この作品には男同士の性行為を描写した部分が存在します。
なので十八歳未満の方は(十八歳以上でも高校生の方も)閲覧を禁じさせていただきます(うっかり迷い込んでしまった男と男の性行為を描写した小説が好きではないという方も非閲覧を推奨します)。



グラッド兄貴とライのらぶらぶ生活・その2
 トレイユ駐在武官グラッドと、忘れじの面影亭主人ライは、現在も恋人関係を継続中だった。周囲に公害のように愛を撒き散らしながら、現在もらぶらぶ蜜月の真っ最中である。
 当然朝も昼も欠かさずグラッドはライに会いに行くし、夜の方ももちろんばっちりやることをやっている。毎夜毎晩とは言わずとも、限りなくそれに近い形で新婚(っぽい)生活を満喫していた。
 もちろん仕事には影響を出さないように気をつけてはいるのだが、ライはグラッドが誘うとなんのかんの言いつつ乗ってきてくれる。なのでついつい夜は気合が入り、うっかり入りすぎて睡眠不足に陥ることもしばしばだった。
 だがそんな(少なくともグラッドは)とっても幸福な生活の中で、愚かしいとはわかっているのだが。
 グラッドの中には、ひとついけない欲望が萌してきていた。

 ドキドキしながらグラッドは全速力で自分の部屋の中に駆け込み、戸を閉めた。他人に自分がこんな服を持っているのを見られたらなんと噂されるかわからない。
 グラッドははぁはぁと軽く息を荒げながら、買ってきた服を見た。白いレース、ふんわり広がるふりふりのスカート。生地自体は青みが強く、白いレースの輝きをよりいっそう引き立てている。寸法は小さめで、当然のことながらグラッドは着れない(そもそも着る気も微塵もないが)。
 つまり、これは。
(とうとう買っちまった……ライ、着てくれるかな……)
 ほう、とため息をつきつつグラッドは思った。
(初めて見た時から一目惚れだったもんなぁ……ライがこれ着たら絶対可愛い! って)
 要するに、そういうことだ。
 グラッドはこのフリフリのパフスリーヴとか入ってる実用性に乏しいようでブロンクス家のメイド服にちょっと似ていたりもするワンピースを、ライに着せたかったのだ。
 当然着せるだけでなくあんなこととかこんなこととかもさせてもらえたらなー、と思っている。着たままで。だって可愛い恋人が可愛い服を着ていやらしいことをさせてくれるというのは男児たるものなら誰もが持つ夢ではないだろうか!?
 しかもついでに言うなら女性用下着まで買ってしまった。横にワゴンで売ってたからついでに……いや違う、正直になれ男だろうグラッド。フリフリのスカートの下からのぞくのが男物のパンツなんてがっかりだと思ったと正直に認めるんだ(最近グラッドはライの色気もそっけもない三つで百バームの男物パンツ姿もこれはこれで……と欲情を持って見つめられるようになったが、それとこれとはまるで別の話だ)。
 ほんのりピンク色のフリフリでしっかり筋肉はついているくせに骨格が華奢なライぐらいでなければ男じゃその気になっても穿けないだろう小さなパンティ。これを手に取った時は正直店の人の視線が死ぬほど痛かったが(当然人のいない閉店間際を狙ったものの買う以上店の人とは顔を合わせなければならない)、それでも。
 ど――――っ、してもライにこの服とパンティを着せてやらしいことをしたい! とこの服(と、パンティ)を見た瞬間思ってしまったのだ。
 しかし、どうやって着けてもらおうか。ライも当然男だから、女装は普通嫌がるだろう。グラッドだって女装して、なんて言われたらそれがライにだって全力で回避する方向で対処する。
 だが、自分はライにこのちょっぴりメイド風ワンピース(以下メイド服と省略)とパンティを着けたライとヤりたい。是非とも。だってそりゃー乏しい生活費を削っても買ったブツなんだから!
