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『妖精たちの回廊』

 鯉の愛好家にして、病院医院長の父親を持つ主人公の「藤室辰之」と 、鯉業者の二代目「栗林三千和」を軸にして、主人公を慕う大学生「大倉涼太」の話。
小説は、薄いので直ぐに読めちゃいます。 しかし、内容は「濃っ!」です。
まず第一に、女が出てきません。これは、ポイント高しです。

主人公の母親ぐらいで、主人公に絡んでくる女もいない。その代わりといっちゃなんだが、主人公に絡むのは主人公の藤室家に出入りしている鯉の業者の二代目「栗林 三千和(クリバヤシ ミチカズ)」(物語のはじめは30歳ぐらい、主人公は高校3年だから、17、8歳か?)と主人公の辰之が家業の医者にならず、教育大に進み、教育実習に最初に訪れた高校での教え子の「大倉涼太」。

いいです、ほんとに、いいです。本の裏表紙には「妖美の世界に耽溺する魅惑の異色推理長編」と書いてあるが…ちょっと違うと思う。裏表紙にあった「長編推理」って程ではございません。(だったら、笠井潔の「哲学者の密室」なんか長編って枠をこえちゃってるよぉ)で、ひょんなことから、教育実習のときの教え子が辰之を訪ねてくるのだが、これが、妙〜なんですよ。いや、いくら「鯉」の話をした先生だからって、教育実習した先生を覚えているモノなのかってことです。しかも、短い期間っていってる。(自慢じゃないが、おぼえとらんやろ?)

高校生に対して行った授業だから、当の辰之はいっぱいいっぱいで覚えとらんでしょう。よっぽどのことが無い限りはね。
(鯉つながりで、辰之の下宿に「おしかけた」こともある奴はおぼえてるか?!)
しかし、涼太は一味違ったようで、一度、下宿に行った時に辰之の郷里を聞きだしていた。(素早い奴っ!)大学生になってから実行あるのみで、九州旅行の行きがてらに寄ったといっているが(辰之が断らない事を想定しているようで)絶対に違うな。

しかも、うれしそうにやってきた涼太に「養魚場の手伝い」をさせてやると辰之は言ってしまうし…結果、涼太の「思うツボ」ってやつ? 涼太は確信犯ですぜ、辰之君よぉ。九州旅行なんていってるが、実は目的はただひとーっつ!
「辰之の家にお泊りするこじゃないスか?」旅行なんてどうでもいいッスって感じですよ。

 涼太が辰之を訪ねてきた理由は「雑誌に掲載されていた『近代昭和』の写真」であって、この写真を九州旅行の行きがてらに、先生に見せようと思った、ってのが小説での理由。…で、この雑誌に掲載された写真を見て、取り乱す辰之。
辰之は三千和・ラブ(?)でありますので、三千和が行方不明になったままであり、『近代昭和』が彼を探し出す何かの手掛かりであると推察していたらなのですがそんな辰之をみて、熱血涼太は見逃すはずも無く、京都へ先回りして、辰之を待ているんです。(『近代昭和』が京都在住の家のモノになっていた)それからというもの、辰之の側をできるだけ離れようとはしない涼太。いや〜なんだか、いじらしいじゃない?

辰之も自分の方が年上って言う自覚(勿論、先生っていう職業柄から来ている節はありますが)があるので、涼太に表向きは甘えはしないけど、そこを判っているからこそ、涼太の若さゆえの強引さというか、力技で引っ張っていくあたりなんかは、完全に辰之は見切られていますよね。
 ラストの辰之と三千和との再会でも、彼を心配して探し回る涼太がいますしね。(掻っ攫らわれんじゃないかと、ヒヤヒヤしどうしだったんじゃないすか?)

しかし、三千和も三千和じゃ〜ないですか?
自分の『あかし』を辰之に渡したくて、弟に頼んで自分が身に付けていた「指輪」を渡すんですよ?! 指輪を渡すシチュエーションって、女と男や女と女(この場合は近親者でしょうけど)男が男に指輪を渡すかねぇ。ありえない事ではないが、
そこには目に見えない太い絆が介在してますよねぇ。(親子じゃないっつうんだよ!)
 自分で、渡す事を憚られたので、結局、出来の悪い弟い頼んで渡してもらう段取りにしたが、弟の方は嫌がらせ150%がはいちゃってるので、手首(おもちゃですよ)に指輪をつけて、フネにいれて渡そうとする。(実際、無事辰之のもとへ渡るのですが)しかし、おもちゃの手首を用意する辺り、弟の「歪んだ愛」を感じますし、又、それを見つけて「三千和」のものだと直感する主人公も主人公だ!  もう、読んでいてゾクゾクしますよぉ。(ちょっぴり、変態が入っているかも)
 それに受け取ったかどうか、柱の影からこっそり盗み見してたんでしょうねぇ〜あぁいい感じだわ。(妄想炸裂状態です)

辰之と三千和の歳の離れ方も理想に近いが、三角関係の将来性いおいて涼太の存存在も、グ〜じゃないスか?!
これこそ「行間を読む!」という点ではですね、萌え度は高いですよ。
へたすりゃ〜、涼太と辰之のその後っていう二次小説もかけるぐらい、妄想しちゃいます。
是非是非、読んでみて下さいね。

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