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10)貪婪な恋人

それからの二人はまるでまるで逢ってはいけない「ロミオとジュリエット」のように人目を忍び、誰にも知れないようにと姿かたちを偽って逢うようになった。

人知れずこっそりと僕たちは逢った。
普段の学校で見知らぬ同士で、やり過す。
そして貪りあうように身体を求め合うのだ。
緩急を繰り返す僕たちの関係は、常に甘美な疼きとなって僕の身体を満たした。
その日々の逢瀬は僕に生きる活力を与えてくれた。
次第に身体の疼きは、常に飢餓状態で何をしても真史を欲しがった。
僕は満たされたくてしばしば、真史を試した。

―――僕たちは、知らない者同士を演じよう。
―――はい。
―――演技だよ? 判るね。
―――はい。
―――決して、覚られてはいけないよ。これは、愛の試練だ。

肩が触れそうな傍までやってきても、お互いはそ知らぬふり。
俯いた彼の睫毛が小刻みに震える。
僕は度々、彼を反応を探るようにやってきてはそ知らぬふりをして、彼の数センチ横を通り抜ける。
すると、彼は驚いたような表情をして、顔を伏せて僕から視線をそらす仕草を繰り返す。
―――ゾクゾクする。
彼の痴態を思わせる素振りが僕を捕らえて離さないようだ。

彼に悪戯を仕掛ける度に、返る反応が楽しくて僕は次第にその行動をエスカレートさせていった。
 ある時、僕は彼の傍を通り過ぎるときにさりげなく、彼の指に触れた。
指は僕のものでない感覚を得たように、激情が身体中を駆け巡る。
彼は感じるだろうか、僕が感じた感覚を。
それはまるで共鳴すかのようなお互いの熱の伝え方だった。
青白く顔色を変えても尚、僕の言いつけを守るように、身体を振るわせて耐える真史は、絶頂を迎える直前のその時の表情に似ていた。

僕は彼の側に居たいが為、彼の息遣いを感じたいが為に学校へ通った。
身体は現金なものでそれほど無理を強いなければそこそこ動く事ができた。
前よりもずっと学校に行く時間が増えて自分の生活に違和感を覚えなくなっていった。
僕が丈夫になったのは、母は自分の信心の賜物だと言い、今以上にご寄進に励み、父はただ変わらぬ微笑をくれた。相変わらずの二人の姉達は僕と同じ穴の狢であるが結えに、僕には何の反応も示さなかった。

極彩色に彩られた甘い学校生活も、僕の卒業とともに終わりを告げようとしていた。
 しかし、僕がそんなことで今のこの甘い生活を自ら手放すはずが無い。
彼が、僕が卒業してこれ幸とばかりに別の人間を愛そうとしても、それだけは絶対に許さない。彼は僕のモノであり、僕は彼のモノだからだ。
僕は彼が永遠に僕のものでいて欲しかった。
そう、強く願ったのは真史の態度が僕を不安にさせていたからだ。
卒業が迫ってゆくほどに、真史の顔色は悪くなり、節目がちに言葉を紡ぐようになってしまったからだった。
 元来、快活な青年ではない彼のことを思うと、あまり気に病むべきことではないように思われたが、僕は何も言わない真史に不安を感じずにはいられなかった。

卒業式を目前に控えたある日、僕は真史に問うた。
「卒業したら僕を忘れる?」
「……」
「僕の側から離れてしまう?」
「……」
嫌味な質問だったと思う。
どの口がそれを言うのかと思えるほど僕は真史を傷つけた。
それはまるで「愛しているよ」と囁くように、幾度も繰り返した。
真史は俯いたまま、まんじりともせず彼の膝の上に置いた両手の握りこぶしには青白い血管が浮かんでいた。
 僕は捨てられることを極端に恐れていた。
彼を支配下においているように振舞っていたが、その実情はあまりにも傍目と違っていた。僕は全てにおいて彼の奴隷だった。身体も心も何もかも、彼なしでは息をするのさえひとりでは出来ない程に彼に依存していた。

どんな暴君然とした態度で彼を振り回そうとも、彼は穏やかに笑いながら僕をその全てで許すのだ。

僕が彼から離れられないと確信している真史は、僕がどんな仕打ちをしようとも彼は笑って僕を許すのだ。それは、この世のものとも思えない極上の微笑で。
その自信は何なのか?
僕が、僕自身が彼を裏切る事はないと知っているからだろうか?