 ならばどうすべきか。グラッドはうーん、と考え込んだ。

「ライ……今日は、俺の家に来ないか?」
 見送りに店の外に出てきたライのこめかみに、軽くキスをしざまにそう囁くと、ライは顔を赤くしながら「……別に、いいけどよ」と答えてくれた。
 よし、ここまでは想定通り、とこっそり拳を握り締めながらライと手を繋いで駐在所へ向かう。もう夜も遅い、人に見られたところで遠目ならわからないだろう。
 駐在所に入ったら当然即座にぐいっと体を引き寄せてキス。ちゅ、と触れて唇と口の中を舐めて軽く噛んで。しばらくちゅ、ちゅぶ、ちゅば、と時に浅く時に深くキスを繰り返しているうちにライがぽやんとした顔になってくる。
 ちょうどよく蕩けてきたな、と内心ほくそ笑みながらひょいとライを抱えて寝室に移動する。こういう風に軽々と持ち上げられるっていうのはいいよなぁ、体格差万歳! と思いつつこっそりにんまりとして。
 ぽわんとした顔でこちらを見つめるライに辛抱たまらなくなっていますぐ押し倒したくなってしまうが、そこはぐっと堪えてそっとライをベッドに座らせる。ぽわんとしながらもなんでだろうと問いかけるようにこちらを見上げるライに、グラッドはできるだけ優しい笑顔を作りつつ言った。
「なぁ、ライ。今日はちょっと、変わったことしていいか?」
「変わった、こと?」
「ああ。たまには気分を変えてするのもいいんじゃないかな〜、って」
「……別に、いいけど……」
 ぽうっとした顔でこちらを見上げ言うライ。
 っしゃ! とグラッドはこっそりガッツポーズを取る。とりあえず言質は取った。
 ちゅ、ちゅ、と頬に額にキスを落としつつ服を脱がせていく。この一ヶ月でライの服の脱がせ方はほぼ完璧に会得した。
 エプロンと一体化している上着を脱がせて、薄い胸板にちょこんとついたさくらんぼ色の尖りに吸いつきたくなりながらもぐっと我慢。カボチャパンツ風のズボンを下ろし、ちょろりとのぞいていた下着を脱がし、その間も顔と唇へのキスは絶やさない。
「ん……」
 気持ちよさそうな顔でグラッドをぼんやりと見つめるライ。よし、今のうち! とグラッドは気合を入れてベッドの下に入れておいた例の服を取り出す。
 そこまでやって、気がついた。
 どーやって着せるんだ、この服!?
 当然ながらグラッドは女性用ワンピースは着たこともなければ着せたこともない。着用方法がさっぱりわからないのだ。なんとなく頭から貫頭衣みたいにかぶるのかな、とは想像がつくがそもそも頭が襟を通過しそうにない気がしてしょうがない。襟元のリボンをどうかすれば大きく広がるのかもしれないが、一度解いたら二度と結び直せなさそうな気がする。
 ああどうすれば!? と服を前に頭を抱えていると、ライが不審そうな声で言った。
「兄貴……なに、やってんだ?」
「えっ!? いや、その、あはは!」
「……なんだよ、その服」
 もう忘我の状態から回復してしまったのかーっ、と悔しがりながらも不審そうな目でこちらを見るライに、グラッドは仕方ない、とため息をついた。なし崩しのうちにさっと着せて寝技でごまかすつもりだったのだが、ここは真正面からおねだりした方がいいだろう。
「ライ、実は……」
 この服着てさせてほしいんだ、とぶっちゃけたところを言うと、ライはぽかんとした顔になってから顔をかーっと赤くしてぎっとこちらを睨み怒鳴った。
「やだよ! なに考えてんだ兄貴!?」
「え、いや、まぁ、そのだな、男として恋人が可愛い服着てやらしいことさせてくれたら嬉しいなと」
「やだっつってんだろ! つーか、なんで女装なんだよ!? 可愛いもクソもそれ女物だろ! スカートじゃんか! 俺は女装なんてぜってーやだからな!」
