この作品には男同士の性行為を描写した部分が存在します。
なので十八歳未満の方は(十八歳以上でも高校生の方も)閲覧を禁じさせていただきます(うっかり迷い込んでしまった男と男の性行為を描写した小説が好きではないという方も非閲覧を推奨します)。



グラッド兄貴とライのらぶらぶ生活・その1
 トレイユ駐在武官グラッドと、忘れじの面影亭主人ライは、紆余曲折の末晴れて恋人同士になった。ほとんど嫁入りのような大騒ぎを終えてケンタロウたちを送り出し、グラッドの上級科試験を控えて現在はいちゃいちゃ蜜月の真っ最中である。
 朝も昼も欠かさずグラッドはライに会いに行くし、夜は夜で……まぁ、恋人同士なら普通にやることをやれるようになった。毎日とはさすがにいかないが、いうなれば今の二人は新婚。グラッドとしてはできる限り一緒にいたいいっぱいいちゃいちゃしていたいというのが本音だ。
 むろん仕事には誠実なライは仕事をサボるような真似は断じてしないが(自分も大人としてそれはさせたくない)、グラッドが自分の家に誘えば恥らいながらもライは拒まないし、誰にも見られないところならキスしても受け入れて気持ちよくなってくれる。めろめろになってきたところで「いいか?」と耳元に囁けば、顔を真っ赤にしながらもこくんとうなずき、ベッドでずっぽりしっぽり愛を交わしてグラッドを思いきり気持ちよくさせてくれるのだ。
 そんないってみれば幸せな日々を絵に描いたような生活ではあるのだが。
 グラッドには、ひとつこっそり心の中に抱いている野望があった。

(咥えさせたい……)
 厨房で忙しく立ち働くライを見ながら、グラッドはぼんやりと考えた。
(ライ、俺の咥えてくんないかな……下手でもいいから。テクニックとか要求しないから。あのちっちゃな口で俺のを一生懸命ほおばってほしいんだけどな……)
 そんなことを考えながら「キュリアンのから揚げおろしだれかけ上がったぜ!」などと元気一杯に動くライの唇を見つめる。薄いのだけれど、柔らかくて感じやすい唇。薄いところがかえってストイックな色気をかもし出している。それを見ながら(あの唇の中に俺のを突っ込んで、頭押さえて出し入れしてみたら……)などと考えるとグラッドの下の足は節操なく勃ち上がった。
(でもなぁ、あいつはまだ十五歳だし……俺がやってやるのにも最初は抵抗あったみたいだしなぁ……今はもう泣きそうに恥じらいながらおねだりしてくるくらいになってるけど……うっ、思い出したらムラムラしてきた)
 いかんいかん、と首を振って、それでもやはりまたぼーっとライの唇を見つめてしまう。
(やっぱ十五歳の子供にぺろぺろしゃぶしゃぶしてもらうっつーのはまずいよなぁ……いやでももうあいつも一応一人前と呼ばれる年齢になってるわけだし。そのくらいは要求しても……いややっぱりあいつはそういうところ潔癖だしな……汚いとか言ってたしな……いやでももうされるのは抵抗なさそうだし……)
 グラッドの思考は(エロい方向限定で)千々に乱れる。あーライの唇可愛いな、キスしたいなー……などとぼんやり考えていたら、その唇がふいに動いて言葉を発した。
「兄貴、なにぼんやりしてんだよ?」
「へっ!?」
 言われて初めてはっとした。ライが目の前に立ち、呆れた顔で自分を見下ろしている。
「さっきから見てたら頭抱えたりにやにやしたり百面相しながらぼーっとしちまってさ。なんかあったのか?」
