだけ無表情を取り繕ってじっと二人を見ていると、二人はにっと笑み、ばっと四本指を突き出してきた。
「四百ガメル。それが出せるぎりぎりだ」
「俺たちも金に余裕があるわけじゃなくてな。それにお前らに頼むのはあくまで学院の上層部への繋ぎだ、このくらいが妥当だと思うんだが?」
「四百ガメル……それは、一人につきですか? それともパーティ全体に?」
「当然、全体に」
 にっこり笑顔で告げるジャルを、アーヴィンドはわずかに顔をしかめてきっと見た。パーティ全体に対して四百ガメルでは、一人あたりの報酬は約百三十三ガメル。毎日一番安い定食を頼むにしても、二週間で金が尽きてしまう。
「それは少し安すぎるのではないですか。確かに僕たちは冒険者になってから一ヶ月の駆け出しですが、フェイクさんはこれ以上ないほどの達人なんですから」
「ああ、俺は考えに入れないでいい」
 あっさりと言ったフェイクに、アーヴィンドは思わず目を見開いてフェイクを見た。フェイクは平然と肩をすくめる。
「俺は報酬は別口でもらう」
「別口……というと?」
 にやり、とフェイクが笑顔を作る。
「デックとジャル、そしてそこのヴィアトに対する貸しを作るってことさ。こいつらくらいの実力のある相手なら、それだけでも充分な報酬になる」
「え、僕はそんな大した人間じゃあ」
「ま、当然だな。自慢じゃないが俺は相当に強いし♪」
「どう貸しを取り立てられるかと思うと今から憂鬱にはなるけどな……」
「それに実際問題、俺とお前らとでは実力が違いすぎるからな。公平な分け方は無理だろう?」
「……それは」
「そっかー、フェイクは金いらないんだ。うえじにしないの?」
「するか。俺は家も持ってるしな、とりあえず食う金には困ってない」
「…………」
 アーヴィンドは眉間に皺を寄せて考えた。となると報酬は一人二百ガメル。駆け出し相手には、一応相場の範囲内にはなるわけか。
 だが、実際問題としてそれでも生活できるのは二十日間。正直ひどく心もとない。できれば湯屋にも入りたいし、たまにはくず肉とくず野菜のスープ以外のものだって食べたい。ヴィオの鎧用の貯金だって必要だ。
 だけど向こうがぎりぎりだと宣言した報酬に、もっとよこせなどと言うのは下品というか、道に外れた行為なのでは……でも実際にお金はないわけだし、もう少しくらい要求しても……けれど実際に目の前に切実に困っている人がいるというのに、報酬を高くしろと要求するのは人として恥ずべき行いでは……。
 必死に頭を回転させて考えて、結局アーヴィンドは真剣な顔でジャルを見つめ訊ねた。
「本当に、四百ガメルが出せるぎりぎりなんですね?」
「もちろん」
 にっこりと笑うジャルに、アーヴィンドはふ、と息を吐いて言った。
「わかりました……それで、仕事をお受けします」
「そりゃどうも」
「ヴィオ、それでいいかい?」
「うんっ。とりあえずしばらくうえじにしないですむよなっ」
 にこりん、と笑うヴィオに、アーヴィンドは小さく苦笑してうなずいた。

 かつ、かつ、と黒大理石を削り出して造られた魔術の塔≠フ階段を上る。普段アーヴィンドはバレン師の研究室のある真理の塔≠ノ通っているため、こちらにはさほど詳しいというわけではない。
 だが予想通り、構造的にさしたる違いはなかった。螺旋階段を一周分上るごとに階があり、そこにいくつも魔術師たちの研究室が並んでいる。こちらの方が人が多いせいか、研究室を幾人かで共有していることが多かったが。
 七階まで上って、オイゲン導師の研究室を探す。学院内の噂に詳しい知り合いの貴族の子弟から聞いた話では、オイゲンはこの階の一番奥に一人研究室をもらっているとのことだ。
 デックたちも交えた作戦会議の結果、自分たちがどう動くかは決まった。デックはオイゲンの家の周囲で聞き込みをしてオイゲンの弱点を探りつつ家を見張る。ジャルは盗賊ギルドで弱点を探ってもらいつつ、場合によってはオイゲンの家に侵入して証拠をつかむ。ヴィアトはオイゲンと敵対する導師の家に向かい窮状を訴え、ヴィオとフェイクは全体の援護に回る。
 アーヴィンドの役目は、学院内でオイゲンの情報を収集しつつ、オイゲンに揺さぶりをかけることだった。そのために必要な情報は、ヴィアトにすでに教えてもらっている。もし向こうが隙を見せれば一気に事件解決に導ける。アーヴィンドはバレン主席導師の直弟子だ、騒ぎになって出るところに出ればまず負けはない。
 周囲に人がいないか警戒しつつゆっくりと歩を進める。果たして聞いた通りの場所に研究室はあった。中に人の気配を感じる。自分の感覚で当てになるものかどうかわからないが、おそらくは一人。周囲をもう一度確認してから、こんこん、とノックをした。
「どうぞ」
 低く、どちらかというと脂ぎった感じに聞こえる声。軽く深呼吸をして、「失礼します」と言いながら扉を開けてまず一礼。
「お初にお目にかかります、アーヴィンド・クラーク・リズレイ・プリチャードと申します。バレン主席導師の弟子をさせていただいております」
 ゆっくりと顔を上げ、そう言いながら優雅な笑顔を一発。椅子に座って面倒くさげにこちらに視線をやった(見かけは額がてかっただいぶ太り気味の壮年の男である)オイゲン導師は、明らかに顔を輝かせた。
「おお、君があの有名なプリチャードくんかね! さぁ、かけたまえ」
