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7)常世への道行き

彼の輪郭をたおやかに包む淡い光が、黒い瞳に反射して僕の心を震わせ、彼の瞳に映る景色までもが僕にとって愛しいと思わせるものだった。
一度過ぎ去った熱がぶり返したように、僕を押し上げ、侵食していくような奇妙な感覚だ。
 僕はゆるゆるとした緩慢な動作で彼の顔の輪郭を指でなぞり、渇いてしまった彼の唇に触った。彼は黒い瞳をさらに丸くして見開き、僕の指を前身の神経で感じているようだ った。

僕はそんな彼の様子を一瞬たりとも見逃さないように彼を眺めながら、学生服の裾から手を差し入れて彼の胸を触ろうとした。
 しかし、きっちりとボタンの止った学生服が枷となって僕の手を阻んだ。
素肌に触りたいと大きな欲望が声を荒げ、僕はその声に導かれるように彼の学生服を乱暴に引っ張っり接がそうとした。

 そんな乱暴な僕の動作に慄いたのか、彼は慌てたように僕を押しやりながら言った。
「ま、待ってくださいっ!」
僕は低く唸るように彼を威嚇し「待てない」と強く言った。
「…違います、ここでは…」
「?」
「ここでは、できません。お願いです、どうか、あの…お堂の中で…」

顎でしゃくるような仕草で彼は右側にある朽ちたお堂の壁を指した。
僕は不満をあらわにしながらも彼から離れ、強引に彼の腕を引っ張ってお堂の中へと入っていった。
 真史は僕の手から逃れるようなことはしなかったが、お堂の中に足を踏み入れた途端、身体を硬直させて傍から見ても緊張しているように顔を強張らせていた。

堂内は薄暗く、埃が舞っていてカビた臭いが充満していた。
彼を先に中に入れて、僕はお堂の扉を後ろ手に締めながら彼の背中を凝視していた。

 彼は何も喋りはしなかったが、荒い息遣いが次第に大きくなってゆくのが留められないようで、必死になって唇をかみ締めて声を我慢しているようだった。
僕は微かに震える彼の背後に立ち「我慢しないで」と耳元で囁き、彼の耳の穴に舌を押し入れてしゃぶってやった。
そんな彼の身体は小刻みに震えていた。
それは、僕を恐れているからだろうか?
それとも行為を恐れているからだろうか?
しかし、僕は逆に今から起こるであろう甘美な時間を想像して、期待に震えているのであればいいのにと、自分勝手な驕慢さで真史を見やった。

身体は閉じたように硬く、目もギュっと閉じて、全てにおいて僕を拒否しているようだ。その態度に僕は少々苛立ちを見せた。

―――『誘っているクセに』
僕を誘って、惑わしているクセに、何を今更戸惑う必要があると言うのだろうか?
乱暴に朽ちた床に彼を組み敷いて、その表情を窺っていると彼は堪りかねたように震える睫毛を揺らして僕を見上げた。
人が立ち入らなくなって久しいのだろうか、彼を引き倒した反動で堂内は霧のように埃が舞い上がった。

それでも僕は埃を気にする事もなく、何事も無かったかのように彼の腹の上に跨って、真史を見下ろしていた。
「…嫌?」
僕は幾分低い声色で囁き、業と彼の頬を舐め上げた。
彼は途端に、目を瞑り何か言いたげな風に唇を噛んだが、頭を左右に振って弱弱しい声で「…いいえ…」とだけ答えた。

可愛らしい唇に僕は輪郭をなぞるようにして口付けた。
真史は今だ緊張した面持ちで、口付けても歯をしっかりと閉じたままで、僕の侵入を拒んでいた。
 僕は何の躊躇いもなく真史の歯に己の舌でつついて、そこを、その先を開けるように催促した。観念したようにゆるゆると開け放たれた彼の口内に僕は素早く舌を滑り込ませ、奥に縮こまるように引いている彼の舌を絡めとるように差し入れした。

差し入れる行為を繰り返す度に真史は身体をビクつかせ、僕を押しやる事も出来ずになすがままだった。

次第に真史の唇は薄暗い堂内で、いやらしい光を放つように唾液で濡れていて、物欲しげに赤い舌が僕を求めてさ迷っているように見えた。実際、キスをしている時は、幾分慣れたのか、僕の舌に己の舌を絡めてくるようなことさえやってきたのだ。
僕はそんな唇から名残惜しげに離れると、彼の身体を覆っている邪魔な服を剥がしにかかった。

