2009.08.17.

可憐な蕾
02
横尾茂明



■ 捨てられた少女2

「ったく…しょーがねーなー…」
「おい…ぼさっと突っ立ってないで上がれ!」

剛史はサンダルを脱ぎながら少女の背中を押した。
その時…背中の布地を通して少女の柔らかな暖かみが微かに感じられた。
刹那、少女の性の実感に剛史は少しおののく。

「お邪魔します…」少女の口から微かに声が漏れた。
その声には怯えが含まれていたが…清い声は更なる実感へと帰結させていく。

靴を脱ぎ、きちんと揃えてから剛史の後に続く。
少女は台所に通され、所在なげに顔を伏せ佇んでいた。

剛史はテーブルのビールを握り、プルトップを外しながら椅子に乱暴に座る。

唐突に訪れたこの奇妙な成り行きに喉の渇きを覚えビールを一気に飲み干した、味は全くしなかった。

缶をテーブルに置きながら…
「オイ! 突っ立ってないで…座れ」少し怒気を含んだ言葉を投げつけた。

少女はハッとした顔で剛史を目をのぞく…。
そして怯えた仕草で鞄をキッチンの隅に置き、椅子を引いて浅く腰掛けた。

少女は今にも泣き崩れそうなほど肩を震わせ萎縮していた。

剛史は思う…このガキは捨てられたんだと。
金目当てだけで結婚した女の連れ子…借金漬けとなった今、ヤツに愛情のかけらもないはずと何故か感じたのだ。

(ただ路傍に捨て置かなかったのは…ヤツも一応人間だったんだな…)

「お前…沙也加って言ったよな…お袋さんの実家とか親戚はないのか?」

「……………」

「黙ってちゃわからんだろー、質問に答えんか!」

少女は剛史の言葉に怯え…震えながらも切れ切れに口を開いた
「祖父母は数年前に亡くなりました、それと…親戚には…全部…断られました」

「お前…夜逃げの馬鹿オヤジとあちこち廻ったんだ?」
「ったく…最後はいつも俺だ…あのバカ野郎は」

今田は二度と自分の前には現れないだろうと確信に近いものをこのとき感じた。

「でっ…学校は行ってんのか?」

「もう…1ヶ月行ってません…」

「ハーッやれやれ…俺にそこまで面倒見ろってか、ったく」

「お前ら…俺がイヤだつったらどうするつもりだったんだ」
「正直言うと…今田のヤローには貸しはあっても借りはねーぞ!」
「ヤツは俺に取っちゃ疫病神なんだ! ったく」

「さー…分かったなら出てってくれや」
「俺にお前らの生活まで面倒見る義理はねーからさー」

剛史は少女を見据えて腕を組んだ。

少女の怯えは頂点に達した…そして大きくブルッと震え剛史の腕の辺りを見ながら大粒の涙を零し始めた。

(ったく…まいったなー、あのヤローは)
少女の純な涙にさすがの剛史も少し心が痛みだした。

(しかたがないか…ガキにゃー罪はねーもんな…)

「よし…分かった、もう泣くな」
「さーお前も疲れてるだろう、今夜は遅いから細かい話は明日だ!」
「お袋が使ってた部屋が空いてるから、今夜は取り敢えずそこで寝な」

剛史は少女を連れてトイレの場所を教え、亡くなった母の部屋に連れて行き布団をしいてやった。

剛史はそのままバスに行き湯船に浸かる。

(さてと…どうしたものか)
(放り出せば…あの可憐さ…すぐに餌食だよなー)
(かーっ勿体ない、あんな美少女はまずはいねーもん)

(頂くとすっか…今田公認だし…)
(しかし…可憐だよな、あんな美少女をいたぶりながら突っ込むなんざ…クーッ…おっ! 考えただけで…)

湯面に怒張したペニスが揺らいで見える。
(よし! 頂くぜ…それも鬼畜にな)
(中学2年生だったな…無垢な少女かー、こりゃ仕込むのが楽しみだ)

