難しい、大切なきずな
「はぁ……」
 ライはぐったりとベッドに横たわり、息をついた。疲労がどっしりと肩にのしかかっている。
 今日も忙しかったが、疲れているのはそのせいではない。食事の客も泊り客も多かったが、そんなことにはもう慣れている。もちろん、別に客が普段よりひどく多かったわけでも、厄介事が起きたわけでもない。ただ、少しばかり気を遣っただけだ。グラッドに。
 いや、気を遣ったというのはおこがましい。グラッドにしてみればまるで心当たりのないことだろうし、自分が勝手にやっていることでそんな言い方をされても迷惑だろう。
 だが、それはわかっていてもライの体には疲労がのしかかる。気持ちを伝えるのを抑えるということがこれほど体力を使うとは思わなかった。自分はここまで感情直結型だっただろうか。
 一人の家に戻るのがどんなに嫌でも、それを誰かに言おうと思ったことはなかったのに。ライにとって苦しい気持ち、辛い感情というのは、こっそり隅に包んで一人で始末するべきものだった。だって誰だってそんなもの見たくはない。自分は誰にも迷惑をかけたくないのだから。
 それでも情けないことに、自分は何人もの人にすでに迷惑をかけてしまっている。主にリューム関連のことでだけれど。
 迷惑をかけられてもいい、と言ってくれる人もいる。グラッドを筆頭に。ちょっとくらい迷惑をかけられても気にしないと。でもそれはやっぱり違う、とライは思う。自分は誰にも迷惑をかけるわけにはいかない。みんなにいい思いだけを与えていたい。嫌われたくない。
 自分には、守ってくれる人なんて誰もいないんだから。
 どんどん暗い方向に行く思考に舌打ちして、ライはのろのろと立ち上がった。少し休んだんだから、残りの寝る前の仕事を済ませなければ。風呂に入って、歯を磨いて、その後始末をして、それからようやく――
 と、足音がした。廊下の方からだ。
 ライの心身は一気に警戒態勢に入った。この家は夜もほとんど開けっ放しだが小さい街だし、ライの腕前は知れ渡っているから泥棒が入ることなどこの数年はアカネの一件ぐらいしかない。となれば流れ者かはぐれ召喚獣か、といつも持ち歩いている武器を手に廊下へ出る。
 とたん、目を見開いた。
「よおっ! 来てやったぜっ!」
 青い髪の、自分より頭一つ以上小さいものがたたっと駆け寄り、抱きついてくる。
「リ……リューム!?」
 仰天しつつも腕を回してやるライ。そこに笑みを含んだ声がかけられる。
「店主殿、なにもそこまで驚かれることはなかろう。我らにいつでも店に遊びに来いと言うたのは店主殿であろう?」
「セイロン!?」
 驚きつつ残りの二人や一緒にラウスブルグで暮らしているはずのエニシアたちもいるのかと周囲を見回したが、セイロンは笑いながらそれに首を振った。
「残念ながら此度こちらに参ったのは我らのみだ。我はついでがあったので、守護竜殿を送り届ける役目を買って出たのだよ」
「送り届けるって……お前ら、ラウスブルグの方はどうしたんだよ?」
「うむ、それなのだがな。ラウスブルグを以前と同じ場所に落ち着けてからいろいろと調査してみたところ、我々とエニシアたちの手持ちのサモナイト石を集めると、相当な量になることがわかってな。守護竜殿の知識を用いて魔力に変換することで、メイトルパとの往復の際に溜まった魔力も加えれば、半年から一年は守護竜殿が魔力を供給せずとも問題ないであろうという結論に達したのだ」
「え……マジかよ!?」
「おうっ」
「うむ。そこで本格的に守護竜としての生を生きる前に、しばしの猶予期間を作ってはどうかと我ら御使いが提案してな。その間の時間を守護竜殿は店主殿と共に過ごされることを選択された」