「いっいやっ、なんでもないっなんでも! 本当に大したことじゃないから!」
「……そっか?」
「そうそう!」
 そっか、とライは小さく呟いて肩をすくめた。
「それなら、いいけどさ。別にいいけど。……兄貴は大人だもんな」
「は?」
「なんでもねーよ」
 そう言って背を向けて、去っていこうとするライ。
 その背中に、寂しげな影を感じた。
 そう思った瞬間、グラッドは反射的に立ち上がりライの手をつかんでいた。
「ちょ……兄貴!?」
 混乱した声をあげるライの手を、「ちょっと来い」と言いながら引っ張る。
 ライは困惑顔ながらも素直にグラッドのあとについてくる。裏庭までやってくると、グラッドはライをぐいっと腕の中に収めた。
「……あに……」
「ライ。俺に言いたいことがあるならちゃんと言えって、いつも言ってるだろう?」
 グラッドが耳元に囁くと、ライはびくんと震えて、真っ赤な顔でうつむいてしまう。
「…………」
「俺はお前を大切にしたくて、幸せにしたくて生きてるんだ。お前が悲しんでるとこや、寂しがってるとこなんて見たくない。だから、言ってくれ。俺は鈍感だから言ってくれなきゃわかってやれない」
「…………」
「……そばにいる間くらい、存分に甘えてくれよ」
「………っ」
 ライがきっとこちらを睨む。その瞳が潤んでいるのを見て、グラッドの胸はずきゅんと疼いた。
「ライ……」
「……俺だって、そう思うんだよ」
「え?」
 ライは顔を赤くしながらも、きっとこちらを睨みつつ叫ぶ。
「俺だって兄貴がなんか暗かったりおかしかったりしたら心配するし助けにもなってやりたいって思うんだよ! だからどんなことだって聞きたいし俺で力になってやれることならなってやりたいんだ! だけど、兄貴は、大人だから……っ」
「……大人だから?」
「……一人で、なんでもちゃんとやれるのかなって、俺いらないかなって、なんにも言われなかったら、そんなこと考えちまうんだよ……」
「……ライ」
 ぎゅっと唇を噛んでうつむくライがたまらなく愛しくて、グラッドはくい、と顔を持ち上げてキスをした。わずかに血がにじむ噛み跡を、そっと舐めてライの唇を味わう。
「……っに、すんだよっ……」
「心配するな。俺はお前が必要だよ。料理作ってくれるからじゃないぞ。いやそれもあるけど、なによりお前が好きだから、大切だからできるだけそばにいてほしいって思うんだ」
「……兄貴」
「ライ……」
 お互い見つめあい、またキス。ちゅ、ちゅ、と何度も軽い口付けを落とす。だんだん目が潤み、ぽーっとした顔になってくるライにむらっとして、いかんいかんまだ昼だまだ俺たち両方とも仕事があるんだから、と首を振る。
「ライ」
 これが最後、とちょっとだけ濃いのをやる。舌を絡め、唇を吸い、ライの足の間に体を割り込ませ、体と体を擦り付けながられろじゅぷちゅぱっ、と。
 頭の中で数を数えること三十回。ほわーん、ぽうっ、と呆けたような色っぽい表情になっているライから、あーくそ名残惜しいこのまま一気に押し倒したいっ、と思いながらも体を離す。
「……今夜、な」
 耳元で囁いてくるりと背を向ける。ライから熱視線が浴びせられているのを感じながら、グラッドの中ではすでにむらむらむらむら、と下半身の欲望が怒涛のように燃え盛っていた。
 駄目だ、我慢できん。今夜は絶対めちゃくちゃ燃える。
 ていうか、今夜こそ咥えさせる!