 よし、食いついてきた、とアーヴィンドはぐっと拳を握り締める。地位と金と名誉にめっぽう弱いという評判通り、オイゲンは声と見かけ同様(そういうもので人の印象を決めるべきではないと思うのでそれを判断理由にはしないけれども)脂ぎった性格の持ち主らしい。
「ありがとうございます。では、失礼いたします」
 勧められた椅子に柔らかな笑顔を崩さないまま極力優雅な挙措で座る。オイゲン導師は明らかにこちらに関心を示し、にやつきながら身を乗り出してきた。
「さて、今日はなにか用があるのかね? なにか質問かね? 君にならばいくらでも時間を割くよ」
「はい、先日発表されたオイゲン導師の論文について、いくつかお聞きしたいことがありまして」
「……ほう」
 一瞬オイゲンはすっと目に警戒の光を宿したが、すぐに笑顔に戻った。
「なにかね?」
「はい、今回の論文は悪魔召喚の壷における無作為性の原因の考察とそれによる召喚魔術を魔力付与する際の限界の算定、とのことでしたが」
「その通りだよ」
「論文では原因を、悪魔召喚の壷は魔界に固定された門と繋がっており、その門の周辺に存在する魔神を無作為に門の中に引き込んでいるのではないか、と推定されていましたよね?」
「そうだが、それが?」
「それでは門を建造する際、魔界に古代王国の魔術師自身が赴かなくてはならないということになりませんか? 魔界への扉を開くのは、古代王国の魔術師たちですら難事業だったはず。門と呼べるほどの建造物を造るのは、難しいのではないかと思うのですが」
「っ……そ、れは、だね」
 一瞬オイゲンは視線を泳がせたが、すぐに笑顔になってうなずいた。
「確かに、それは疑問ではあるな。私も現在それを研究しているところなのだよ」
「オイゲン導師は現時点では、どのようにお考えですか?」
「っ、それはだね、やはり研究途中で話せることではないというか」
「そうですか……もし、お考えをお教えくださったらバレン師にお話したいと思っていたのですが」
「……それは、本当かね?」
「はい、バレン師もオイゲン導師が発表された論文には興味を示してらっしゃいましたし。場合によってはオイゲン導師を高導師へと昇格させることも」
「あるのかっ!?」
 勢い込んで訊ねるオイゲンに、にこり、とアーヴィンドは微笑む。とりあえず、嘘をついてはいない。誇張は含まれているだろうが。
 あとでファリス神に懺悔をしなければ、と心の中で誓いつつ、オイゲンを見守る。しばし忙しく表情を変えて、それから咳払いをして笑顔を作った。
「そうだな、私の考えとしては。次元の門≠フ呪文を習得した魔界を知っている魔術師が門を開いたのではないかと思う。おそらくはファーラム即位後の話になるだろうが、門派が統合されたあとならばそういった人材も皆無ではなかっただろう。無限の魔力があれば持続時間は気にする必要はないしな」
「なるほど、さすがオイゲン導師。深いお考えを持たれているのですね」
「むろんのこと! だからどうかプリチャードくん、バレン師に」
「ですが……門を開いた魔術師も睡眠は取らなければならないでしょう? その間はどうしているとお考えですか? それに門を開くのが可能でも魔法装置の建造には時間がかかりますし。その間魔神の襲撃を防ぎ続けるのは、難しいと思うのですが?」
「そ……れは」
 ここでアーヴィンドはふぅ、とため息をついてみせた。相手に遺憾の意を示す、礼儀正しい、けれど攻撃的なため息。
「まさか、話に聞いたような、論文の剽窃のような真似をオイゲン導師がなさったとは考えたくはないのですが……」
「っ! どこでそれをっ!」
「え、オイゲン導師。まさか、本当に?」
 白々しくも目を丸くしてみせる。少し心が痛んだが、これも仕事と正義のためだし、なにより弟子の論文を剽窃したあげく学院を追い出すような相手に遠慮をしてもしょうがない。
 オイゲンは一瞬ざーっと顔から血の気を引かせたが、すぐに顔を真っ赤にして間近に置いていた杖に手を伸ばす。
 だがそれよりも早くアーヴィンドは立ち上がり、オイゲンに組み合いをしかけていた。組み合いはどうしても最初の立ち上がりが遅くなるが、アーヴィンドは最初からこの展開を読んでおりこういう場合は組み合いを仕掛けると決めていたのだ、反応も早くなる。
 高導師級の実力を持つとはとはいえオイゲンは白兵戦については素人のはず、組み合いを仕掛ければまず負けはしないだろう。そして組み合いになれば魔術は使えない、脱出されてしまう可能性もあるが、その一瞬の隙さえあれば。すぅ、とアーヴィンドは息を吸い込んだ。
「誰……」
 叫ぼうとした瞬間、小さく下位古代語で何事かが呟かれ、アーヴィンドの舌は固まった。
 え、と思う暇もなく腕から力が抜けぱたりと床に倒れる。足もぐたりと投げ出される。自分のものではないように力の入らないアーヴィンドの体を、オイゲンは忌々しげに押しのけて立ち上がった。
「ふん、小賢しい小僧っ子が。少しばかり知恵が働くからといい気になりおって」
 がすっ、とアーヴィンドの腹に蹴りを入れる。痛みが走ったが、それでも体は動かなかった。
 その時になって、ようやくアーヴィンドはオイゲンがいくつもの指輪を嵌めているのに気づいた。あきらかに魔術の付与された、いくつも上位古代語が刻まれた指輪。
 まさか、あの中に麻痺の効果を与える指輪が!?