「べっ、別にオレはアンタがいるからここに来たわけじゃねぇぞっ!? ただなぁ、久しぶりにアンタの飯も食いたかったし、この街にはほとんど故郷っていうくらい慣れ親しんでるし、暇つぶしに店とか手伝ってやっても、まー、いいかなー、って……」
 ライは上目遣いでちらちらとこちらを見ながらぽそぽそと言うリュームに、思わず吹き出した。こいつは、自分の息子はまったく変わっていない。それに安心するのはよいことではないのかもしれなかったが、ライの心を温かくする事実には変わりなかった。
「ったく、しょうがねぇなぁ、お前は。久しぶりに来た時くらいちったぁ素直になれねぇのかよ」
「う、うるせぇっ!」
「あっはっはっは。……そして我は我の用事があって、この街を訪れたのだ」
「え……用事?」
「うむ。我が龍妃さまというお方を探しているのはすでに申したであろう?」
「ああ、イスルギさまだっけ? セイロンの一族が祭ってる龍神さまに言いつかった使命なんだよな」
「ああ、その通りだ。延び延びになっていたが、我は諸々のことが一段落つけば御使いを辞して探索の旅に出る予定であった。だが、ほれ、店主殿の懇意にしていたシャオメイとかいう占い師。彼女に事情を話したら、協力してくれることになったのだよ」
「へ? シャオメイ? そりゃあいつはミョーに物知りだし、いろいろすげーことできるけど、だからってなんで」
「彼女は『龍神』だよ。おそらく、先代よりもはるかに永い歳月を過ごされている御方だ」
「!」
「店主殿も、薄々とは気づいておったのではないのか?」
「まあ、普通じゃないとは思ってたけど……」
 なるほど、彼女の驚くべき魔力も特殊な能力も、至竜だという理由があるならば納得がいく。
「竜の道は竜に訊け!  調べてあげるからここで待ってなさい……そう言われてしまった手前、待つしかあるまいて」
「ははは……」
「商売仲間に、情報を扱う人物がいるとも言っておられたし、闇雲に捜すよりもきっと、そのほうがよかろうと思ってな」
「なるほどな……あ、おい。ってことはセイロン、しばらくこの街にいることになるんだよな?」
「ああ、そうなるな」
「……読めたぞ?  さては、セイロン。また、ウチに居候するつもりだな!?」
「おお、さすがは店主殿。話の手間が省ける!」
「あのな……」
「……ダメかね?」
「……ったく、仕方ねぇなぁ。その代わり、ちゃんと食べるぶんは働いてもらうからな?」
「無論、心得ておるとも。大船に乗ったつもりで任せてくれたまえ。あっはっはっは♪」
 自分の腕の中で面白がるような顔で話を聞いていたリュームに、くるりと顔を向ける。
「お前もだぞ、リューム」
「オ、オレもかっ!?」
「当然だ。働かざる者食うべからず! 以前は隠れてなきゃならなかったりで手伝えたり手伝えなかったりだったけどな、これからはびしばし働いてもらうぜ?」
「うへぇ……」
「文句あんのか?」
 じろりと睨むと、むっとしたような顔で首を振った。
「ねぇよ……」
「よろしい。……で、お前らちゃんと飯食ったか? まだなら寝る前だけど軽く胃になんか入れるか?」
「お、いいのか!?」
「これこれ、守護竜殿。もう夕食は済ませた後であろう?」
「う……」
「なんだ、そうなのか」
「ラウスブルグで夕飯の時に話があって、そっからかっ飛んできたから……」
 ばつが悪そうに言うリュームを、少しからかいたくなってライは人が悪く見えるだろう笑みを浮かべた。
「なんだ、リューム。そんなに急がなきゃなんないくらいオレに会いたかったのかよ?」
「な……っ!? ばっ、バッカじゃねぇのっ!? オレはただ、なんつーか、えっと、その……」
「んー?」
「……ただ、お前の飯が食いたくなっただけだよ」
「ん、そっかそっか、ははっ」