「いや、その、そういうお前の気持ちはわかっちゃいるんだが、そこをひとつなんとか」
「なるか! そーいう服着られる恋人がほしいんだったらなぁ、リシェルでもミントねーちゃんでも選べばいいだろっ!」
「……え」
 これは、もしかして。ヤキモチというやつ? 自分が男だから女にはかなわないと思っちゃう、みたいな。
 自惚れかなーつかそーだとしてもどうやってなだめりゃいいんだろう、とドキドキしつつも、真っ赤な顔でうつむいて震えているライを見ていると可愛くてたまらないと思えてしまう。とりあえず触ってもいいかな、と肩をそっと抱いて、小さく囁いてみた。
「ライ。言っておくけどな、俺は女の恋人がほしいわけでも、お前に女になってほしいわけでもないぞ」
「……嘘つけ。じゃあ、なんで……」
「なんていうかな……男のお前がああいう服を着て、恥じらったりするところとか、似合ったり似合わなかったりする微妙な……まぁその危うさ? みたいなもんを楽しみたいというかなんというか」
「は? わけわかんねぇんだけど」
「あーそのつまりな、女装したお前と普段とは違うやらしいことをしたいんだ! これはいわば男の夢、ロマンなんだぞ、ライ!」
「………マジでわけわかんねぇ……」
 うつむきながらぽそりと言うが、耳まで染まったその赤らみ具合は、怒りや悔しさではなく恥じらいに変わっていることをグラッドは理解した。ちゅ、と耳元にキスをして、優しくかつ熱意をこめてかき口説く。
「な、頼む、着てくれよ。俺はいろんなお前を記憶に残しておきたいんだ。これ着たライとできたらすごく嬉しいって思ったんだ。一回でいいから、な、思い出のひとつと思って、な、一回だけ」
「…………」
「やってくれたらなんでも言うこと聞くから。な、頼む、ライ」
「…………」
 ライはだいぶ長い間黙っていたが、やがてぼそりとひどくぶっきらぼうに、けれど顔を真っ赤に染めながら言った。
「一回、だけだからな」
 うっしゃあっ!
 こっそりそう拳を握り締めながら、グラッドはそんな様子などおくびにも出さず笑顔で耳元にキスを落とし「ありがとな」と囁いたのだった。

「………着た、けど………」
 仏頂面を赤く染めて言うライに、着替え終わるまで部屋に入れなかったグラッドは思わず目眩を起こしかけ、危ないところで踏みとどまってズビシ! と親指を立てた。
「いい。めっちゃ可愛い」
「……………」
 真っ赤になってそっぽを向くライを上から下まで眺め回し、くっは〜などと感嘆の息をつきつつグッジョブ俺! と拳を握り締める。
 実際ライはめっちゃ可愛かった。丈の長いスカートからは半ズボンと違いミルク色の足はちらりとしか見えないし、露出度自体はむしろ減っているのだが、シックでありながらフリフリという可愛らしいその服をいやいやながらも着て、恥じらいながらちらちらこっちを見てくれているというそのあどけないかわゆさが正直たまらん。
 思わず一気に押し倒しかけて、ぴたりと止まった。小声でこっそりライの耳元で訊ねてみる。
「なぁ、ライ。ちゃんと渡した下着つけてくれたか?」
「………っ! やだよ、あんなの! 女の下着だぞ、なに考えてんだよ兄貴の馬鹿!」
 あ、やっぱりそこまでは思いきれなかったか、とがっくりしつつ、グラッドは食い下がった。ここで退いては男じゃない。
「なぁ、頼むって。せっかく可愛い格好なんだしさ、下着の方もそれに合わせた方がつりあい取れるだろ?」
「やだっつってんだろ! なに考えてんだ、正気か兄貴!? あんなもん俺が穿いたって笑いもんにしかならねーじゃねーか!」