 ぎゅっと愛用の誓いの槍を握って、グラッドはそう誓った。

 そして、時間は一気に飛んで夜。閉店間際に忘れじの面影亭へ向かったグラッドは(顔を見たら欲望を抑えられなさそうな気がしたのだ)、微妙にこちらから目を逸らすライに少し訝りながらも厨房で後片付けする姿をガン見しながら高速で夕食を食べた。
 ムラムラムラムラムラムラムラムラ、と背後からヤる気のオーラが立ち昇りそうな勢いでがつがつと夕食を食べ終え、つかつかと後片付けを終えたライに歩み寄ると、ライはカッと顔を赤らめ、きゅっと唇を噛んでグラッドを睨んだ。
 え、なんで睨まれてんの俺、と目を見開き足を止めると、ライはあっ言いすぎちまったかな(なにも言ってはいないが)→いやいやここで退いては、という表情の変化を経て、再びきっとグラッドを睨み言った。
「兄貴!」
「な、なんだ?」
 まさか今日できないとか言わないよな、女の子じゃないんだからあの日とかないよなっ!? とかなりうろたえながら答えると、ライは真っ赤な顔を泣きそうなものに変えて、ちょっと背伸びをして囁いた。
「風呂……入れないのは、やだからなっ」
 …………
「は?」
「す、する前にちゃんと風呂入らせてくれよっ! ……した後は、すんげー疲れるし、後始末とか終えたら眠くなっちまうし……」
 次第にうつむいてごにょごにょと呟くように声の高さを落としながら。
「……汗臭いままで兄貴とするの、やだし」
 ずっきゅーん。
 ぷちっと色欲に持ちこたえてきた糸が切れた。そりゃもー見事に、ぷちっと。
「わかった。じゃあ一緒に入ろう」
「へ?」
「ここの風呂もう沸いてるよな。一緒に入ろう」
「え、ちょ、兄貴、待てよ、待てったら!」
 ぐいぐいとライの腕を引っ張り、風呂場へと向かう。ライのところの風呂場は周囲を低い塀で囲っているだけの小さなものなので(客のついでに焚く従業員用だから)、のぞこうと思えばいくらでものぞけるというか声が聞かれることは確定なのだが、グラッドはそれよりももー辛抱たまらんという性欲の方が勝っていた。
 ぐいぐいと風呂場へと引っ張りこみ、「待っ……」などと往生際悪く口にするライの唇を唇で塞ぐ。舌を突っ込みかき回し、舌と唇を思いきり吸って、ライが「んんっ!」などと声を漏らすまで口内を蹂躙してから口を離した。
「あに……」
「ライ……ライ……」
 手早くライの上半身の服を引っ剥ぎ、肌を強く吸って跡を残す。白い肌を舐め回しながら胸の少しずつ大きくなってきた気がするほんのり桃色の乳首を吸い――
(って違う、ちがーう! 今日はライに咥えてもらう予定だったんじゃないかっ!)
 いまさら思い出してももう遅い。もはや流れはいつも通りにグラッドが全力で奉仕して体を開き突っ込んでゴー、という方向に向かってしまっている。
 それも全然オッケー、というか最終的にはそうなる気満々なのだが、が! それはそれとして咥えてもらいたい! ライにご奉仕してもらいたい! 自分の股間に顔を埋め恥じらいながらこちらを見上げるライが見てみたいのだ!
 言うか? いやでもな、いくらなんでもこの状況じゃ。いやだけど言わなかったら絶対欲求不満に終わるし。何発やっても。その自信あるし。でもここまでやっといてどうやってそっちの流れに……?
 いや、でも、だけどしかし。
「兄貴……?」
 悶々としながら固まるグラッド(脳内では転げまわりそうな勢いで悶絶している)に、ライが少し怯えたような顔で見上げながら問うてくる。とたん、ぽろっと口からこぼれた。
「ライ、咥えてくれ」
「は?」
 ぽかんと口を開けたライの顔を見てグラッドは内心「しまったァー!」と絶叫した。外した! そうだよな押し倒しておきながら『咥えてくれ』なんて普通引くって、どっ引きだよ! 年齢二桁近く違う二十四の男がよぉ! なに言っちゃってんだ俺ぇぇぇ!
 ライはぽかんとした顔のまま言ってくる。
「咥えるって、なにを? 今? なんで?」
「え、いやあの、つまり、ナニを……」
「……わけわかんねー………!」
 言いかけてライは固まった。どうやらどういう行為か思い当たったらしく、ぼっ、と顔を赤くする。
「え、えと、その、あれを、俺が?」
「ああ」
「や、やんなきゃ駄目……っつーか、それやったら、兄貴、嬉しいのか?」
「そりゃもうすっごく」
 緊張で固まってドキドキしながら無表情に言うと、ライは顔をますます赤くしながらうつむき加減に目を逸らしつつ言った。
「……なら、いいけど………」
 よっしゃあぁぁぁぁっ!! グッジョブ俺おめでとう俺ありがとう俺っっっ!!!
