あとがき。

※このあとがきには『テニスの王子様』原作ファンの気分を害する可能性のある文章が含まれています。読まれる場合はご注意のほどをお願いいたします。ちなみに文句は二十四時間受付中です(真っ当な文句なら)。
 ……いや〜ようやく、ようやっと『テニスの王子様RUSH&DRIVE』書き終えることができました。いや本当長かった長かった。どのくらいだ……二年? 三年? ジャンプに載ってた原作が終わる前から書いてたような気がするんですが。でも原作が終了するのは予定の範囲内でしたが、まさか別誌に移って新連載スタート、なんてことになるとはさすがに予想外でしたよ……。
 とにかく、ともかくそういうわけで、『テニスの王子様RUSH&DREAM』男主参加バージョン、なんとか書き終えることができました。よかったよかった。現在とりあえず心底ほっとしております。
 これはもともと企画の部屋にあるS&T2連載を書いていて、これで終わらせるのが惜しくなったというか、世間(≒ネット)の圧倒的なS&T男主不遇っぷりに憤懣の念を抱き、R&Dに至っては出てもいないのが悔しくて(自分隼人のことが大好きだったので。いやR&Dは恋愛色を強くした作品なんだからない方がいいとは思いますけどね)書き始めた作品だったんですが。
 自分としてもS&T2というゲームを純粋にゲームとしてかなり気に入り、続編のR&Dもやってみて、やっぱり面白いと思ったから、というのもあるんですよ。トークでも書いてますが、ときメモ的ステータス上げが大好きな自分としてはかなり好みだった。ゲームだから、原作よりかなりあくが抜けてるしね。そういうゲームとして見たテニプリのキャラって魅力的に思えたし、なによりネットにいくつも魅力的な作品があって、自分も『この作品を題材にした小説を書きたいっ!』と思わずにはいられなかったのですよ。
 でもですね、もともと自分はテニスの王子様という作品に強いこだわりがあったわけではなく、むしろ原作自体は相当に苦手だったのです。
 これもトークに書いてますが。読んでみて拒否反応を示すほど駄目で。なので、ファンの方には大変申し訳ないのですが、よくあるとりあえず美形出しとけ的巨大ジャンルという認識しかしてなかった。二次創作書いてて大変申し訳ないと思うんですがっ。いや自分が二次創作読んでて作者の原作嫌い発言とか読むと一気に萎えるから正直言いたくないし本当に申し訳ないと思うんですけどね!?
 R&D書き始めてから何度か原作を読み直してみたのですが(立ち読みで)、それでもやっぱり自分は原作は駄目でした。すいません本当に申し訳ないのですが。女子ファン以外にも何人もコアなファンを持つ、『ジャンプの歴史に残るトンデモ漫画』として解説されながら読むテニプリは素直に面白いというか、読んでいて吹き出してしまうんですけど。
 自分キャラクターに感情移入しながら読むのでその……すいませんファンの方々にはすごく申し訳ないんですが正直に言います。自分原作者の許斐先生がそもそも『キャラクターを生かそう』として描いてるとは思えないんですよ! キャラを人間扱いしてると思えないの! キャラクターというアイテムを使ってストーリーに対する反応を描き出してるようにしか思えないんですよ!
 そういう漫画はそういう漫画でアリだと思うんですが(トンデモギャグ漫画って普通そうだし)、自分は正直苦手で。許斐先生の『通常人の斜め上を突っ走る』という状態をキープし続ける能力と、ここまでマイロードを突っ走る気合と気迫と根性は本当にすごいと思いますし大したもんだと思わずにはいられないのですが、異常なまでの大ゴマとか絵柄に統一性がなく感じられるとかそういうものも含め、もう許斐先生の計算と思われること自体がことごとく苦手で!