―――『裸の方がきっと素敵なのに』などと、不埒な考えが頭を横切る。

僕は、お堅い学生服で常に身を包み、大人しそうな素振りをして子供のような学友を騙している真史の身体を、間近で見られことに例えようも無いくらい興奮しているのがわかった。

―――『自分は今から確固たる信念と、燃えるような情熱を隠している真史の身体を、あの反吐の吹き溜まりのような場所から引き上げ、愛でるのだ』
理不尽な思い込みと、横暴な愛情を真史に捧げようと僕は猛り立ち、一刻も早く真史を自分のものであると証明したかった。僕だけが成し得ることができるその行為に、想いを馳せると自然に微笑が洩れた。

半眼で僕を見上げる真史の目は、期待半分、慄き半分といったところだろうか?
ただ、僕が動くのをじっと見つめている。

取り払われた鎧のような学生服の下から現れた真史の上半身は意外なことに真っ白だった。彼はよく絵を描きに出かけると言っていたし、実際彼の手の甲や首の辺りを見ると、少々日焼けをしていたので、僕はそのままの色で真史を想い描いていたのだ。
 焼けてはするものの、他の学生達よりは随分白いのだが、晒された胸は期待以上に白かった。
『それもそうだ、服を着て絵を描いているのだから、晒されていない肌は白いに違いない』妙な得心だったが、実際に現れた真史の身体に僕は思いのほか興奮しているようだ。

僕は露になった真史の身体を手で撫で擦った。
丁寧に彼の首筋から薄く色づいた乳首までをゆるゆると撫でおりた。
それほどビクつかなかった真史は、僕の指が彼の乳首に触れた途端、小さな声を出して慌てて自分の口を押さえた。
「…ん…っ…」
くぐもって聞こえる彼の声は魅力的だった。僕は彼のちょっとした素振りにも愉快になり、彼の反応を愉しんだ。
それからは僕も大胆になって彼の派手な拒否の動作にも無視を決め込み、
彼のズボンに手をかけて下着ごと取り払って両袖に僅かに残ったシャツの残骸だけの姿の真史を眼下に眺めた。

不安げな表情の真史を眺めながら、僕は自身の中心に熱が集まるのを感じ、彼も同じ気持ちであればいいのにと思った。

僕は真史の胸に唇を寄せ、薄茶色の乳首に吸い付き、舐めては甘く噛む行為を繰り返した。その度に彼の下半身が震え、彼の唇から漏れ聞こえる吐息は疼くように甘く響いた。
彼の唇と乳首を陵辱し、思うがままに吸い尽くすと、僕の興奮は何も見えないように真史に取り込まれていくように感じた。
真史も、興奮しているのかしきりに僕の身体を弄り、彼自身を僕の身体に擦り付けるように身体を揺らした。
「……」
真史が何事か僕に囁いた。
僕は彼の聞こえない声を無視して、彼の唇を自身の唇で塞ぎながら、彼の竿に手を伸ばして柔らかく握り締めた。
「はっ…ぁ…」
真史の口からは甘い疼きのような声が漏れ、僕はそれに気を良くして右手により一層力を込めて握り締めて扱き出した。
彼の柔らかい首筋に唇を這わせ、舌で舐め上げ、甘く噛むと更に真史は興奮するようで、身体を摺り寄せてきた。
彼の身体は外気に晒されているにも関わらず、熱く火照っていて、僕の手の動きにあわせるように身体が自然に動くと更に熱くなっていった。

「…凌二さん…」

今度ははっきりと僕の耳に届いた。
掠れた声だったが、甘く絡みつくような声色で僕の名前を呼んだのだ。
それも、初めて僕を名を呼んだ。
彼の囁きに僕の中心は一気に固く大きく形を変えた。

「…何?」
僕は笑いが漏れるのを堪えながら返事を返し、彼の首から胸へ、そして彼の中心で欲望が徐々にそそり立ち始めた下生えの辺りまで舌を移動させていった。
「お、お願いが…凌二、さん…」
真史のやや切羽詰った言葉を無視し、握り締めた彼の竿を凝視して口に含んだ。
「あ、あ、あぁ…っ…」
真史は驚いたように上半身を起こして僕の頭を剥がそうと両手で掴むが、心の欲望には勝てないのか、力は決して入っていなかった。彼のモノを口の中におさめて強く吸い上げては、亀頭部分を舌先で舐めとるとグッと力が篭ったように腰を突き上げ、更に固く持ち上がった。
「うっ…うん、うん……」
下唇を噛むような仕草で、子供のような声を上げる真史が可愛らしく思えたが、彼の下半身は子供ではなく立派な大人に成長していた。真史の竿は裏側にはうっすらと血管が浮き出るほど固く育ち、先からはダラダラと先走りの汁が流れ出て、僕が与える快楽を感じている様子が伺えた。

