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『真夜中の相棒』 著者:テリー・ホワイト(文春文庫)

『Triangle』Teri White
83年度アメリカ推理作家協会賞ソフトカバー・オリジナル部門受賞

------------------------------------あらすじ 『真夜中の相棒』
ベトナム戦争中、少尉だったマックは大量虐殺の行われた村の中に一人残された、兵士ジョニーを見つけ、保護する。しかし、ジョニーはマックと帰国してからも、マックの元を離れようとしなかった。ギャンブル好きのマックはその借金から、トラブルを起こし、それを助けようとしたジョニーは殺しを行なってしまう。その殺しの腕をギャングに認められ、望まないのに、殺し屋を職業として、生きていくことになってしまう。そんなある日ジョニーは、おとり捜査中の若い刑事コンロイを巻き添えで誤って殺してしまう。相棒を殺されたサイモンという刑事はこの2人を執拗に追いかけられはじめる。
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この本については、本にいれようか、それとも映画に入れようか、結構迷ってしまいました。結局、本が先に出て、映画のほうが後だった訳だから、本の方を先にしたほうがいいのではないかと思い、本の方に入れさせていただく事にしました。
 この本を本屋で見つけた時には、声をだしそうになったが、そこは「大人」ってことで「グッツ!!」と美味しさを堪えて、イソイソと家に帰りました。この喜びを共に分かち合わん!! と意気込み200%で、友人に電話をかけようとしたら、 先に電話があり『ええもん、見つけた出ぇ〜』と怪しい声でかかってきた。(やはり、類は友を呼ぶのねぇ〜)しかし、私も私なので、『当たり前田のクラッカー!!』と、古典ギャグで、返してやった。(座布団、1枚!!)
 この方、女性ですが、ほんとうに『女流作家』らしい本を書きます。って、変な言い方なんですが、男性の作家には書けない視点で書かれてるよな気がします。こういう、視点で書かれる男性作家も、もちろんいらっしゃいますがねぇ。

 彼女のデビュー作がこの『真夜中の相棒』ってはツボですなぁ。しかも、次回作からも同じようにツボにはまれるような作品を出してくるあたり、やめられません。本当は『真夜中の相棒』のみを書こうと思ったのですが、奇しくも彼女には『殺し屋マックスと向こう見ず野郎』という本もあり、これも、映画化されているので、一緒に書いちゃえーっ。(やっつけ仕事のような感じになっちゃったわ)

------------------------------------ あらすじ 『殺し屋マックスと向こう見ず野郎』
伝説的ともいえる殺し屋マックスは、今はもう現役を退いて悠悠自適の生活を送っていた。そんなある日若く美しい若者ジェレミーが彼のもとをを訪ねてくる。彼の本当の目的はマックスの殺害にあるのだが、そんな彼を知りつつ、手元においておこうとするマックスだった。そんな時、マックスは新たな仕事を請け負う羽目に陥ってしまうが、その仕事をジェレミーと2人でやろうとする。しかし、マックスには彼を長年追い続けている刑事がいた。この刑事とは長年の追いかけ合いの末、奇妙な連帯感とも言うべき、親近感があり、今ではお互いを認め合う間柄になっていた。しかし、2人の計画は徐々に横道にそれ始め、ジェレミーにいたっては当初の目的すら、果たせないほど、マックスのことが好きになっていた。
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 この2つの物語の決定的に違うものは、ラストの暗さ。暗さにかけては『真夜中の相棒』が暗〜い。マックスに思い入れをしてしまうと、暗さは更に倍増。それに比べ『殺し屋マックスと向こう見ず野郎』はママス&パパス(ビーチボーイズの方がいいのか?!)が ピッタリで、陽光の当たる場所が似合う物語だ。本(原作)はアメリカが舞台だもんね。

ただ、映画は舞台が『フランス』場所がフランスに置き換えられちゃっていますが、映画はそれなりに、巧く出来ていると思いますよ。哀愁を帯びた暗さっていうんでしょうか、いわゆる独特の雰囲気の有る映画に仕上げっていますわ。
まぁ、趣味の問題といわれれば、それはそうでしょうね。舞台が「アメリカ」がいいか「フランス」がいいかってのは意見の分かれるところでありますね。
 アメリカの方はやはり、救いのない暗さにベトナム戦争の影が染みのようについていて、どんよりとした重いモノを 残してくれます。私的にはやっぱり、原作の雰囲気を大事にしたいということで「アメリカ」に一票っ!!って感じですかね?