 ざっ、と頭から血の気が引く。それでは、このままでは。
 オイゲンはいかにも邪悪、という笑顔で笑い、杖を取り上げてアーヴィンドに触れた。
「まぁいい、こうしてアールダメン候家というこの上ない後ろ盾が手に入るのだからな。……万能なるマナよ、我が意に従え。我は空間の理を知る者なり。我が言葉の前に世界はその形を変え、万里の道のりも瞬きの間に越せるものと成り果てん。いざ、我が導きによりて、マナよこの者を彼方へと運び去れ!=v
 以前も味わったことのある、転移≠ノよる一瞬の意識の断絶。その後アーヴィンドは今まで見たことのない結界の張られた部屋にいた。
 すぐあとにオイゲンも顔をしかめ小さく首を振りながら現れる。不機嫌そうな顔をしていたが、アーヴィンドを目にするとすぐににやりと笑った。
「さて、いろいろと聞きたいこともあるが……まずはお前に制約≠かけておくとするか」
『!』
制約=B対象に『〜するな』という命令を与える古代語魔術だ。たとえば『命令に逆らうな』という制約をかけられれば命令に逆らえば激痛が走る。導師級の魔術師でなければ使えないが、高導師級の実力を持つオイゲンならば当然使えるだろう。
 激痛に逆らうのは竜や巨人ですら不可能だとされる。アーヴィンドが逆らうなどできるわけがない。つまり、このままでは、自分はオイゲンの命令を唯々諾々と聞く奴隷にされることになる。オイゲンはそのことを明かすな、と命令するだろうから誰にも話せない、実家に自分を高導師にするよう働きかけろと言われても逆らえない。
 まずいまずいまずいどうしようどうすれば、いや諦めては駄目だなにか方法がないか考えろ考えろ考えろ――必死に頭を回転させるが麻痺した体は顔も叫ぼうと口を開けた顔のまま動かない。オイゲンは杖を振り、呪文を唱えかかる。
「万能なるマナよ、この者に対する制約の鎖となり――=v
 そしてぴたり、とその動きを止めた。そしてじろじろとひどく値踏みするような視線で上から下までアーヴィンドを見つめ、にやりと笑う。
 なんだ、と警戒するアーヴィンドをオイゲンは妙に嫌な方向で熱っぽい視線で見つめ、アーヴィンドの服の袷に手をかけてきた。
『!』
「なぁに心配することはない、ただ逃げられないように服を脱がせてやるだけよ」
 そんなこと言われて安心できる人間がいるはずがない。
「それから動けなくなるよう縄をかける。きちんと縛り上げて抵抗ができなくなったら、麻痺を解いてやる。声を上げてもらえなくては興醒めだからなぁ」
 最初はなんのことかわからず心の中で眉根を寄せたが、一瞬後理解した。心の中で顔面蒼白になる。許されるなら体中から血の気を引かせていたことだろう。
 まさか、この男は、自分に、けしからぬ真似をしようとしている?
