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番外編: 蒼太の悪童日記

某月某日深夜2時……。
興奮して寝られへんので、日記でもつけることにする。
…俺が日記つけるのは、変やて?
そうでもないで〜、俺ってタッパもあるし、ガタイもイカツイから見かけからは、ちょぉ〜っと想像でけへんやろうけど、実は繊細やねん。(あっ! わろとるな?)
それになぁ結構、悩みもあるねん。でもなっ、世間にはそんな顔は見せへんけどな。

あぁ〜あ、今日もいつもと変わらへん一日が始まるかと思うと、ちょっと凹む。
 おやじはおやじで俺と暮らすのを嫌がってるし、おかんはおかんで最近は泣き落としにかかりよる。(ホンマは泣いてへん。いわゆる、ウソ泣きっつうやつや)大体あの図々しい女がちょっとやそっとのこで、泣くわけないやろ? みんなのところのおかんもそうやと思うけど、大体、母親ってのは、そういうもんや。つようないと、世間の荒波に対抗でけへんもんな。
 
『俺なんかが傍におらん方が、ええ男引っ掛けられるで』 って言っても、眉毛一つ動かさんくせに…そんな女が、泣くわけないやろ? そんなん信じんのは『はるかとおやじ』ぐらいなもんや。弱いのは『男』って相場は決まっとるっちゅうねん。
俺は…もう、高校生なんやし、ええかげんほっといてくれへんかなぁ……。大人やねんしぃ〜。

                   ********************

最近、つまらんことが多すぎるなぁと思ってたら、見透かしたようにおやじが言いよる。
「おい、蒼太。お前彼女の一人や二人、おらんのか? ええ、若いもんが家の中でゴロゴロしてるっちゅうのは、不健康極まりないぞ」
「そんなん言う、おやじはどないやねん? おかんと別れて、随分なるやないか? ええ女の一人もおらんて、寂しいこっちゃなぁ」
「……お前も最近、口が立派になったなぁ」
「おうよ、口だけや無いで〜、息子の息子も一人前やっ!」
「……ハナたれが、何、偉そうな口きいてんねん」

おやじと腹の探り合いしたかて、なんの得もあらへんけど……ええかげん、自分のこと気いついたらどないやねん? おかんと別れた理由だってそや。おかんもおやじも経済的価値観の相違やなんてどうでもいい理由を掲げて、俺に説明なんてするかーっ? まぁ、おかんは賢い女やから(腐っても女や、”おかん”やないところが感心するわ) おかんから別れようと切り出した時には、既に知っていたやろう。せやのに、アホおやじときたら、自分がエリート社員からプー太郎風弓道場副師範なんてのになったからやなんて、ウソくさい理由を未だに信じとる。
 自分の事すらわかってへんおやじに、俺が相談できると思もとることが腹立つっちゅうねん!
お前には、一生ぉーっ、恋愛の相談なんか、ぜってぇせえへんっ!
お前に相談する前に、自分がどこぞで、相談してこいっ、ちゅうねん!
 あれだけ、ラブラブ目線を ”はるか” に送ってるのに、自分で気がついてないとことが、ある意味、オヤジも最強の天然やちゅうことか? でなぁ、皆さんきいてぇ〜や! この ”はるか” っていうのは、おやじの幼なじみで5つ年下の男なんやけど、小さい頃からおやじが通ってる(今はおやじがそこの、副師範代やけど)弓道場の孫で、一緒に練習してきた男やったらしい。今、思うと……このはるかが、おやじの初恋やったんやないかって思える。
(う〜ん、子供の頃のはるかは可愛いかったんやろうなぁ…)
しかしまぁ、この男がなにをおいても ”かわいい” んや。(俺が言うのもなんやけど)

 四十過ぎた男に面と向かってかわいいって言うたら、首捻られるかもしれんけど、かわいいもんはかわいいんやから仕方が無い。男心を擽るっていうんかなぁ……それにマメっちゅうか、面倒見がええんや。俺は、密かに ”ミスタービーンズ” (まめな男ってこっちゃ…ちぃ〜と、ベタやけどな)と呼んでるぐらいや。そりゃ ぁ、かいがいしいぐらい世話焼いてくれよる。うざいなんては思わへんでぇ……なんでかって? はるかの面倒見の良さは、すこぶる気持ちがいい。嫌味な感じなんて全然あらへんのや。だって、いつでも真剣に相手のことを想ってくれるのが、よぉ〜わかるからなぁ。
こっちが、気い使うぐらい下手に出て、尽くしてくれるんや。
普通、ココまでされて惚れへん男は、男やないでぇ。