 なので、自分は基本的にテニプリという作品自体に対しては愛がない……というか、斜めから見てしまうのです。テニミュとかにもつい偏見の目を向けてしまうというか……いやテニミュという芸術が高い娯楽性を持つことを疑ってるわけじゃありませんよ? 面白いんだろうと思うし、それに対するエネルギーが舞台俳優&スタッフのみなさんの懐を潤したり新しいステージへのステップとなったりすることを考えても高い意義のあることだと思うんですけど……。
 まず自分が原作に愛がないので。アニメやら舞台やらになってバカ売れというにふさわしい売れっぷりを示しているのを見るにつけ、『……もうちょっと他の作品を評価してくれてもいいんじゃないかなァ』とか思ってしまうのですよね。もうここまで売れたんだから連載枠を空けてほしいとか正直思いましたすいません。
 で、ならなんで二次創作なんて書くのさ、と言われると、ですね。すでに書いたように、ゲームが楽しかったから、というのがまず一番なんですが。
 テニプリという作品がここまで売れた理由のひとつにですね、『作品そのものの素材度』というのがあると思うんです。作品そのものがそれだけで完成していない、というか。妄想とか二次創作とかの材料として極めて有用に使える、読者の共通素材としての作品、みたいな。自分的にはリボーンも同じ種類の作品だと思います。だからこそここまでいろんな種類の二次創作が世に出ているのではないかなぁと。
 で、自分は原作に対しては愛はないのですが、その二次創作には好きなものがいくつもあるのですよ。素材をそれぞれの感性で翻訳した作品。二次創作というのはそもそもがそういうものなので当たり前ですが、そういうのは基本的にその人自身の作品という風に思えてしまうのですよね自分。
 それで自分もその二次創作コミュニティというか、テニプリゲー$「界という素材を使って他の方々と一緒に作品を書いてみたいと思ったというか……他の人がやっていると面白く思えて自分もやりたくなってくる、みたいなのがあります。二次創作ってそもそもそういう側面あると思いますけども。自分なりのテニプリゲー二次創作を世に問うてみたかった!
 まぁ、もちろん根本的かつ一番強い動機は『男主交えてR&D書きてぇえええぇっ!!!』っていう気持ちなんですけどね。自分テニプリゲーは(プレイしたのは)好きなんですから。本当に。

 長くなりましたので少しブレイク。
 えっと、今作のテーマ……というか、なにを思って書いたか、なんですが。
 まず、R&D原作の巴がパーフェクトルートで感じる、『これは自分のテニスじゃない』という思いや、本当はできる奴ルートでの『自分のテニスができない』という悩み。その『自分のテニス』ってなんなのか、という思いがまずあったんですよね。
 まぁ脚本書いた人もたぶんそんなに深く考えて書いたわけじゃないとは思うんですけど、よくスポーツものとかでも言われる『自分の〜』という代物。これになんとか答えを出したいなー、と思ったのです。
 で、この話は隼人と巴のダブル主人公なわけですから、隼人にその巴の悩みを絡めていかなきゃならないわけなんですが……うんうん考えて、『巴が悩んでいるのを心配し、それをきっかけに自分たちのスタンスを考え直していく隼人』という感じにもっていきたいなぁと思うようになりました。
 企画の部屋ではリョーマとの絡みが第一で、基本脇役でしかなかった巴ですが、隼人にとって巴は大切な家族でなんとしてでも守ってやらなきゃならない妹的存在。きちんと心の関わり方を書いておかなくちゃなりません。それに巴の悩みっていうのはまだ自分のスタイルが確立してないってことが大きいと思うので、隼人がつられて悩むのはなんか違う気がしたんですよ、あれでも物心ついたころからラケット振ってるわけですから。
 それと……企画の部屋からうんうん引きずってきたことなんですが……自分的になんとか、テニプリゲー$「界にうまくアスリートとしての心構えを導入できないかな、と思ったんですよね。おお振りをきっかけにスポーツ音痴な自分もリアルなアスリートの精神というものを少しばかり知る機会があったので、それをなんとか作品の中に織り込んでいけないかなぁと。
 で、結果として、巴の『自分のテニス』というのは……『テニスをやり始めた子供のように楽しくてしょうがないテニス』というものになったんですが……これって、原作で南次郎が言ってた天衣無縫なんですよね。最初にこれ書いた時自分それ知らなかったんですけど。