どこか困惑した表情で、僕が真史の竿を口に入れてしゃぶっている姿を見下ろしながら、僕の背中のシャツをたくし上げるように掴んでいた。
 真史は快楽に流されまいと自分を律していようとするもう一人の真史と、自分の意思とは無関係に僕に従順で欲望に身を焦がすもう一人の真史との間で混乱しているよう だ。そんな真史を僕は、舌先を小刻みに動かし、舌全体で大きく姿を変えた竿を舐め上げては、頬を窄めて吸い上げると両股の内側の筋肉がピクピクと震えるのがわかった。
吸い上げる速度を加速して、上あごの奥まで彼の竿を飲み込んでは、歯で扱くようにカリの部分まで一気にすりあげるとと、真史は嬌声を上げながら白い情欲を吐き出した。

僕は真史の竿を口から離しても手の中で握り締めたまま彼の唇までにじり寄り、イカされた後の真史の表情を探った。
真史は半眼で僕を見つめがら、何かを言おうと口を動かしていた。

僕はそれでも彼の竿を手の中に納めながら、扱き出し始めると一瞬、瞑った目を開いて、甘い吐息を吐き出した。
暫くすると、真史は僕の手の動きに合わせて腰を振りはじめだしたが、急に僕の両肩を押し上げながら言った。
「あぁ…凌二さん…触りたいんです…貴方に、あ、貴方に…」
うっとりとした表情で僕の顔を見ながら、肩から二の腕に手のひらをずらし、口をあけながら『はぁ、はぁ』と荒い息遣いをした。

「僕に触りたいの?」
彼は荒い息をしたまま頷き、何度も舌なめずりをしていた。
「…じゃぁ、真史が脱がして?」
僕は焦らすように彼に話し、微笑んだ。

彼のどこにこんな淫乱なものが潜んでいたんだろうか?
物欲しげに僕を見つめ、震える指先を止めようとはせず、期待に満ちた瞳と、流れ出る唾液を光らせて僕のシャツを剥ぎ取り、ズボンのファスナーに手をかけたときに見せたあの、喜びに満ちた表情を僕は忘れないだろう。裸になった僕の身体を愛しげに撫でながら、我を忘れて呟く僕の名前を、僕はウットリと聞きほれていた。

お互い一糸まとわぬ姿でお互いの身体を弄りあうのは、何事にも代えがたいもののように思えた。
 渇いた彼の唇は震えるたびに自分を誘い、ゆっくりとした動作で彼の唇を指で触れた。時には人差し指で唇を強く撫でまわし、薄く開いた口の中へ指を差し入れて彼の舌や口内を指を入れて出し入れを繰り返した。
「僕の指を舐めて」
僕は彼の胸に手をついて耳元で囁いた。
薄っすらと目を開けた真史は、頬を赤く染めて軽く頷き、僕の手首を両手で掴んで自らの舌を使って舐めだした。握る手に段々と力が入り、真史は自分の喉の奥へと僕の指を導くように手を引いた。

時折、クチュクチュと卑猥な音が、堂内に響いていたが真史には聞こえてはいないようだった。
ただ時折甘い吐息と一緒に、真史の声が洩れていた。
「うんっ…うんっ…」
彼の声とうっとりとした表情を時折見せる彼の顔を見ながら、僕は彼の竿を握り締め扱いていた。
「はぁ…ぁ…ぁ…」
口元を唾液で濡らして、呆然と僕を見上げる彼の瞳は、僕から片時も目を離さなかった。
そして、僕の手首を握っていた片手は自然に離れて何かを探して下へと伸びてゆくと、僕の竿をギュッツと握り締めて極上の微笑を漏らした。

真史と僕は競うようにお互いの竿を扱きあい、深いキスを交わして白い欲望をお互いの胸に吐き出した。
息の上がって落ち着きの無い呼吸をしていたが、不意に真史が僕を抱き寄せて恐々と僕の耳に囁いた。

「…僕を浚ってください」
僕は彼の言葉を漫然と聞いていた。   

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