僕の為になら何でもしようと、その身すら投げ捨ててしまえるほどの激情が彼の中には潜んでいる。そして僕はそれを知っている。知っているが故、僕は彼に欲求するのだ、「その身の全てで僕を乞え」と。さすれば、僕は裏切らない。
決して裏切りはしないだろう。

卒業式の帰り道、又、いつものようにお堂の中に入ると、そこには先に到着していた真史の姿があった。
薄暗い埃の舞う朽ちた堂内に佇む真史は、日の光の中で見るよりも、尚一層色気があった。僕は心の中でむしゃぶりつきたい衝動に駆られたが、その瞬間、真史が僕に向かって走りより、今までにない力で僕を抱きしめて僕の顔を両手で覆うと、あり得ない速さでキスをした。

真史からの強引とも言えるキスは初めてだった。
いつも、僕からしていたセックスは常に僕が主導権を握り、僕が彼を求めて彼が与えるものだった。
しかし、今初めて真史が僕を求め僕を貪ろうとしていた。
性急過ぎる真史のキスは甘美で優雅なシロモノではなく、まるで野獣のように激しく、僕の舌を吸い上げ口内に自分の舌を出し入れして僕という名の口が彼の口になりえるように、まるで一つのもののように溶けてゆく感覚を与えた。

真史は僕の股間にやおら顔を埋めてズボンの上から口に含むような仕草を繰り返し、僕自身がやや反応しかけると、彼は戸惑うことなく僕のズボンのチャックを下げて下着と一緒に足元までズリ下げた。

彼は性急に追い立てるように僕の雄を握り締め、口に含んでは奥まで飲み込み、吐き出しては肉厚の舌で舐めまわすといった行為を続けた。爛々と輝く黒い瞳は僕を欲して、叫んでいるように見えた。

僕は真史の意外な行動に戸惑いもあったが、初めて自分を強く求められたように思え嬉しくて、彼の奥に潜む哀しい気持ちまでは汲み取る事が出来なかった。僕は真史にに急かされるようにして床に横たわると彼は下半身を露にして、僕の上に跨った。目の前に現れた彼の雄は大きく膨れ上がり、赤黒く色づき既に濡れていた。
僕のものを片手で掴んで撫でる様に数回すりあげると、空いた片方の手で己の尻を掴んで押し広げて僕のものを飲み込んでいった。

「…ぁぁ…っ…凌二さぁ…ん」
真史は熱でうなされた様に甘い声で僕を呼んだ。
僕はその声に惹かれるように彼の柔らかい尻を両手に収め押し開いて、更に奥へ誘うように引き入れた。
彼の後腔は息づくように僕のものを中へと導くと、彼のものも反応するように大きく張りが増して姿を変えていった。
真史は僕を銜え込んだまま、身体を前後に揺らしはじめた。
「もっと…も…っと…」うわ言のように繰り返し、自ら欲する場所を探り当てるように身体を揺らした。
そんな真史を僕は一驚したが、なすがままにその快楽を味わった。
彼は僕の背中を掻き毟り、時には両手で僕の尻をわし掴んで、自ら引き寄せるように真史の内部へ導いてくれた。
その行為の一つ一つが僕には新鮮で、彼の見事なまでの裸体がより一層僕を魅了した。
「りょ…凌二さ…んっ…ッ…」
真史が何度も甘い声で僕を呼んだ。
その度に僕は下から真史を強く突き上げると、甘い声を漏らし僕を覗き見る。僕はその声に惹かれるように彼の柔らかい尻を両手に収め押し開いて、一層強く突き上げた。
僕の名を呼びながらも、うっとりとした表情を浮かべる様は酷く幼く見えた。
しかし、その動きは狡猾さを漂わせ、僕を逃がさないように絡みついた両足が酷く卑猥に見えた。

大きく反り返った真史の雄はダラダラと液を垂らし、その硬度を増すようにピクピクと震えていた。僕はその欲望に手を伸ばし握りしめた。彼の背中が一瞬、跳ね上がったがそれでも僕が、真史の雄を手中におさめて激しく上下に扱き上げると、彼は嬌声を上げ、一瞬、強張ったように動きを止めると、突然身体を小刻みに震わせると、勢いよく白濁した液を撒き散らした。
絶頂を迎えた彼の内部が強く締まると、僕の雄を強く締め付け、下半身に痺れるような感覚が指先にまで広がり、中心の熱が伝導してゆく様は僕の思考を奪うようだった。

いつにない真史の行動を訝しりながらも、彼から与えられる甘美な快感に僕は身を委ねた。

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