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5)真夜中のオシレータ −後編−

その夜は、前週からたまっている仕事をこなすために深夜残業をする予定だった。静かな環境でマイペースで仕事が出来るので、特に体調が悪くなければ問題はない。しかし、風邪気味で少々熱っぽかったため、急ぎのデータ取りだけ終えたら帰ることにしていた。夜中の12時を過ぎ、大方の作業を終えることができた。コーヒーで一息入れてから片付けに入ろうと席を立つと、廊下の方から足音が近づいてきた。守衛はさっき回ってきたところなので、誰なのかと思いドアの方を見ると、そこには嵯峨の姿があった。

「あっ、嵯峨さん。お、お疲れ様です…」
とっさの事にどぎまぎして、どもってしまった。
「やあ周防美さん、独りで徹夜なの? お疲れ様だねえ」
「いえ、もうすぐ帰るとこなんですけど。嵯峨さんこそ、今日は遅いんですね。あ、コーヒー入れましょうか?」
「うん、ありがとう。いやね、さっきまでずっとP社と電話会議だったんだよ」
P社はヨーロッパの企業で、先方の時間の都合に合わせた会議だったらしい。
「凄いですねえ、電話会議だなんて。僕らなんか英語で電話かかってきただけで、冷や汗ものですよ」
「必要に迫られたら喋れるようになるもんさ。周防美さんは英語はどうなの?」
「全然ダメです。TOEICなんかずっと400点レベルだし」
「まあウチは英語できなくてもそこそこ昇進できるけどね。で、他社さんと並んだ時に恥ずかしい思いするんだよな。周防美さんは海外赴任とか希望してないの?」
「僕、海外旅行もしたことないんですよ。日本語通じない所に行くなんて怖くてとても」
「へえ、箱入り息子なんだ。じゃあ今度、海外出張の時に周防美さん連れて行っちゃおうかな」
「冗談キツいですよ。僕なんか、本当に荷物持ちにしかなりませんから」

そんな事が実現する筈はないのだが、「嵯峨さんと出張」という新たなオカズを与えられた事に悦びを感じつつ、コーヒーを二人分入れた。
コーヒーを片手に世間話をしながら、嵯峨は奥の実験室に一緒に入ってきた。こんな時間に二人っきりで話ができるなんて、風邪気味なのをおしてでも仕事をした甲斐があった。ひとしきり話をして会話が途切れたので、残りの作業にとりかかろうとした。嵯峨は部屋を出るでもなく、後方の椅子に座って自分の方を見ているようだ。一緒に居られるのは嬉しいが、何で帰らないのか不思議に思っていると、不意にポンと肩を叩かれた。

「あーこれ、ダメだよ」
「えっ?」
「これ。ここのピン外れてる」
そう言って、計測器のパネルに並んだピンの一つを長い指で摘み、正しい位置に差し込んだ。
「あ、ほんとだ、すいません…」
嵯峨はフッと笑うと、今度は両肩に手を乗せてさすりながら、
「周防美さん毎日遅くまでやってるから疲れてるんじゃない? 今夜はもう帰ったら? 車で送っていってあげるよ」
そして、諭すように言った憧れの人の口から、次の瞬間信じられない言葉が出た。

「それとも私と一緒にここで仮眠するかい?」
肩に置かれた手が首筋に移動する。
「……え?」
言葉の意味がつかめず聞き返すと、嵯峨はネクタイを緩めながらこう付け加えた。
「私とここでファックしないか、ってこと」
「…?!」
いくら英語が苦手でも「ファック」という単語が何を意味するかは知っている。
「あ、ははは? 何言ってんですかもう、嵯峨さん…」
笑ってはみたものの、驚きのあまり声が裏返ってしまっている。
「初めて見た時から綺麗な子だなって、ずっと狙ってたんだよ。それに君、いつも色っぽい目で私の事を見てるじゃないか」
後ろから抱きすくめ、首筋に唇を押し付け、笑いながらそう言った。

気付かれてた! 確かに妄想の中では何度となくこの男に抱かれてはいるが、それが顔に出ていたというのだろうか。彼の目に自分がそんなに物欲しげな顔で写っていたなんて! 恥ずかしくて逃げ出したかったが、逃げ出そうにも、既に上着のボタンとズボンのベルトを外され、股間に手を突っ込まれている状態では身動きができない。嵯峨が椅子をくるりと回転させて正面に向き合うと、今度は乳首を愛撫し始めた。