 いや、まさか、いくらなんでも、いくら呪いがかかってるからってそんな、必死にそう否定しようとするが、オイゲンはにたにたといやらしい笑みを浮かべながら言った。
「心配するな、わしは優しい男だからな。痛めつけはせん。ちゃんとベッドにも連れていってやる。まぁ、少々血が流れたりはするかもしれんがなぁ」
『………………!!!』
 どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。これって、本当に、本気で、真剣に貞操の危機だ。
 ファリスさま、どうかあなたのしもべにご慈悲を! 恥も外聞もなく、本気で信じる神に助けを求める。そしてわかっていたことではあったが助けはこなかった。アーヴィンドは服を一枚一枚剥がれ、縄で縛られ、猿轡と首輪をはめられる。それからようやく麻痺状態を解除された。
「さぁて、小僧。自分で歩けるか?」
 内心泣きそうだったが必死に気を張ってきっとオイゲンを睨みつける。手足が動けば絶対にこの邪悪な男を叩きのめしてやるのに。いや無理だ、一言でこちらを麻痺させられる指輪が向こうにある限り勝ち目は限りなく薄い。ああなんて見通しが甘いんだ僕は、でもあんなの普通気がつかないよ、いや普通にやっているという状態で満足しているからそもそも飢えの危険に直面することに、と関係ない方向にまでアーヴィンドの思考は千千に乱れる。
「やれやれ仕方ないな、わしが運んでいってやるとするか」
 ぐい、と首輪に繋がった綱を引っ張られた。まるで犬のような屈辱的な状態に泣きそうになる。だけどこんな奴の前で泣くのだけは駄目だ、あの人に顔向けできない、と必死に唇を噛んでこらえた。
 オイゲンは念動≠フ呪文で宙に浮いたアーヴィンドをぐいぐいと引っ張って運んだ。魔術の研究室らしき場所を抜け、階段を上る。寝室らしき場所の窓際のベッドの上まで連れてこられたとたん、呪文を解かれてベッドの上に落っこちた。
「! ! !」
 必死に猿轡の下で喚き、騒ぎ、縄に縛られながらも暴れる。だが当然ながらそれははかない抵抗にしかならない。オイゲンはにたにたと笑みを浮かべたままアーヴィンドの顎に手をかけた。
「助けを呼んでみるか? その格好で?」
「っ」
「よしんば呼べたところで、誰が来るというのだ? わしが高位の魔術師だということはこの近所の誰もが知っている、そんな相手の家から聞こえた悲鳴などに誰が関わりたいと思う?」
「……っ」
 そうかもしれない。確かにそうだろう。誰だって自分の身の安全を第一に考えなければならない。それは当然のことだ。責務であるとすら言ってもいい。
 だけど。でも。それはわかっているけれど。人間というのは。少なくとも自分のそうありたいと願う人間は。冒険者は。そんな当然なんか蹴り飛ばして、助けを求めている人のところへやってくることができる人で―――
「………っ!!」
 誰か………!
「―――手足よ、跳ねよ! 肉体よ、飛べ! 止まるな、休むな、我らは踊り手。いざ舞え、踊れ、楽の音のままに! エスタ・ラシュタ・クートリスタ!=v
「なっ!?」
 びょん! とオイゲンの手が勢いよく跳ねた。のみならず、ベッドの上に乗り出していた体をよじらせた。突然聞こえてきた朗々とした声と楽の調べに合わせ、床に飛び降りて踊りだす。
 アーヴィンドにもその歌は効果を発揮していた。手足を縛られ、まともに動けないというのに体が勝手にばたばたと動く。縛られていなかったらオイゲンのように、すさまじい勢いで踊りだしていただろう。
 これは踊り≠フ呪歌か、とアーヴィンドは頭の中の知識を引っ張り出した。吟遊詩人の中には呪歌と呼ばれる魔法の歌を歌うことができる者がいる。呪歌は聞くものすべての心に等しく効果を発揮し、眠らせたり魅了したり今回のように踊らせたり、と操ることができるのだ。
 仲間にも通りすがりの人間にも等しく効くため、使いどころが難しいものではあるのだが。
「舞え、踊れ、楽の音のままに。踊るは楽し、舞うは楽し。レプラコーンは歌い、駆け舞い踊る。心は天に、体は空に。エスタ・ラシュタ・クートリスタ!=v
 だけどこの歌、なんてきれいなんだろう、と状況にそぐわないことをアーヴィンドはちらりと考えた。アールダメン候子としてアーヴィンドは当然何人もの上手な楽師の奏でる歌を聴いてきたが、こんなきれいな歌を聴いたことはない。天から降ってくるような、それでいて大地をしっかりと踏みしめているような、男性とも女性ともつかない中性的な、透明感があるのに腹に響く声が、周囲の空気を震わせて響き渡っていく。
 そんな桁外れの吟遊詩人が、なんで唐突に踊り≠フ呪歌なんかこんなところで奏でてるんだ? アーヴィンドは踊るオイゲンの横で自分も身をよじらせながら、周囲を観察する。
 と、窓の外。庭の向こうに、革鎧を着けた一人の少年がいるのが見えた。
 黒髪の、少なくとも今まで見たことのない顔の少年はリュートらしき楽器を持っていた。目にも止まらぬ指さばきで弦を鳴らしながら、周囲を見回しつつ歌を歌っている。
 まさか、あんな少年が? と思わずまじまじと見つめるアーヴィンドと、少年の目が一瞬合う。少年は目を輝かせ、楽器をかき鳴らしながらゆっくりとこちらへ歩いてきた。