『真夜中の相棒』の内容が、かなり暗い内容になっているのは、ベトナム帰りという言葉にも表れていると思うのですが、彼らの独り立ちできない甘えが全体を支配していて、社会からはじき出されてしまった若くない男(だらしないっていえば、それまでの男ですが)と、社会という枠組みから取り残されてしまった子供のような青年の不安定な社会の有り様って 、感じが暗さ増し増しって感じですね。

 そしてもう一つの問題カップル……。中年刑事は仕事柄家庭を顧みず、家族から突き放されてしまって、精神的なよりどころを若い相棒の刑事に寄せてしまっている 、最大のこまったちゃんだったこと。作品の中心である二組の男のカップルは相対した立場の人間ではなく、ジョニーとマック同様、同類であり、始末に終えないくらい、刑事は自分がわかっていない。
 作中の、キーワードとしてはやはり、異常なほどの依存度の強さ。だから、マックもジョニーの面倒を見ているなどといいながらも、彼のいない生活は考えられないほど、寄りかかっているし、ジョニーにいたっては、厳格な父親との関係のトラウマから精神的に退行してしまって、自分を必要としてくれるもの、マックが全てであるということが、生きていく上での最重要であったこと。(常軌を逸したアイスクリームに対する偏愛も彼の性格をうまく決定づけているものだと思う)戦場で、自分を庇ってくれたマックに見出したものは彼の理想の父親像かも?

ただ、マックが女とベットでことを起こしている最中に、女の顔が一瞬、ジョニーの顔になって、驚いてしまう場面があるが、
これはもうすでに、愛しているが自覚がない、または認めたくない 、の顕著足るものだ。(末期症状ですよ)ラストも「やっぱりな」っていう展開で落ち着いてくれるが、どうにもやりきれないラストになっている。勿論、このラストでないと落ち着かんのだろうが、相棒を失った刑事としてサイモンが登場した時に、失った彼への執着が徐々に、ジョニーへ変貌していく時点で、ラストがわかってしまった。
 こちらとしては、なんとも、不器用でだらしのないマックに思い入れがあったので、鬼気迫る執着心でジョニーを追いかける中年刑事に、「やっぱり、ジョニーは取られちゃうのか〜っ」と思いながら読みましたわ。

「殺し屋マックスと〜」に関しては全然、そんな暗い気分にはなりませんでした。ただ、映画のコラムにも書きましたが、チャールズ・ブロンソン主演「メカニック」という素晴らしい映画(もしかしたら、この世に3人だけかもしれませんなぁ…この映画が素晴らしいって言う人は…)の内容に似てなくはないと思いました。あれは悲壮感が漂っているというより、ラストは「心中」というラブストーリーって感じですが…。 余談ですが、いつかはやってみたい映画のコンテンツは「この世で3人しか素晴らしいと褒めなかった映画特選10選」ってのをやってみたいわ。勿論、1位は「メカニック」(やりてぇ〜)

「殺し屋マックスと〜」での映画俳優はジェレマイア(ジェレミー)役に近頃、めっきり姿をみせなくたった「クリストファー・ランバート」しかし、「殺し屋マックスと〜」の映画の題名は「危険な友情〜マックスとジェレミー〜」…なんだかなぁ。
「真夜中の相棒」も映画の題名は「天使が隣で眠る夜」…これはこれで、と自分では納得してみるが、もうちょっとなんとかならんのかーっ! って感じですね。

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