みてくれも結構、ええ感じや。
中の上ってところかなぁ、笑うと愛嬌があって、これがまた感じええんや。
癒されるっていうんかなぁ、今の世の中、これが結構重要なんかと違うか?
それに、生真面目っていうんかなぁ〜何でも一直線や。
せやから、なんていうんかなぁ…この真面目な性格が災いしてか(?)じいさん、ばあさんの受けがええ。
おやじのじじいは、今時流行らへん ”茶道具屋” をやっとるが、このじじいにも受けがいい。
こともあろうに、このじじいは、実の息子のおやじよりも可愛がってるんじゃないかと思うぐらい、はるか贔屓なんや。
しかも、未だに自分のとこへ養子に来んか? って、大阪帰る度に迫るから始末が悪い。
じじいのあの押しの強さはどこからくるんか、俺は知りたいでぇ。
はるかも、ええ歳こいて、このままサラリーマンか、弓道場の道場を継ぐのか未だに迷うてんのは、気がよすぎるっちゅうもんや。気が優しいのは判るが、それにつけこんで、あのじじいは『うちに養子に来て、店継がんか?』なんて、悲鳴をあげたくなるほど、怖い考えをいいよる。

なんやったら、おやじとはるかを交換せえへんか? ってマジで口にしよるし……。
(この、一直線なところは、おやじにそっくりかもしれんなぁ……んっ? 逆かぁ?)
せやから、最近なんて、どこでどうサイズを測ったんかしらんけど、はるかに着物つくってやったりしとる。(はるかなんか、どうしていいのか困った顔してたけど、結局じじいの謀略に引っ掛かって着物を切るハメにおちいっとるし……もう、ちょっとはしっかりしてくれよ!)未だに独身なんは、本人曰く『押しがたらんせいや』とおもとるらしいが……女はそんな甘ないんや。

 結婚して、子孫を残そうと本能で考える奴らがやで、はるかみたいな同類をチョイスすると思うか? 
……まっ、偶に俺らに近い女が出現することはあるが、なごうは続かんから、心配はせえへん。
ホンに、心配なんは俺らと同類だけや。俺としては、なるたけはるかのまわりの奴らを見つけては、早い段階で芽を摘んどかな、後々面倒や。せやから、俺は若いのに結構苦労な青春をおくっとるちゅうわけやな。(うん、うん)

せやから、天然おやじは自覚症状なしではるかに接しよるから、見てて、イライラする。
そんなに、好きやったら、押し倒すなり、やってまうなり(……同じか?)なんで、実力行使にでえへんねんや? 
ちんたらしとったら、よそに取られてしまうって、頭回らんのやろか?
俺にしてみれば、おやじが手だしてへんのが幸いしてるんやから、こっちが文句いうこともあらへんけどなっ。

俺は、もう、はるかが誰かのもんになるんとちがうか、と思うと居ても立っても入られへん!
こんな状態、いつまででも続け取ったら身体に悪いわ。
せやけど、よう考えたら、おやじはこの状態を何十年も続けとんのか????
(ようやるわっ! …好きやったらさっさと、いてまえっ、よ!)
俺なんか最近、はるかが夢に出てきて困るんや。
もう、夢の中のはるかは、大変やっ! ……ちゅうか、最高やっ!
色気のある表情で俺に迫って来るんやでぇ〜。
あぁ……夢の中でもあんな顔してるっちゅうことはや、実際の顔はどんなんやろうなぁ。
……なんや変なこと想像してたら、勃ってきた。
ううっ……哀しいかな、手コキで我慢せなあかんって、若い身体を持て余してると思わへん??
『…………』

そや! ええこと思いついたっ!
明日は創立記念日やっ! はるかの寝込みを襲うにはもってこいってことや?!
よし、どうせ荷物なんかいらんし、「おやじと喧嘩したわ〜」とでも言うたら怒りながらも、俺を迎えてくれるなっ。
なんやぁ〜、俺って頭ええやん。運動部やけど筋肉バカじゃなかったってことや。(おやじはある意味筋肉バカやけどな)
あぁ、そう考えたら楽しなってきよったわ〜。
未だ、起きるには早いさかい、もういっぺん寝たおしてはるかの “ヒィヒィ” 言うてる姿でも拝むとしようかなぁ〜。
『人間、成せば成る、何事もっ』てか〜?
念じれば夢にだってでてくるさ〜。

松本 蒼太 今年で17歳。
青春、ど真ん中。

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