 オイゲンもそれに気付いたのだろう、踊りながらも懸命に杖を振ろうとするが果たせない。呪歌はしっかりと自分たちの心を捉えているのだ。
 少年は窓のすぐ前までやってきて、窓を乗り越えようとしたが楽器を奏でながら窓を乗り越えるなどできるわけがない。数度挑戦して果たせず悔しそうな顔をしてから、じゃんっ、と最後にそのひどく複雑な弦構成をしたリュートをかき鳴らして歌をやめた。
「っ、貴様、どこの」
 そしてオイゲンが口を利く前に再び楽器をかき鳴らし始める。
「歌よ響け、そして誘え。ここは楽園、愛しき世界。すべては楽と、歌の音のままに。エーリ・アーリ・リシュテーリ。ハーピーの囁き、ドライアードの視線。サーレ・ネーレ・メルレーン……=v
 これはもしや歌を聴いた者を自在に操る魅了≠フ呪歌、と驚きながら考えられたのは一瞬のことだった。すぐにその柔らかな調べはアーヴィンドの(おそらくはオイゲンも)脳髄まで響き、ほわぁーん、となにも考えられなくしてしまう。
「縄を解き、そして杖を手放せ。ここは楽園、憂さを忘れよ。すべては楽と、歌の音のままに。エーリ・アーリ・リシュテーリ=v
 自分にかけられた縄が解かれ、オイゲンが杖を放す。それから遠くへと放り投げた。オイゲンがぼんやりとした顔で歌に聞き惚れているのを、自分もぼんやりと見つめる。
「自らを縛った者を、縄で縛れ。すべてはあるべき、本来の姿に。ハーピーの囁き、ドライアードの視線。サーレ・ネーレ・メルレーン……=v
 自分が縄でオイゲンを縛っているのを、他人事のように見つめる。頭がぽうっとしてなにも考えられない。けれどそれがひどく心地よく、ずっとこの歌を聴いていたいと思った。
「ここは楽園、愛しき世界。エーリ・アーリ・リシュテーリ。すべては楽と、歌の音のままに。サーレ・ネーレ・メルレーン……=v
 オイゲンに猿轡までしっかりはめてから、最後はしゃらんっ、と軽やかな音と共に、歌はしめやかに終わった。
 はっと正気に戻り、ばっと少年の方を向く。少年はふぅ、と息をついてから、こちらを向いた。
「あんた、だいじょ……」
 言いかけてから、ぱっと頬を朱に染める。
「あんた、ちょっと、服着てくれよ……」
「え? あ」
 自分が素裸同然の格好だということを思い出し、アーヴィンドはカッと顔を熱くした。慌ててベッドから毛布を取り、自分の体に巻きつける。そしてまた少年の方を向いた。
「あの……ありがとう。助けて、くれたんだよね?」
「ああ。だけど驚いたぜ、道歩いてたら悲鳴が聞こえるから。悲鳴の聞こえた家に忍び込んでみりゃ、縛られたあんたがそこのヒヒジジイに襲われてんだもん」
「え、悲鳴って……猿轡越しにしか出せなかったと思うんだけど」
 に、と少年は笑った。
「俺、耳はいいんだぜ。……まぁ、聞き耳立てるのはうまいってほどじゃないけどよ」
「すごいね……あ、僕は、アーヴィンドっていうんだ。本当にありがとう」
「い、いーって別に! こんくらい大した手間じゃねーし。あ、俺はカル。よろしくな」
「うん、よろしく。……なにかお礼がしたいんだけど、今僕はお礼ができるようなものなにも持ってなくて」
「気にしなくていいってのに」
「そういうわけにはいかないよ、本当に君は命の恩人みたいなものなんだから。……正直お金はろくに持っていないけど、僕は冒険者なんだ。『古代王国への扉』亭を拠点にしてるんだけど、だからもし冒険者の用があったらそこに来てもらえば」
「ほんとかっ!?」
 勢い込んで身を乗り出してきたカルに、アーヴィンドは気圧されつつも「もちろん」とうなずく。するとカルは瞳を輝かせて言ってきた。
「じゃあさ、ヴィアトって魔術師知らねぇ!? 冒険者になってるらしいんだけど!」
「……え」
「アーヴーっ! 無事かーっ!」
 はっと声のした方を振り向くと、寝室の扉の前にヴィオが立っているのが見えた。ひどくほっとしてから自分の今の格好に思い当たりさっと顔から血の気を引かせるも、ふいにふわりと上着を放り投げられて目をぱちぱちさせる。
「着とけ」
「フェイクさん……」
「ったく、しょーがねーなー。面倒かけさせやがって、男のくせに」
「この仕事の分の報酬は四百ガメルからさっぴくぐらいのことはさせてもらいたいねー」
「ま、まぁまぁ、デックさんジャルさん、僕たちには全然被害なかったんですし……」
 にやにや笑いながら現れたデックたちをは、と見る。そしてなにか言おうとする前に、こちらに視線を向けたヴィアトが仰天して叫んだ。
「カルっ!? なんでこんなとこにっ!?」
「ヴィアトっ!」
 カルはだっと駆け寄り、ヴィアトの頭をごつんと小突いた。
「このヤロー、人との約束思いっきり破りやがってー!」
「え、な、ちょ……!?」
「……ここに縛られてるのがオイゲン導師だな?」
「え、はい」
 フェイクはにや、と笑って肩をすくめた。
「なら、お仕事完了だ。こいつを学院に突き出して、冒険者の店に帰ってから話をするとしようぜ」

 ヴィアトとカルは子供の頃から、ずっと一緒に冒険者になろうと約束をしていたらしい。