 ただ自分は、そういうただ♀yしいテニスだけでテニスが強くなれるとは思わなかった。リョーマもR&Dとかで言ってますが、楽しい、いいテニスがしたいというだけじゃアスリートとしては『甘い』んじゃないかと。死ぬほど勝ちたいという思いで向かってくる相手に立ち向かうことはできないんじゃないかと。
 それで、『そもそも巴は本質から違う』という作中で言っていることを考え、『頑張っている人の支えになるためにものすごくいい<eニスを目指す』という形にしたわけですが。その上で隼人とリョーマのまっとうなアスリート的な、『やっていて楽しいと思うから勝ちたいし勝つために全力を尽くす、だから苦しいけど楽しい』というテニスを書いてみたわけですが。
 そこらへんと隼人とリョーマのテニスへの憧れやら二人に置いていかれる寂しさやら家族愛やらなにやらを絡めて、どーにかこーにか形にしてみたつもりではあるんですがいかがでしたでしょうか。正直息切れしました。まだまだ修行が足りないです。
 えーと、あとわかりにくいところに触れておくと……リョーマの心境とか説明しときましょうか。リョーマは(素直じゃないですが)隼人をただ一人のライバルとして認め、巴を(素直じゃないですが)家族であると同時に、ただ一人の女の子として意識しているわけですが(あのリョーマの中に入るには巴ぐらいじゃないと無理でしょう)。
 もちろん巴が他のやつにかっさらわれるのは嫌ですから邪魔しますし、自分なりに(下手ですけど)巴にアピールもするんですが、それと同時に隼人と巴の絆にヤキモチも焼いてるんですね。二人の間に入れないーとか、お前のライバルは俺だろうとか従兄だからってそんなにくっつかなくてもいいんじゃないのみたいな。
 そんな風に両方に妬いてるんで、行動がいちいちひねくれ曲がっているというか、どっちにも素直にアプローチできないんです。性格的要因を除いても。
 他には……巴がああも男子にモテまくってるのは作中でも言ってますが、『すごいテニスをする女の子』だからです。テニスに人生懸けてる野郎どもを強烈に惹きつけるものがあるんですね。一緒にテニスをしてみたい、プレイしてみたい、そうしたら自分のテニスはどう変わるんだろう、みたいな。まぁ巴自身がハーレム属性持ちということもあるんでしょうけども。彼女を巡って争わずにはいられないフェロモンみたいなものがあるというか。
 あと書こうとして果たせなかったんですが、きーくんは隼人たちのフォローをしつつこの合宿で自分なりに(作中でも書いてますが)自分のテニスに悩み、桃先輩とともにひとつ壁を乗り越え、またひとつ絆を結んだりしてます。那美ちゃんも作中で悩ませたり戦わせたり泣かせたりしましたけど、見えないところで海堂先輩と絆を深めてました。巴に負けてもちろんショックでしたけど、隼人たちの試合を見てちょっとふっきれたみたいです(勝ちたくていいんだ、と思えた感じ)。
 で……ラストなんですけど……隼人は結局巴に対する感情が当然のようにそばにいる家族というスタンスから抜け出せておらず、対して巴は隼人たちはいつまでも一緒にいられないから自分だけの人を探そう、って全力でズレさせちゃってますよね? これはなんというか、自分がまだ二人の関係に決着をつけさせかねているところがあるせいでして。
 ぶっちゃけるとですね。巴は隼人を家族としてしか見ていませんが、隼人には巴を異性として(無意識のうちに)意識する部分がある、っていう設定なんですよ! だからこそこの二人従兄妹って設定にしたの! 従兄妹なら結婚できるから!
 で、リョーマと隼人は巴を巡って中三の秋〜冬ぐらいに本格的にぶつかり合い、クリスマスに仲直りして、共に中学卒業と同時にアメリカへと旅立ち、その際に二人で『一緒に来るか?』と巴に聞いてみるのですが(二人なりの精一杯)、二人の気持ちを察しつつも巴はきっぱり『ううん、行かない』と切り捨て、私が欲しければいい男になっていらっしゃ〜いみたいな台詞に送り出されて隼人とリョーマは喧嘩しつつ旅の空へ――という無駄な設定があるのですが、正直書くかどうかは決めかねています。
 これで終わりというのも中途半端な気がするとは思うのですが……うーん……ぶっちゃけると自分書くにしても巴との関わりを書くより隼人とリョーマの関わりを書きたいというかリョ隼リョが書きたいので……。
 ともあれとりあえずは全力出しました! これが自分の精一杯です! あとのことはあとで考えます、もしご要望等ありましたら拍手&掲示板からメッセージ送ってくださるとすごくうれしーです! ではっ!

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