 ライは思わず笑ってリュームの頭をぐしゃぐしゃとかき回した。リュームは顔を真っ赤にして恨みがましそうにこちらを見ている。
 気持ちが不思議に落ち着くのを感じた。リュームは、自分の息子はこんなにも心を落ち着けてくれる存在だっただろうか。グラッドといる時とは正反対の、ひどく心地よい気分だった。
「セイロン、一緒に暮らすとなると部屋用意しなきゃなんねぇけど、今日はもう夜遅いから空いてる部屋に案内するな。明日親父の部屋掃除してやっから」
「すまぬな、店主殿」
「リュームは俺の部屋でいいだろ? 以前もそうだったし」
「……おう」
 顔を赤くしてうつむくリュームを、ライはまださっきの会話が尾を引いているのだろうと軽く撫でてやったが、リュームは仏頂面を崩さなかった。

 セイロンを空き部屋に案内して、リュームと一緒に部屋に戻り、リュームの寝床を作ってやっていると、突然、後ろから抱きつかれた。
「リューム?」
「……今日、一緒に寝ちゃ、ダメか?」
 その恥ずかしげな声に、こいつはこいつなりに気を張ってたんだな、と微笑ましい気分になってライは向き直りリュームを抱きしめた。
「ダメなわけねぇだろ。言ったじゃねぇか、どんなことになってもオレとお前は親子だって」
「………うん」
 顔を真っ赤にして恥らいつつも、どこか頼りなげな声で言うリュームの背中をぽんぽんと叩いてやると、ライはベッドに上がって毛布を持ち上げてみせてやる。
「ほれ、来いよ」
「………っ」
 リュームは一瞬目を潤ませて、ぴょんと勢いよくライの隣へ飛び込んできた。毛布の中へもぐりこみ、ぐりぐりぐりと頭を摺り寄せる。
 久々に甘えられている気がした。ライは甘えられるのは嫌いじゃない。頼られている、必要とされているという感覚はライの心を温め、強くしてくれる。
 リュームの頭をぽんぽんと叩いてやっていると、リュームがこのクソガキにはありえないと思っていたようなか細い声で言う。
「……会いたかったんだ」
「ん?」
「会いたかったんだよ。オレ、ずっとあんたに会いたかった……もうしばらくは会えないと思ってたんだ。そしたら、オレみたいな生意気な奴のことなんて忘れられちゃうんじゃないかってずっと不安だった」
「なっ、お前なっ」
「わかってるよ、そんなことアンタはしないってことは。……だけど、不安だったんだ。寂しくて、怖くてたまらなかったんだよ……」
「…………」
 ライは思わず目を見開いた。その不安。一人ぼっちになってしまうのではないかといいう不安。その自分の胸の中に今も渦巻いているものをこの自分の息子が抱いているのだと思うと、柄にもなく胸の辺りがぎゅうっとした。
「リューム」
 ぎゅっ、と力をこめてリュームを抱きしめる。たった二ヶ月しか一緒にいなかったけれど、こいつは自分の大切な息子だ。自分みたいな思いさせたくない。誰かを思って泣くような、苦しい思いはさせたくないのだ。
 だけどこんな時どうしたらいいんだろう。クソ親父は自分が寂しい時にはそばにいてくれなかったからまるで当てにならないし。ただ、一度だけ―――
 そこに思考が至ってライは顔をしかめた。たまに会えたと思ったらあんな妙なことやりやがったあのクソ親父なんか参考にしたってしょうがない。
 だけどこいつになんとかして思いを伝えてやりたい。俺がいられるだけそばにいるよと伝えてやりたい。どうすればいいんだろう。こいつの気持ちに応えてやりたい。なんとか気持ちを伝えたい。
 だけど考えてみたらそれってクソ親父のやったあれが最適なんじゃないか? とふとライは思ってしまった。確かにあれをした時は自分の中が親父でいっぱいになって、親父をすごく近くに感じたのは確かだ。
 兄貴にやられているところを想像した時も、死ぬほど申し訳なくて恥ずかしかったけど、でもひどく、嬉しい気持ちもあった。