 だがお互いスラムの出身で、装備を整えるどころか明日の食事をする金もおぼつかない。そこでカルは、全力で吟遊詩人としての修行に打ち込んだ。五歳ですでに亡くなった吟遊詩人の両親から基本的な技術は徹底的に仕込まれていたし、楽器もあった。その技で金を稼いで、冒険者としての装備と自分たちの食事を得ようと考えたのだ。
 自分が稼がなければ仲間たちが飢えることになるという切迫感に加え、才能にも恵まれていたのだろう。カルはどんどんと技を伸ばしていった。それこそ道で弾き語りをすればそこらじゅうから金貨が飛んでくるぐらいに。
 そして先日、カルはオランの音楽堂の中でも超一流の部類に属するオルガノン音楽堂に勧誘された。つまり音楽家として超一流だと、わずか十五歳にして認められたということなのだ。
「だけど、俺が技磨いたのは冒険者になるためだろ!? そりゃみんなの食い扶持稼ぐためでもあるけどさ!」
「だからって充分な給金がもらえる仕事に就けるのに、危険な冒険者の道を選ぶ必要なんてないじゃないか!」
「約束しただろ、ガキの頃ちゃんと! 一緒に冒険者になって、英雄になろうって! そうすりゃまともに飯も食えない奴らをなんとかしてやれるって、希望与えてやれるって!」
「超一流の音楽堂で働けるのだってスラムのみんなにしてみれば立派な希望だよ!」
「お前だって学院で導師級の扱い受けてるらしいじゃねーか、でも冒険者になるんだろ!?」
「そ、それとこれとは話が違うよ!」
 ぎゃんぎゃんとやり合うヴィアトとカルの横で、アーヴィンドとジャルとデックは報酬の分け方交渉を行っていた。オイゲン導師の不正行為を暴いたとして、学院から千ガメルの報酬が出たのだ。
 アーヴィンドは懸命に少しでも分け前を多くするべく食い下がっているが、分は非常に悪かった。
「……ですから、僕が動いたために一気に事件が解決したのは、確かなことですし」
「けど俺らがいなかったらヤられたあげく制約≠ゥけられてあのオッサンの奴隷になってたのも確かなことだよな?」
「で、ですが、助けてくれたのは実質的にはカルですし、フェイクさんが助けてくれた可能性も」
「ほー、フェイクさんから知らせ受けて大慌てで門番の竜牙兵三体ぶっ倒して名士の家に押し入ったってパクられる危険冒して強行突破した俺らにそーいうこと言うわけか?」
「そ、れは」
「ま、そっちの子もものの役ぐらいには立ってくれたけどな。敵地に乗り込んであっさり捕まった間抜けな坊主を、仕事頼んだ依頼人に助けに来させといてこれ以上報酬分捕れると本気で思ってるのか?」
「ううう……」
 アーヴィンドはがっくりとうなだれた。
「わかりました……最初の四百ガメルの一割引きで、けっこうです……」
「はい、交渉成立」
 にやり、と笑ってジャルはとん、と袋を置いた。銀貨が入っているのだろう、ちゃりりと音がする。一応受け取って確かめてみたが、中に入っているのは何度数えても三百六十ガメル。二人で分ければ百八十ガメル。ぎりぎりまで切り詰めても十八日。本当に湯屋にもろくに入れない日々が続くことが決定し、アーヴィンドはずーんと気分が重くなるのを感じた。
「な、な、報酬もらえたの? うえじにしないですむ?」
「そうだね……十八日間は」
「よかったー、飯食えるんだ! ひゃっほー!」
「……ヴィオ……」
 心の底から嬉しそうに喜ぶヴィオに、アーヴィンドは思わずそっと目頭を押さえた。フェイクがくす、と笑う。
「ま、いい方向に考えるのはいいことだな。たとえ報酬交渉で恥を捨て切れなくて食い下がれないせいで向こうの思うがままに交渉進められたとしても」
「ぐっ」
「実際ぶっちゃけちまうと、俺らあと充分余裕見ても数千ガメルは出せたし、学院からの千ガメルくらいならやっちまっても別によかったんだけどな。お前の動きで事件が一気に解決したのは確かだし、急を知らせた上全員一気にオイゲンの家まで転移させたのは月の兄貴だし」
「なっ」
「けど若人を甘やかしちゃいかんだろっつーことで! まーせいぜい交渉技術磨きつつ仕事探し頑張るこったなー、わっはっは」
「うううう……」
 アーヴィンドは再びがっくりとうなだれた。本当に、我が身の未熟さに泣けてしまいそうだ。
 と、立ち上がったデックがぽん、とアーヴィンドの肩を叩いた。思わず見上げると、男らしい顔立ちににやりと笑みを浮かべ、デックは周囲を見渡して高らかに叫ぶ。
「野郎ども! この冒険は成功したのに報酬もまともにもらえない、哀れな駆け出し冒険者のために乾杯だー!」
 え、なにを突然、と思う間もなく、すぐさま周囲から声が返ってくる。
『おーうっ!』
「残念だったなーアーヴィンドちゃん。まー落ち込むなよ、そのうちいいことあるって」
「そうそう、幸運はそのうち巡ってくる! あとはうまくつかむだけ!」
「気にすることないわよー、しっかり誠実に仕事してればそのうちなんとかなるなる!」
「ほーれ飲め飲め、俺のおごりだー!」
「ほれ食え食え、俺の鳥の腿揚げ分けてやっから」
 え、なに、なんなんだ? と困惑しつつも次々差し出されるジョッキや食物を受け取る。なんだ、この人たちなんで急にこんなに親切になってくれるんだ? 昨日自分を騙していいようにしようとした人まで当然のように肩を叩き、酒と料理を差し出してくれる。なんで?