 内心歓喜の舞を踊りつつ、グラッドは勢いよく自分の服を脱いだ。
「え、兄貴も、全部脱ぐの?」
「ああ」
 視覚的感覚的にそっちのが楽しいし。
「ライも下、脱げよ」
「う、うん……」
 ライはもじもじしながらもそろそろとズボンを下ろしパンツを片足ずつ上げるやり方で脱いだ。その微妙にガキっぽい脱ぎ方がもう正直たまらん。
「……じゃ、頼む」
「うん……」
 風呂の腰掛に腰を下ろし、怒張した股間の一物を指差すグラッドに、ライは恥らいながらもうなずいた。ちらっ、ちらっとグラッドの顔を見上げながらそろそろと顔を股の間に下ろしていき――
 かぷっ。
「……っ」
 うおぉ、温かくて柔らかいライの口の中の感触ーっ!
 超高速で腰を動かしたいのを必死に堪えながら、グラッドはライを見下ろす。ライは想像通りときおりグラッドを見上げ恥じらいながらも、グラッドの一物をしゃぶっていた。
 時々考えるようにするのは自分のやられた時を思い出しているのだろうか。おそるおそる舐めたり吸ったり触ったりと行為を繰り返す。
 予想通りにあんまりうまくはない……がそれはそれでなんだかほっとしたような気がしたりもした。自分よりうまかったらグラッドに兄貴分としてちょっと問題があるのではという気もしてしまうし。
 興奮してきたのか「ん、ん」と呻くような声をあげ腰を揺らし、自分の股間に顔を埋めて一生懸命ご奉仕してくれるライ――
 グラッドは一分間それをガン見して欲情に耐えたが、一分が過ぎたとたん切れた。
「すまん、ライ」
「ん、う……?」
「ちょっと我慢しててくれっ!」
「ん、う、んううっ!?」
 がっし、とライの後頭部をつかみ固定し、勢いよく腰を前後に動かす。ライの柔らかくてぬめぬめとした舌と口腔粘膜がグラッドの一物を挟み、擦りあげる。一日欲情に耐えに耐えてきたグラッドの一物は、ほどなく限界を迎えた。
「う、イイ、ライ、イイぞっ、ライ、ライ」
「ぐ、う、んぐっ」
「なぁっ、顔に、顔にかけていいかっ?」
「んぐ、んう、うっ?」
「あーごめん駄目だっ、イくっ、イくっ!」
 じゅぴゅずりゅどぴゅっどぷっぴゅっぴゅっ。
 最初の方は口内に出してしまったが、大半の精液はライの顔にぶち撒けられた。
「げっほっ! ごほっ、げほっ、げっはっ……!」
「す、すまんライ、大丈夫か?」
 咳き込みながらライは涙目でこちらを見上げる。その顔と髪にべっとりと精液が撒き散らされているのを見て取り、ああ、咥えてもらえてよかった、顔射(=男の夢)達成! と一瞬うっとりする――
 もがすっと頭を殴られてそれはすぐ終わった。
 ライがふるふる震えながらこちらを睨んでいる。怒ってます、と書いてあるようなその顔に、グラッドは思わず固まった。
「あ、あの、ライ……」
「兄貴のバカッ! なに考えてんだよっ!」
 がすっ、とまた思いきり殴られる。いや本気痛いっつかマジ痛いんですけど、と思いながらもグラッドはぺこぺこと頭を下げた。
「すまん、悪かった、俺がやりすぎた! 気持ちいいことに流されすぎました! もうこんなことしない、ちゃんとライのこと気遣って優しくするから許してくださいごめんなさい」
「ホントだよ! なに考えてんだ兄貴のバカ、チンコから出したもん顔にかけるなんて汚ぇだろっ!」
「へ?」
 え、汚いとかそういう話? と思いつつも、ここはそういうことで流した方がいい、と瞬時に判断しグラッドはぺこぺこ頭を下げながらぷりぷりと嫌そうな顔で顔を拭うライをこっそり見つめ記憶した。ライは顔射嫌いみたいだから、今回のこの姿をしっかり心の中にとどめておこう。