「見るのは俺だけだから! 他の誰にも見せないし言わないから! な、頼むって」
「たりまえだっ、でなきゃこんな格好するか! 俺は兄貴が見たいって言うから……第一女の下着なんてなんで穿かなきゃなんないんだよっ、おかしーぞ兄貴っ!」
 それを言われると辛いものはあるのだが、しかしそれでもグラッドは必死になって押した。
「ああ、わかってる。でも俺はそれでも見たいんだ! この街を離れる前に、ひとつでもお前の姿を脳裏に焼きつけておきたいんだ! だから頼む、ライ、大好きなお前の可愛い姿をひとつでも多く見たいんだ……!」
「……っ」
 ライは真っ赤になりながらも、ぐっと奥歯を噛んでグラッドの言葉を聞いている。そしてあ、駄目かな? と内心腰が引けるグラッドに、ぶっきらぼうに言った。
「うしろ、向いててくれよ」
「は?」
「こっち見たらぶっ殺すからなっ! ぜってー見んなよ!」
「はいっ」
 おお、これは、もしや、もしかして! と目を輝かせながら後ろを向く。ごそごそ、と衣擦れの音が否が応でも想像力を刺激し、思わず鼻息を荒くしているとすぐに「もー、いいよ」と力のない声がかかった。
 音速で振り向くと、ライは真っ赤になって、ひどく頼りなげというか、落ち着かなさそうというか、身の置き所がなさそうな顔で立っていた。頭に血が上っているのか少しふらついているが、体が少しでも揺れるたびにびくりとして姿勢を正す。きっと下着の中のアレが擦れてびくびくしてるんだ、と思うとカーッとグラッドの頭にも血が上った。
「穿いてくれた?」
 情熱のあまりかすれる声で訊ねると、ライは真っ赤な顔のままこくんとうなずく。うおぉぉかわえぇぇっ、と叫びたいのを堪えて震える声で笑って言ってみせた。
「な、穿いてるとこ、見せて」
「は……?」
 ぽかんとするライに、グラッドは一見余裕ぶって笑ってみせながら、内心はかなり必死で繰り返す。
「穿いてるとこ、見せてくれよ。スカートまくり上げて、あの可愛い下着穿いてるとこ、俺に見せて」
「な……なに、考えてんだよ……!」
「ライのことだよ」
 真剣な顔を作って言うと、ライは言葉に詰まった。耳まで真っ赤にしてうつむくライに、グラッドはできるだけ低い声で、ライがどきりとするように「な、お願い」と囁いて耳元にキスをする。そしてそのままちゅくちゅくと耳たぶをしゃぶったり軽く噛んだり唇で挟んで擦ったり、と可愛がってやる。全身性感帯のライは、こういう風に可愛がってやるとライはいつもめろめろになって忘我状態になってくれるのだ。
「な、頼むよ。お願い。俺は、ただ可愛いライをいっぱい見ておきたいだけなんだよ。な、頼むって」
「ん、う……」
「聞いてくれたらなんでもお願い聞くから! な、頼むよ」
「………っ、う〜」
 ライは気持ちよさと恥ずかしさに潤んだ瞳でこちらを見て、「わかったよ……」と呟いた。
「ライっ」
「だけど、一回だけだからな! 一回やったらもー二度とやんないからな! 絶対だからな!」
「ああ、それでも嬉しい! ありがとな、ライ」
 ちゅ、と唇に軽くキスをすると、ライは顔を赤くしてそっぽを向く。
 それから改めて向き直った。期待を満面に押し出しながらライを見つめるグラッドに、ライは顔を染めながらスカートの裾をつかみ、しばし逡巡ののちそろそろと裾を上げた。
 ああっ、俺の可愛い恋人が俺の目の前でスカートをたくし上げてくれている! と思わず感涙にむせびつつもガン見する。ライが真っ赤な顔で(しかし泣きそうにかすれた声で)グラッドを睨みながら告げた。
「こんなことしてやるの……っ、兄貴だけなんだからな……!」