 思わず相談するようにヴィオを見ると、ヴィオはにっこー、と笑って(今は少女であるヴィオの笑顔に、アーヴィンドは一瞬恥ずかしくて目を逸らしたくなった)言った。
「冒険者のじんぎってやつだなっ! 嬉しいなー、アーヴ!」
「え……」
「ま、そういうことだな。……ほれ、そっちの二人も言い合ってないで食え。せっかくみんながおごってくれるっていうんだ、食える時に食っておくのが冒険者の心得だぞ」
 フェイクが微笑みながらぽんぽんとアーヴィンドの頭を叩く。アーヴィンドはぽかんとしながらも、そうか、となんとなく理解した。
 そうだ、たぶんきっと、これが冒険者の仁義というものなんだ。お互いは常に競争相手でいつ敵対するかもしれない、でもだからこそ、一緒に祝える時は心から祝う。苦しみを知っているからこそ、喜びの重みを知り、ただ喜びを分かち合うことを知っているのだ。
 もちろん嫌な人や、本当の悪人もいるだろう。この人たちも酒が入っているから気が大きくなっているだけなのかもしれない。でも、冒険者という仕事は、自分の憧れてきた仕事は。
 じっと、さっきまでの言い合いを忘れたようにヴィアトと楽しげにお喋りをしながら料理をばくばく口に運ぶカルを見る。同じように口を動かすヴィアトを見る。騒ぎながら酒をぐいぐい飲み干すデックとジャルを見る。静かに微笑みながらワインを口に運ぶフェイクを見る。
 そして、真っ先に部屋に飛び込んできてくれた、楽しげに食べまくるヴィオを見て、汚れた口でにこりと微笑まれ。彼らが自分のために、竜牙兵を倒してまでやってきてくれたことを思い出す。
 そう、冒険者という仕事は、きっと、憧れるに足る仕事だ。
 気合を入れるために、ぐい、エールを飲んでこっそり誓う。もっと頑張ろう。成長しよう。だって自分は、まだ冒険者としても人間としても、まだまだ始まったばっかりなのだから!
 そう、できるなら、ヴィオと一緒に。そう考えてから、妙に気恥ずかしくなって料理の皿にフォークを伸ばした。

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キャラクター・データ
アーヴィンド・クラーク・リズレイ・プリチャード(人間、男、十五歳)
器用度 12(+2) 敏捷度 20(+3) 知力 23(+3) 筋力 15(+2) 生命力 19(+3) 精神力 20(+3)
保有技能 プリースト(ファリス)5、セージ2、ファイター2、ソーサラー1、レンジャー1、ノーブル3
冒険者レベル 5 生命抵抗力 8 精神抵抗力 8
経験点 189 所持金 78ガメル
武器 ヘビーメイス(必要筋力15) 攻撃力 5 打撃力 20 追加ダメージ 4
ダガー(必要筋力5) 攻撃力 4 打撃力 5 追加ダメージ 4
ロングボウ(必要筋力15) 攻撃力 4 打撃力 20 追加ダメージ 4
スモールシールド 回避力 5
ラメラー・アーマー(必要筋力15) 防御力 25 ダメージ減少 5
魔法 神聖魔法(ファリス)5レベル 魔力 8
古代語魔法1レベル 魔力 4
言語 会話:共通語、東方語、西方語、上位古代語、下位古代語
読文:共通語、東方語、西方語、上位古代語、下位古代語
ヴィオ(人間、性別不詳、十五歳)
器用度 15(+2) 敏捷度 19(+3) 知力 18(+3) 筋力 18(+3) 生命力 21(+3) 精神力 21(+3)
保有技能 シャーマン4、ファイター3、レンジャー2
冒険者レベル 4 生命抵抗力 7 精神抵抗力 7
経験点 1186 所持金 48ガメル
武器 ロングスピア(必要筋力18) 攻撃力 5 打撃力 23 追加ダメージ 6
ロングボウ(必要筋力18) 攻撃力 5 打撃力 23 追加ダメージ 6
なし 回避力 6
ハード・レザー(必要筋力9) 防御力 9 ダメージ減少 4
魔法 精霊魔法4レベル 魔力 7
言語 会話:共通語、東方語、精霊語
読文:共通語、東方語
月の主<tェイク(ハーフエルフ、男、九十歳)
器用度 18(+3) 敏捷度 21(+3) 知力 19(+3) 筋力 10(+1) 生命力 18(+3) 精神力 21(+3)