 あれは妙な感じがするから怖くてあれきりやってないのだけど、それでリュームが少しでも安心できるなら―――
 それは違う、と突っ込みを入れてくれる人がいないままに、ライはリュームを抱きしめ、まぶたにキスを落とした。
「………!」
 リュームが真っ赤になって固まる。お、固まってやんの、と面白くなってちゅ、ちゅ、とキスを少しずつ移動させていく。
 まぶた、目の下、頬、鼻。それから唇にも、軽くちゅ、と。
「な、なに……すんだよ……」
「ん? お前が寂しそうだから、慰めてやろっかなって」
「な、慰めるって」
「嫌ならやめるぜ?」
 動きを止めて笑いかける。実際リュームが嫌ならこんなことをやる意味などなにもないのだ。
 だが、リュームは真っ赤な顔でこっちを睨むようにして見ながら、首を振り、蚊の鳴くような声で言った。
「やじゃ……ない」
「そっか」
 震える手でライの胸の前をきゅっと握るリュームの顔は、嫌ではないというより『恥ずかしいでも嬉しい』という方が似つかわしいようにライには見えた。この生意気なクソガキは、絶対にそんなことを口にしたりはしないだろうが。
 ということはたぶん、やった方がいいのだろう。リュームの気持ちを安定させるためには。親父のやったことを。
 たった一度、でもはっきりと頭に残っているあの行為。親父を思い出しながらやるのは業腹だったので、あえて思い出さずに頭に残るイメージに従いつつ流れでやることに決めた。
 とりあえず、リュームの服を脱がさなくては。ばんざいをさせていつもの袖なし上着を引っぺがし、腰を浮かせて下穿きをずり下ろす。風呂に入る時と同じように、陽に焼けていないミルク色の肌がのぞいた。
 リュームは小さく身をよじった。さっきからずっと顔は真っ赤っ赤だ。あーわかるな俺も恥ずかしかったもん、と懐かしさすら感じながらライはちゅ、とまたキスを落とす。
「……お前もっ、脱げよっ」
「え……」
 親父は脱いでなかったような気がするのだが、と目をぱちくりさせたライを、リュームはきっと睨んで怒鳴る。
「オレだけ脱がされるなんて不公平だろっ! アンタも脱げ!」
「はぁ、まぁ、いいけどよ」
 ライは寝巻き代わりの綿シャツと下着を脱いで自分も素っ裸になった。一ヶ月前まではいつも一緒に風呂に入っていたのだ、いまさら恥ずかしがることもない。
 その様子を顔を赤くしながらじっと見つめていたリュームは、向き直ったライを押し倒すように抱きついてきた。
「っ、おい」
「早くっ……しろよっ」
「は?」
「慰めるとか偉そうなこと言うんだったら早くしろよっ……」
 なぜかすでに熱くなっている体で、泣きそうにうわずる声でリュームは小さく叫ぶ。
「もうオレ、どうにかなっちゃいそうだよぉっ……!」
「リューム……」
 可愛いな、と素直に思い、ライは笑んだ。親父もこんな気持ちだったのかと思うと腹が立つが、この自分の子供だと決めた少年を可愛がることができるという事実は胸に心地よい。
 きゅ、と軽く抱きしめ、体をくりくりと擦りつけた。リュームの高い体温が伝わってくる。特に腰の辺りは熱いと感じるほどだ。
「……っ、ちゃんと、触れよぉっ」
「? ちゃんとって、どこをだ?」
 呻くように言った言葉にそう答えると、リュームはきゅっと泣きそうに顔を歪めて言う。
「胸とかっ……ち、ちんちんとか尻とかっ、触れよっ!」
「へ……」
 リュームがこれからどういうことをするのかわかっているのを知り、ライは少し驚いた。だって、自分は知らなかったのに。
 どこで知ったのか聞いてみようか、と思い、それからそうか至竜の知識か、と一人納得してうなずいた。知識としてあるなら驚かないわけだよな、とうなずいて考える。
 胸とかちんちんとか尻とかを触ればいいわけだよな。