 ぶふっ、と鼻血が出たような感覚に陥り、グラッドは思わず鼻の付け根を押さえた。もちろんそれは錯覚だったが、感覚としてはそのくらいの勢いだ。ライの奴め、いつの間にこんな男の夢を直撃するような台詞を言えるように……とこっそりもう一度感涙にむせぶ。実際、スカートをたくし上げ腰周りを可愛らしい下着に包み、顔を真っ赤にしながらこちらを睨むライはもー壮絶なまでに可愛かった。
 一人寝の時のためにしっかり脳裏に焼きつけておこう、とガン見しつつ、下着の盛り上がりに思わずにやりと笑みを浮かべてしまった。
「ライ……興奮してるのか?」
「なっ」
「ここ、大きくなってるぞ。おまけに先の方、ちょっと濡れてる」
 さわ、と盛り上がっている絹の下着にそっと触れる。絹のすべらかな感触が心地よい。あ、とライがかすかに声を漏らした。
 その声が楽しくて、さわ、さわと絹ごしにライの男の徴を撫でてやる。ふぐりの部分を揉んだり、先端の濡れている部分を掌でぐりぐりと擦ってやったり。そのたびにライは顔を歪め、あ、あ、と声を漏らす。
 うー楽しい、と思いながら唇を噛んで健気に快感に耐えているライ。スカートをたくし上げながら俺の言うこと聞いていろいろさせてくれるライ! ああこれは本気で男の夢! と燃え上がっていると、ふいにちょっといけない欲望が兆してきてしまった。
「やらしいな、ライ。女装して、それ俺に見られて興奮してるんだな? 先っちょ濡らして、ちんちんこんなにおっきくして」
「な……んな、わけ」
「そんなやらしい子にはお仕置きしなくちゃな」
 ひょい、とたくし上げられたスカートの中にもぐりこむ。「な!?」と叫ぶライに、低く、できるだけ迫力のある声で告げた。
「ちゃんと上げてろよ?」
 そしてかぷ、と絹の可愛らしい下着の上から下着を突き破らんばかりに大きくなっているライの男性自身を口に咥えた。
「なっ、なにやってんだよ兄貴!? な、んな、なんでパンツの上から?」
「んぐ、パンツの中に出させてやろうかと思ってさ」
「はぁ!? ちょ、や、あ……」
 本来なら生で咥えてやりたいところではあるが、下着の上から(しかも女物フリフリの)というのも微妙にもどかしくていい。唾をつけてちゅばちゅぶと下着ごと口の中でしごいてやると、みるみるうちにライのそれは大きく固くなっていき、小さな下着を押しやり、先端がわずかに上から露出する。
 うう可愛い、と思いながらも舌で下着の中に押し込める。せっかく企んだのに外に出されてはちょっと悲しい。
 ちゅばちゅば、と下着ごと口の中に含み、吸い、下着を利用してしごきあげる。ライは「あ、あ」と喘ぎ声を漏らしながら少しずつ手を下ろしてきてしまうのだが、そのたびに「ちゃんと上げてろ」と言うと健気にスカートを上げてくれる。
 下着が唾と先走りでしっとり濡れて、ライの小ぶりな男根にぴったりひっつき、くっきり形をこちらに見せてくれる。グラッドはにやりと笑って、下着の上から後ろの方も弄りつつちゅぶちゅぶちゅば、と激しく口と舌と頭を動かす。
「……っ、くあ……!」
 びゅく、ぴゅく。熱いものが下着の中に放たれた。よし、小野望達成、とにんまりしていると、ぱかんと頭を叩かれた。
「っと、なにすんだよ、ライ」
「なにすんだよ、じゃねぇだろっ! なに考えてんだよ、兄貴のバカっ!」
「なんだよ、そんなに下着の中に出すのが恥ずかしかったのか?」
 スカートから顔を出してにや、と笑ってやると、ライは顔を真っ赤にしてまたぱかんとグラッドの頭を殴った。だが力がろくに入っていないので痛くはない。
「兄貴の、ばかやろ……」
「ああ、すまんすまん悪かった。今度はちゃんと、顔見せながらやってやるからな」
「ばっ……」