 ていうか嫌そうな顔がかえって燃えるかも、などと内心にやけながら思っていると、ライにぎろりと睨まれた。
「なんか兄貴、嬉しそうじゃねぇ?」
「い、いやっ! そんなことはないぞっ!?」
「ホントかよ……あーもう、さっさと顔と頭洗わねーと……」
 ぶつぶつ言いながら少し冷め気味のお湯を手桶ですくうライ。グラッドは点数回復! とばかりに手を上げた。
「あ、じゃあ俺が洗ってやるよ。お前の頭」
「え? い、いいよ、ガキじゃねーんだから!」
「ガキ扱いしてるわけじゃないって。恋人同士の触れ合いってやつさ。ことの前に恋人に頭洗ってもらうってのも悪くないと思うぞ?」
「うー……」
 少し顔を赤くしながらも、ライはグラッドの申し出を許諾した。よし、とぐっと拳を握り締めながら、腰掛に座るライの背中に回りライが顔を洗い終わるのを待って頭からお湯をかける。
「……っ」
「ほら、じっとしてー」
 さぱー、とお湯で流してさくりとかき回すように髪を洗う。ライの髪の感触は猫の毛のように柔らかくしなやかで触り心地がよかった。石鹸を泡立てて髪をさかさかとかき混ぜ、またさぱーと流す。まるで親子みたいなことやってるな、と思うと少しばかりおかしかったが、まぁまだ兄貴と呼ばれているしさほど不自然なことでもないだろう。
 流すと目を閉じてぷるぷると首を振り雫を飛ばすライ。子供みたいだな、と可愛く愛おしく思えた。その感情に素直に従い、背中からがばちょとライに抱きつく。
「わっ、なんだよ兄貴」
「ん? いや、可愛いなー、好きだなー、って思ったら、ついな」
「なんだよ……可愛いって、女じゃねぇってのに、俺……」
「男だろうと可愛いもんは可愛い」
 お前のそーいうとこに俺は惚れてるんだし、という言葉はちょっと恥ずかしかったので言わないことにした。
 抱きついてすり寄ること三十秒。最初は純粋な気持ちでやっていた行為だったが、次第にグラッドはムラムラしてきた。
 ライの肌は男だというのにひどくすべらかで触り心地がよく、陽に焼けていない部分はどきっとするほど白かったり艶があったりする。そんな肌身を間近に見ながらライの背中の、尻の感触を体の前面全体で味わっているのだから、これは興奮しない方が嘘だろう。そう自分に言い訳しつつ、グラッドはさわさわとライの体のあちこちをまさぐり始めた。
「! ちょ、兄貴! どこ触ってんだよっ、ばか、風呂入んないとやだっつっただろっ!?」
「すまん、それまで我慢できそうにない。なぁ、一回終わったらちゃんと洗ってやるから……」
「ん、っう、やだ、よ、だって、んく、汗臭い……」
「俺はお前が汗臭くても全然構わないぞ。むしろ、お前の体の匂いだと思うと興奮する」
「なっ、バカ言ってんじゃ、やぁ、そこ、駄目だって……」
 おお蕩けてる蕩けてる、いい感じに蕩けてる、とグラッドはほくそ笑んだ。ライは(怒りそうなのでまだ言っていないが)感度が相当にいい。閨の技術には正直あんまり自信がなかったグラッドの愛撫でも(商売女と数回した以外に経験がないのだから仕方がない)、胸をまさぐったり乳首を軽くくりくりと弄ってやったり尻をさわさわと撫でてやったり男の徴を時々しごいてやったりするとあっという間にめろめろになってしまう。
 これって俺たちの体の相性がいいってことだよな、それとライが相当に俺のことが好きってことだよな、と内心でれでれに笑み崩れながら顔はあくまで格好をつけて涼しげにライの耳たぶを吸ったり噛んだりしてやる。ライはここも弱い。
「ん、あ、ひぁ……」