 できるだけ親父のやった行為を思い出さないようにしながら、とりあえず胸の辺りを触ってみた。リュームの平たい胸のどこを触ればいいのかわからなかったが、とりあえず胸板を揉むように撫でてみる。
「……っ、先っぽ、触れよ……」
「先っぽって?」
「ち……乳首だよっ! 意地悪すんなばかぁっ!」
 いや意地悪するつもりはねーんだけど、と言いかけてやめた。言い訳するのは潔くない、自分の至らなさが悪いのだ。非難を甘んじて受けて行為で応えよう。
 両手で両の乳首を同時につまむ。リュームの乳首は自分のものと同様小さかったが、指先でつまむくらいは楽にできた。
 そしてそこをいろいろといじってみる。軽く引っ張ったり、揉むようにしてみたり、ちょっと捻ったり。そのたびにリュームは「………っ」と息を詰めるようにして喘いだ。
「どんな感じだ?」
 ふと気になって聞いてみると、真っ赤な顔で睨まれた。確かに、自分も親父にそんなこと聞かれたら殴っていたかもしれない。立場が違うとわからないものだ。
「悪い」
 短く謝って、ちゅ、とキスを落とす。そのキスを乳首にも触れさせたのは思い付きだったが、とたんリュームの体がびくんと跳ねて間違いではないのだとわかった。
「っ……っぁ、ライぃ……」
 声にねだるような甘さが含まれているのに気付き、ライは驚きつつも笑んだ。この憎たらしいクソガキが自分に可愛がってほしいと思っているのだという自覚は、胸をほんのり温かくさせる。
 その少しばかりずれた感想に自覚のないまま、ライはリュームの尻を撫でた。
「んっう」
 揉み解すように尻を触り、股間の性器も軽く撫でる。そういえば、とライは考えた。親父は……あんなことしたけど、自分までその例に倣う必要はないのではないだろうか。要はリュームにオレの気持ちが伝わればいいんだし。
 自分に抱きしめられる相手がいると思わせてくれる大切な子供に、その大切な思いが伝わればいいのだし。
 でも、リュームは顔を赤くしながら切なげにこちらを見上げている。その顔を見ているとやってほしい、と言われているような気分になってくる。試しにそっと後孔の辺りを撫でてみると「んっ……」と喘いで、じっとこちらを見上げてくる。
 本当にねだられているような気分になって、とりあえず嫌がられるまでやってみようと決めた。
「ん……あ、はう、う……」
 腰を持ち上げさせ、下に枕を入れ、指に唾をつけて、そっと後孔に侵入させてみると、ぬるりとした感触と共に中に導かれ驚く。リュームは顔を歪ませながら喘いでいるので、嫌ではないのかなと思いつつ中で指をうごめかせてみる。
「んッ……く、はァ……」
 普段はキンキン響くリュームの甲高い声が、不思議な艶を帯びて空気を揺らす。その声音になんだかすげぇことやってるみてぇだなぁ、と少しばかりおかしくなりながら(その感想がどこかおかしなことには気付かずに)後孔と性器を同時にいじった。
「んくぅッ!」
 リュームが嬌声とすら言ってよさそうな声を上げる。あ、これ気持ちいいんだ、と嬉しくなって、ぬるぬるに濡れている後孔を二本の指で広げていく。もちろんこちらもぬるぬるになっている親指くらいの大きさしかない性器もふにふにといじった。
「や……ダメだっ、イっちゃう……!」
「? 行くって、どこへだよ」
「ばかっ……へんたいっ、意地悪言うなっ!」
 なんで意地悪なんだ、と思いつつも優しく後孔と性器をいじっていると、リュームは悲鳴のような声を上げて叫んだ。
「もう、いいからっ、挿れろよっ……!」
「……え」
 一瞬ぽかんとして、それから猛烈な羞恥が襲ってきた。挿れろって、挿れろって、あれをここに挿れろってことだよな。
 挿れるってオレが? アレを、こんなところに?