(しかし…中学には一ヶ月も行っていないと言ってたなー)
(今田の野郎は…何やってんだか)

(ハーッ…こりゃー明日は忙しくなるぜ)
(まずは今の学校の転出届けか…)
(転入校の書類も受け取らんとな)

(親でもない俺が…なんでそこまでせにゃならんの)

(ハーッ仕方ねー…楽しみのためだ、なりすますか)
(それと住民課に行って転入手続きもしないと…さて転出をどうやるかだな)
(あのガキ…印鑑なんて持ってねーだろーなー)

(養子にするって言う方法もあるが)
(未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可書謄本がいるから…これはマズイわな)

(しょうがねー…明日は1日仕事を休んで一気に済ますか)
(はーっ、やてられねーぞ)

剛史はそう思いながらも…心は何故か奇妙に浮き立っていた。
透明感に満ちた少女の肌…折れてしまいそうなほど細い指と真っ白なうなじ…。
それとあのこぼれ落ちそうなほどの可憐さ…。

その可憐無垢の少女を己のペニスなじむまでいたぶり、体液をあの真っ白なウブ肌にしみこませる鬼畜な所行。

これで浮き立たないわけはないと剛史は一人ほくそ笑む。

剛史はこれまでにあれほど美しい少女を見た記憶は無かったのだ。

38才で独身の剛史…これまで女性経験は何人もあるが、気に入った女はいなかった。

しかし体は女を求める、そんなときは街に出て…たむろする少女を物色し、可愛げな少女を見付けては声を掛け…数万の金と引き替えに幼い青い性に淫らを強要し貪った。

今田に以前…お前は少女趣味なんだと言われたことがあったが…その時は何を馬鹿なと反論したが…思えば今田に心の深淵を見透かされた反射であったようにも感じる。

今田は美少女を連れてきた、彼女を前にして剛史は絶対に断れないと確信を持って…。

(あの野郎には…とうに見抜かれていたてことかー…)



カーテンを閉め忘れたのか…明るさで目が覚めた、時計は6時半を指していた。
(もう少し寝るか…)
と思った刹那…昨夜の出来事が甦る。

(そうだ…あのガキ…)

剛史はパジャマのまま、階下に降りて洗面所で顔を洗いはじめる。
先から少女のことがしきりに気になっているが…。

(まだ起きていないのかな…)
(あんな事になって疲れているんだろうか)
(しょうがねー…もう少し寝かしといてやるか)

顔を拭きながら鏡を見た瞬間驚く…少女が知らぬ間に背後に立っていたからだ。

「おはよう御座います…」

剛史はたじろぎながらも振り返り、少女の全身を視野に入れた。

赤の半袖のミニワンピース、髪は可愛く横で縛り零れるほどの可憐さで剛史にお辞儀する。

「お、は…よう」
剛史は気押された感覚に…洗面台に後ろ手を付いて何とか挨拶を返した。

ミニのワンピから零れる真っ白な形のいい脚と…ミルク色の腕。
朝日を受け愛くるしいほどに輝く顔とその影は剛史をたじろがせるには余りある可憐なエンジェル像…。

少女がクスっと笑う…その笑いで自失呆然から剛史は我に返った。

「ご飯…出来てます…」
「失礼かとは思いましたが…冷蔵庫に有る物で朝ご飯の用意を致しました」

「そ…そうか…」

踵を返した少女のあとに続きながら…主客転倒の感に頭を傾げながら台所に向かう剛史。

冷蔵庫の中のあり合わせで作ったと言うだけあってけして豪華とは言えないが…みそ汁はとびっきり旨かった。

鰺の開きを箸でつつきながら少女を盗み見る…美少女は品のいい食べ方でご飯を口に運んでいた…
口が動くたびに可愛いえくぼが見え隠れし、その可愛さには圧倒するものがあった。

剛史は何か楽しくなってきた…久々に朝ご飯を人と食べるのが嬉しいのか、それとも美し過ぎる少女が手を伸ばせば触れるところにいることが嬉しいのか…いずれにせよ近年になく心が浮き立った。



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