 ライの喘ぎ声にちょっと息を荒くしながら、右手で自分の上着をたぐり寄せてポケットから潤滑油を取り出す。家にはむろん箱で常備しているが、いざという時のために持ち歩いててよかった、と自分の先見の明に感謝しつつ口を捻り中身をとろりと手に取った。
 右手では忙しくライの体を愛撫しつつ、左手でそっとライの後孔を馴らす。最初に入り口を撫でるようにねっとりとした油を塗りつけ、つい、つい、と少しずつ優しく孔を押し広げていく。
「っ、う、ぅ……」
 ライが耐えるように唇を噛む。やはり後孔を広げられる感覚はまだ慣れないものらしい。耳をぺろりと舐めながら囁いてやった。
「唇噛むな。力抜いて、息吐いて。なんにも考えないで俺の指だけ感じてろ。ほら、こういう風に出し入れしてやったら、気持ちいいだろ?」
 入り口付近で軽く抜き差ししてやると、「はぁ……」と震えるような声がライの喉から漏れる。ああ軍学校で先輩から男同士のやり方教わっといてよかった! あの時は単なるエロ話だと思ってたけど! とグラッドは内心拳を握り締める。
 入り口の抜き差し、潤滑油の塗りつけ、指での押し広げを繰り返し、ライの後孔がどろどろになって三本楽に出し入れできるようになった時、それまで興奮に耐えてきたグラッドは我ながら欲情に満ちた声で「いいか?」と囁く。ライが真っ赤な顔で、こくんと力なくうなずくのに歓喜し、ぐいっとライの腰を引き寄せて挿入した。
「………!」
 ライの後孔は(ちょっと前まで処女だったのだから当然かもしれないが)相当にきつい。だが気合を入れて馴らした甲斐あり中はとろとろのぬとぬとで、内壁の襞がぐにぐにと絡みついてきて、おまけにグラッドを中へ中へと誘い込むようにぎゅっぎゅっと蠕動してくるのだから、グラッドとしてはもーたまらん状態になる。
 だがそこをライへの愛(と男の意地と長く楽しみたいという助平心)でぐっと耐えてゆっくりと中に挿し入れる。先端、竿、そして根元までゆっくりと――
「っあぅ……」
 四つん這いになっていたライの中に、グラッドの一物が根元まで入ったとたん、ライは呻くような声を出した。後孔がぎゅうっと締まり、グラッドの一物をぎゅむにゅにぬりゅりゅ、と愛撫する。
「……っ、動かすぞ」
 死ぬ気で三十秒耐えてから、グラッドはそう声をかけた。ず、ずる、ず、とゆっくりゆっくり、もっと激しくしたいっ! という欲望を堪えながらごく軽く抜き差しを繰り返す。
「っう、あう、あ、んうっ」
 思わず漏れてしまう、といったような感じでグラッドが腰を動かすたびにライは声を出す。もっとしたいもっとしたい、と欲望に滾る頭の中のライもちゃんと気持ちよくさせてやらなきゃ、という冷静な部分がライの前面、男の象徴に手を伸ばさせる。
 しゅっしゅっ、くりくり。まだ完全には剥けきっていない、当然ながら自分よりだいぶささやかなその徴。それを感じるようにしごいたり、カリの部分を弄ったり、穴のところをつついたりとやるたびに、ライの声が高くなり、後孔がぎゅっと締まる。
「あっ、うぁっ、あーっ……!」
「……っ、ライっ……!」
 まだ男になりきっていない、愛しい少年の感じている声。もう目が回りそうなほど可愛く愛おしくて、体を曲げてライの背中に、首筋に、耳元にキスを落とし舐めあげる。そのたびにライは「あーっ……!」と声を上げ、グラッドの堤防に少しずつひびを入れていく。
 ぐい、と無理やり顔を上げさせ、苦しい体勢で唇を奪う。ライの涙で濡れ、ぐしゃぐしゃになった顔。その中の、さっきまで自分のものを咥えていた唇に唇を触れさせ舌を突っ込み舌と唇を吸う。