保有技能 シーフ10、ソーサラー8、レンジャー7、セージ6、バード6
冒険者レベル 10 生命抵抗力 13 精神抵抗力 13
経験点 5676 所持金 財布の中に入ってるだけで10000ガメル程度
武器 月光の刃 攻撃力 16 打撃力 13 追加ダメージ 14
なし 回避力 16
ソフト・レザー+3(必要筋力5) 防御力 5 ダメージ減少 13
魔法 古代語魔法8レベル 魔力 11
呪歌 ヒーリング、レストア・メンタルパワー、チャーム、レクイエム、キュアリオスティ、ノスタルジィ
言語 会話:共通語、東方語、上位古代語、下位古代語、西方語、エルフ語、ドワーフ語、リザードマン語、ケンタウロス語、ゴブリン語、マーマン語、ジャイアント語、ハーピー語
読文:共通語、東方語、上位古代語、下位古代語、西方語、エルフ語、ドワーフ語
デック・ヴァーベン(人間、男、二十八歳)
器用度 13(+2) 敏捷度 14(+2) 知力 13(+2) 筋力 20(+3) 生命力 20(+3) 精神力 18(+3)
保有技能 プリースト(マイリー)7、ファイター7、レンジャー1、セージ1
冒険者レベル 7 生命抵抗力 10 精神抵抗力 10
経験点 0 所持金 1000ガメル程度
武器 銀の最高品質グレートソード(必要筋力20) 攻撃力 9 打撃力 30 追加ダメージ 10
ヘビー・クレインクィン・クロスボウ(必要筋力20) 攻撃力 9 打撃力 50 追加ダメージ 10
なし 回避力 9
プレート・メイル+1(必要筋力20) 防御力 25 ダメージ減少 8
魔法 神聖魔法7レベル(マイリー) 魔力 9
言語 会話:共通語、東方語
読文:共通語、東方語、下位古代語
ジャル・ヴォーバルバニー(ハーフエルフ、男、三十一歳)
器用度 18(+3) 敏捷度 19(+3) 知力 18(+3) 筋力 12(+2) 生命力 16(+2) 精神力 18(+3)
保有技能 シーフ7、シャーマン6、レンジャー2、セージ1
冒険者レベル 7 生命抵抗力 9 精神抵抗力 10
経験点 0 所持金 15000ガメル程度
武器 ショートソード+2(必要筋力6) 攻撃力 12 打撃力 6 追加ダメージ 11
ロングボウ(必要筋力6) 攻撃力 10 打撃力 6 追加ダメージ 9
なし 回避力 11
ソフト・レザー+1(必要筋力6) 防御力 6 ダメージ減少 8
魔法 精霊魔法6レベル 魔力 9
言語 会話:共通語、東方語、精霊語
読文:共通語、東方語、下位古代語
ヴィアト(人間、男、十五歳)
器用度 8(+1) 敏捷度 18(+3) 知力 24(+4) 筋力 9(+1) 生命力 18(+3) 精神力 24(+4)
保有技能 ソーサラー6、セージ6
冒険者レベル 6 生命抵抗力 9 精神抵抗力 10
経験点 500 所持金 453ガメル
武器 メイジスタッフ(必要筋力5) 攻撃力 0 打撃力 5 追加ダメージ 0
なし 回避力 0
ソフト・レザー(必要筋力5) 防御力 5 ダメージ減少 6
魔法 古代語魔法6レベル 魔力 10
言語 会話:共通語、東方語、上位古代語、下位古代語、西方語、エルフ語、ドワーフ語
読文:共通語、東方語、上位古代語、下位古代語、西方語、エルフ語、ドワーフ語
カル(人間、男、十五歳)
器用度 18(+3) 敏捷度 15(+2) 知力 12(+2) 筋力 15(+2) 生命力 19(+3) 精神力 18(+3)
保有技能 バード9、ファイター2、レンジャー1
冒険者レベル 9 生命抵抗力 12 精神抵抗力 12
経験点 0 所持金 353ガメル
武器 ブロードソード(必要筋力15) 攻撃力 5 打撃力 15 追加ダメージ 4
バックラー 回避力 5
ハード・レザー(必要筋力8) 防御力 8 ダメージ減少 9
呪歌 ヒーリング、レストア・メンタルパワー、チャーム、レクイエム、キュアリオスティ、ノスタルジィ、ダンス、マーチ、ララバイ
言語 会話:共通語、東方語、下位古代語、西方語、エルフ語、ドワーフ語、リザードマン語、ケンタウロス語、ゴブリン語、フェアリー語、ハーピー語
読文:共通語、東方語