 不意に自分のやっていることがとんでもなく恥ずかしいことのような気がしてきて、真っ赤になるライに、こちらも真っ赤になりながらリュームが怒鳴った。
「いまさら恥ずかしがってんじゃねぇよ! オレだって、死ぬほど恥ずかしいんだぞっ……!」
「そ、そうだよな……悪い」
 そうだ、オレはこいつの父親なんだからなんとかしてやらなきゃ。ドキドキしながらも気合を入れ直し、恥ずかしいことを自覚したら急に硬く勃ち上がってきた自身を、リュームの後孔に挿入しようとそっと支えながら腰を上げる。……なかなか入らなくて難渋した。
「ばかっ、焦らすなよぉ……」
「っつわれたって、なかなか入ら……」
「もっと思いっきり……挿れていいからっ……!」
 そのひどく切羽詰ったように感じられる声に、ライは覚悟を決めた。自身も痛いくらい勃ち上がっている。こいつに自分の思いをありったけ伝えたい。そう思った。
 がっしと腰をつかんで持ち上げ狙いを定め、ぐいっと挿入する。
『…………!』
 双方数瞬絶句した。リュームは挿れられた衝撃に固まったのだろうが、ライが固まった理由は自身に与えられた壮絶なまでの、快感だった。
 なんだこれ、なんだこれ。めちゃくちゃ気持ちいい。親父に挿れられた時とはまた違う、ものすごく直截に伝わってくる快感だ。ぬるぬるした襞々が絡み付いてくる感覚に、挿れた瞬間達するかと思った。
 どうしたって自然に腰が揺らめいてしまう。どう動けばいいのかもわからないうちに、腰が勝手にずん、ずん、とリュームの奥を突いた。
「っ……や、う、は……もっと、ゆっくりっ……」
 荒い息の下からそう言ってくるリュームに我に返り、必死の思いで歯を食いしばって動きを止めた。これは、リュームのためにしてやってることなんだから、リュームに嫌だと思われたらどうしようもない。
 ゆっくり。そう言われた通り、ライは全力で動かしたいのを死ぬ気で抑え、ゆっくりと腰を揺らめかせた。達しないように店の帳簿計算のことを考えて気を逸らしつつ、リュームが少しでもいい気持ちになれるようにと持ち上げた足にキスしたり性器をふにふにと触ったり、と努力する。
「っんあ、はっ、あっ、や」
 リュームの息が荒い。だがその口から漏れる声は艶めいていた。たぶんこのやり方で正解なんだ、と思うとライは全身全霊を振り絞って腰を思いきり動かすのを堪えながらリュームの体をいじる。
 リュームが気持ちよくなってくれるように。リュームに『そばにいるよ』という思いが少しでも伝わるように、必死に。
「あ……あっあっあ……あ、あぁっ、ああああっ、やっもっ、イくっ……!」
 リュームの小さな性器から精液が吹き上げられる。もう出るのか、と驚きを感じて、気を抜いた瞬間ライも達していた。

「……なんで、こんなこと、したんだよ」
 リュームはライがリュームの体を拭いてやっていると、ライから目を逸らしながらぼそりと言った。
「嫌だったか?」
「っ、そんなこと言ってねぇだろっ! ただ……オレは、アンタの、子供だと思ってたから……」
 そのどこか切なげな口調に、ライはしょうがねぇなぁとぽんぽん頭を叩いてやりながら言う。
「なんだよ、まだ不安なのか? 親子じゃなきゃこんなことできるわけねぇだろ」
「………は?」
 リュームが唖然とした顔になる。なんだ、と首を傾げると凄まじい勢いで聞いてきた。
「おいっ、アンタ、これって親子がすることだと思ってんのか!?」
「え? だって、親子だからするんだろ? それにオレ親父にヤられた時は……その、ちょっと、ちょっとだけどな、気持ち落ち着いたし。……兄貴にヤられてること想像してた時は、なんかドキドキして苦しかったけど」
「な……」
 言ってからあ、余計なことまで言っちまったかな、と思ったが、もう遅い。リュームはあんぐりと口を開け、それから真っ赤な顔をして怒鳴った。
「お前ちょっとそこ座れ!」

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