 呼吸がうまくできなくなったのだろう、軽く咳き込んだので慌てて唇を離すと、今にも泣き出しそうに震える、頼りなげなか細い声で、「兄貴ぃ……」とねだるように囁かれた。
 そこで、堤防は見事に決壊した。
「ライっ!」
「あに、兄貴っ、あっ、あーっ……!」
 もはや遠慮会釈もない全力で腰を動かす。同時にライのものを握った手も勢いよく動かす。ライの最奥をずんずんと突き、内壁を勢いよく擦りあげ、ぱんぱんと音がするほどの強さでぐいぐいと腰を自分の腰に打ちつけて――
「くっ………!」
「あ、あ、あぁーっ………」
 グラッドは精液をライの体内に放出した。体が溶けそうなほどの開放感と虚脱感が全身を襲う。
 だが、ライへの愛(と男の意地と性欲)がライはまだイっていない、と気がつかせ、後孔に少しずつ縮んでいく一物を挿れたまま体にキスを落としつつ男の徴をしごく。ほどなくして、ライも「あ、や、あぁー……」と可愛い声を上げて射精した。
 はぁ、はぁ、とお互いの荒い息だけが風呂場を満たすこと三分。名残惜しかったが、ずるりとライから一物を抜き、座る体勢になってグラッドはぐったりとしているライを自分に寄りかからせた。
 そして口に、まぶたに、鼻に軽くちゅ、ちゅ、とキス。ほんわわわーんとまだ蕩けた顔をしているライに、「体洗うか」と声をかけると恥ずかしそうにうなずいた。
 それからもまた何度もキスを交わしながらお互いの体を洗い、背中を流し、そうこうしているうちにまたムラムラしてきてもう一回やって、また体を洗って後始末をして、もうだいぶ冷めたお湯に浸かり服を着て。
「また明日な」
 坂道の前でそう言って口付けると、ライも恥らうように目を逸らしながら。
「うん……また明日な」
 と言って口付けを返してくれたので、グラッドはたまらなく幸福な気分で駐在所へと戻っていったのだった。

 翌朝。グラッドがいつも通りに「よーっす!」と挨拶して店に入ると、厨房で料理をしているライから真っ赤な顔でぎっと睨まれた。ぶすっとした顔で食事を取っていたリュームもぎろりとこちらを睨む。セイロンはいつも通りだったが。
 え、なんだなんだ俺なんかしたか、と困惑しつつ、ライにそろそろと近づいて「あの〜……ライ……?」と声をかけると、怒りと恥ずかしさといたたまれなさが等分にこもった声で怒鳴られた。
「しばらく兄貴は出入り禁止!」
「……へ?」
 言うや身を翻して食堂に(おそらくは自分の分の)朝食をがすんと置き店を飛び出していく。なんだなんなんだなんでいきなり出入り禁止!? と呆然としているとリュームから尖った声をかけられる。
「グラッドにーちゃん。もー少し気を遣えよな。お客さんだっているんだからよ」
「え……」
「昨日。風呂場でヤっただろ」
「へ、なんでそんなこと」
 だんっとリュームは立ち上がり、ばんっとテーブルを叩いた。
「声! だだ漏れだったんだよ!」
「………あ」
 ざーっと血の気を引かせるグラッドに、セイロンがいつもと変わらぬ笑みで言う。
「仲睦まじいのはけっこうなことだが、周囲の状況ももう少し考えることだな。聞こえていたことを知られた店主殿の顔は、それこそ悶死しそうなものであったぞ、あっはっは」
「…………」
 十秒間呆然と硬直し、グラッドは駆け出した。
「ライっ! ライーっ! すまん俺が悪かった許してくれぇっ!」

 ライは必死に謝るグラッドをその日一日無視し続けたが、翌日泣きそうな顔で「俺も、ごめん……」と言いながら抱きついてきたので、猛烈に燃えてその日は四回やった。

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