 立ち上がりちゅ、とキスをしてやり)耳たぶをこちゃこちゃと弄ってやると、ライはまたぽわんとした顔になってくる。
 それからそっとライをベッドの上に押し倒し、リボンをするりと解く。それでも胸の尖りが見えないのでぐいっと引っ張ってちょっと胸元の布を裂いた。ライがびくん、と震えて少し怯えたようにこちらを見たので、グラッドは優しく笑って頭を叩いてやる。
「心配しなくても痛くしたりとかしないって。ただ、着たまましたいからちょっと工夫が必要なだけで」
「工夫、って」
「ちょっと腰上げて」
 少し怯えながらも言われるままに腰を上げるライ。グラッドはベッド脇のテーブルからいつも使っている潤滑油を取り出しつつ、する、と足から抜けない程度に女下着をずらした。
 そしてぐいっ、とスカートごと足を持ち上げ曲げさせて、指にたっぷりと潤滑油をつけ後孔に挿入する。
「っ……」
「ごめんな、この体勢苦しいよな。できるだけ手早く済ませるから」
 ライの顔と女装姿を真正面から見たいからこの体勢で馴らすことにしたって気付かないといいなぁ、と希望的観測をしつつも、一ヶ月ほぼ毎日やってきた通りに手は素早く動く。周りを撫でて、入り口にそっと挿し入れて、潤滑油を塗りこめながら少しずつ広げて。
 ライの後孔も少しずつ広がってはいるが、若さゆえかやはりまだまだ狭い。潤滑油をつけて優しく押し広げてやらなければ指もなかなか入らない。そしてそんな狭い孔を広げてやる過程が楽しく嬉しいグラッドだったりした。
「ん……う」
「苦しいか?」
「……ちょっと。でも、平気だぜ」
 に、と笑ってみせるライが愛しくて、ちゅ、とわずかに皺の寄った眉間にキスを落とす。こめかみに、頬に、唇に。軽くちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを。
 そして右手は後孔を馴らしながら首筋に。軽く吸ってやると「っ」と小さく声を漏らして震える。あーしょうがないなーライは本当全身性感帯なんだからー、と内心にやにやしながらあくまで顔は真面目にキスの位置を少しずつずらし、破いて開けた胸元へと移した。
 女物のレースのついた胸元からのぞく平たい胸とさくらんぼ色の尖り。その情景はたまらなく欲情をそそるものだった。ちゅ、と右の乳首に口をつけ、じゅっと吸ったりつんつんと舌でつついたり周りを舌でなぞったりそれから歯で軽く噛んでみたりと優しくいじめてやる。左の乳首は左手で、捏ねたり引っ張ったりつぶしたり。そういうことをしていると少しずつライの乳首は勃ち上がってくる。
「ん……あっく……んっ」
 必死に抑えても出てしまう声に顔を歪めるライ。その苦しそうな恥ずかしそうな顔がたまらなくそそる。最近ちょっと乳首が大きくなってきた気がするなー、それってやっぱ俺が弄ったからかな、と内心はでれでれに笑み崩れているがそれでも顔は真面目に左の乳首も口に含んで弄ってやったりしている。
 そうこうしているとだんだん一回出したライの男の徴も大きくなってくる。スカート穿いて、女物の下着穿いてるのにこんなにおっきくなっちゃうんだなー、とその倒錯的な光景を内心にやにやしながら見つめた。
「くぅ……っん、兄貴、なにじろじろ見てんだよっ……!」
「え、いやまぁ、その……可愛いな、って思ってさ」
「っ、馬鹿にすんな!」
「いや馬鹿にしてるんじゃないって。なんていうか、そのな」
 ここは一発ライの心を蕩けさせてしまうような睦言を放っておく場面か!? と気合を入れて、グラッドはできるだけ自然に笑ってみせた。
「俺の手で感じてくれてるお前は、かわいいよ」
「っ……」
 ライは顔をカッと朱に染めて絶句し、それからぷいっとそっぽを向いた。