「いつ誘ってくるかと思ってずっと待ってたのに、君、じらし過ぎだよ。もうタイムアウトだから」
「や、やめて下さい、嵯峨さん。僕…これ今日中に終わらせない、と、ダメな……あぁ……」
さっきピンを摘んだその長い指で、乳首を摘まんでは舐め、舐めては摘みを何度も繰り返され、上半身は溶けそうに力が抜けていくのと裏腹に、下半身の中心ははち切れそうに逞しくなってしまっている。
乳首を弄ぶ手を休めることなく、嵯峨は体の中心に向かって舌を這わせている。
「ほう、なかなか立派な息子さんじゃないか。お父さんに似て色白なんだ」
満足げな笑みを浮かべた嵯峨は改めて唇を舐めると、色白の部下の息子を一気に頬張った。

「ひゃあっ、止めてえっ……さ……が……さん、僕、こんな……」
叫びに近い声にもお構いなしに、嵯峨は熱心にしゃぶり続けている。つい先程まで、クールなノンケだと思っていた思い人の豹変振りに、頭が混乱の極みに達っした。それと同時に下半身の方もピークに達してしまい、あっという間に上司の口の中で果ててしまった。嵯峨は若い獲物の精をゴクリと飲み込み、
「美味しかったよ、裕貴くん。若いから凄い量だね。本当は顔にぶっかけて欲しいんだけど、この椅子布張りだから的外しちゃったらまずいよねえ」
この人変態だ!! その変態の口の中に放ってしまった自分はもう変態の仲間入りなのか。 
涙で目が曇る自分に、容赦なく、変態はことをエスカレートさせていく。作業机の上で四つん這いにさせられ、下半身を剥き出しにされた。

「思った通り可愛いお尻だねえ。ほんと君ってどっから見ても美人で嬉しいなあ」
「ダメ……お願い、止めて下さい。だ、誰か来たら……どうするんですか…」
「守衛は朝まで来ないよ。それにさっき鍵もかけといたから大丈夫」
「いつのまに……そんな、は……ああ……ん」
「私がこんなチャンスを逃す筈ないだろう。もう十分潤ってるね、挿れていいかな? 私は早く君の中に入りたくて堪らないんだよ。」
「やっ、ほんとに、止めて……。僕、そこはまだ……ないんです……」
「え? こんな可愛いお尻、まだ使ったことないっていうの? 嘘だろう?」
「ほんとですってば……。僕まだ誰とも付き合った事な……あぁっ……」
「信じられない。もし私が君だったら、毎日男を喰いまくってるけどなあ。じゃあ痛くないようにしてあげるからね。正常位の方が安心するかな?」

そう言って、あお向けに寝かされ、裸の下半身を大きく開かれた。机の冷たい感触に鳥肌がたった。嵯峨が自分の上にゆっくりと覆い被さってきた。いつも身にまとっている香水の匂いに隠されていた、大人の男の匂いがした。見下ろして見つめるその瞳には、昨夜の別れ際と同じ優しさがあった。広い背中に手を回し、ずっと抱きつきたかったその胸にしがみついた。ここで初めて嵯峨と唇を触れ合った。映画でしか見たことのない、奪い合うような激しいキスを初めて味わった。

長いキスの後、嵯峨が上体を起こし、ベルトを外してファスナーを下した。怒張して頭を持ち上げた嵯峨の男性自身は、自分の物よりも遥かに大きく浅黒く、持ち主同様の威圧感があった。それを収めるべき場所を、指を使って丁寧に揉み解していく。
「今から挿れるからね。力を入れちゃだめだよ」
挿入された瞬間は引き裂かれそうな痛みに息も止まりそうだったが、嵯峨のいう通りに力を抜くよう努めた。そのうち抜き差しする嵯峨をスムーズに受け入れることができていた。が、本格的に風邪の熱に浮かされ始めたのだろうか、次第に痛みも快感も感じることができなくなっていた。ただ、思いもかけず嵯峨と繋がることができた幸福感に、いつまでも酔いしれていたかった。

真夜中の実験室、オシロスコープの青い光が月明かりのように、作業台の上で匙になって重なり、揺れている二人を静かに照らしていた。

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