「なに言ってんだよ……恥ずかしいこと言うなよ」
 え、恥ずかしいだけだったか今の台詞!? と内心おろおろするグラッドに、ライはそっぽを向いたままぼそりと告げる。
「んなこと言ってる暇があんなら……早く、しろよ」
「っ……」
 耳まで朱に染めながら、破かれた胸元からぷっつり勃った乳首をのぞかせながら、乱れたスカートの裾から大きくなった男性自身を包んだ下着を見せながらのその台詞に、グラッドの理性はぷっつーんと切れた。
「ライ……っ!」
「っ、あに、きっ」
 超特急でズボンからもう勃ちまくっている自身を取り出し、足とスカートを持ち上げながらぐいっと挿入する。無理な体勢で苦しませているのはわかっていたが、それでもグラッドは真正面からライと繋がりたかった。
 は、は、と荒い息をつくライの後ろに、ず、ず、ぐいぐい、と少しずつめり込ませるように挿れていく。そのたびにライは喘ぎとも呻きともつかない声を上げた。
「ライ、ライ……くっ」
「っ、は、あに、うぁっ」
 締まりのいい後孔に搾り取られそうになるのを必死に堪え、惑乱しながらもこの一ヶ月で学んだライのいいところを突き、前を触った。絹の下着のすべらかな手触り、精液で濡れてぺっとりとした感触を乗り越えると、ライの性器の固さと熱が伝わってくる。
 格好はややクラシカルなワンピース、下着も女もの、とはたから見たら女を犯してるとしか思えない格好なのに、前にはちゃんと男の子の徴がついてる。女の格好してる男の子を、ライを犯してる。
 その倒錯的な状況を目と手で、指先で感じ、グラッドは一気に燃え上がった。
「ライっ、ライっ、ライっ……!」
「く、あ、に、う、く」
 スカートの中に打ち付けるようにして腰を動かし、ライの胸に、首に唇に口付けを落とし、ライの性器を腹で捏ね上げ。ぎゅっぎゅっ、と自身を絞り上げるライの後孔に、ほどなくしてグラッドは射精した。
 どくんどくん、とライの中に精液を放つ快感をしばし震えながら味わい、あ、まずいライがイってないじゃないか、と自身をライの後ろに入れたまま乳首やら前やらをいじると、「っ……」と息を詰めるような声とともにライも射精した。
「大丈夫か? 体痛いとことかないか?」
 体を拭いてやりながら訊ねると、ライは仏頂面で答えた。
「ケツとチンコが痛い」
「うぐっ」
 途中でちょっと我を忘れた自覚のあるグラッドは、罪悪感をもろに刺激され呻いた。
「す、すまん……痛かったよな、俺のせいだな、本当にすまん。お前があんまり可愛くて我を、っていや言い訳しちゃいかんな、本当にすまん。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
 ベッドの上で思わず手をついて謝ると、ライはわずかに苦笑してみせた。
「いいって、別に。俺も気持ちよかったし。兄貴にされることなら、俺はちょっとくらい痛くても別にいいんだよ」
「ライ……」
「だからさ、なんつーか、その。……好きだぜ、兄貴」
「ライ……っ」
 照れくさそうな笑顔に思わずまたキスをして、「俺も、俺も好きだぞ、ライ!」と熱っぽく囁いているとまたどちらからともなく気持ちが盛り上がってきてそのままもう一回やった。
 結果、ワンピースも下着も再起不能なまでにびりびりになってしまったが、グラッドは記念にとっておくことにした。一人寝が寂しい時に助けになるかもしれないし。
 一応ライに知られたらまた「変態!」と怒られそうだという自覚はあったので、こっそりとではあったが。

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