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24)やっぱりネコが好き

今年は、8月に長期の海外出張が入ったおかげで、裕貴と夏休みが合わなくなってしまった。
一週間以上も休みがあるのだから一緒に来ないかと誘ってみたが、先約があるからとあっさり断られた。食事が不味く男のルックスもイマイチ楽しめない国で仕事を終え、やっと夏休みが取れたのは、9月の声を聞いた頃だった。

今でもふと思い出すのは今年の正月休みのこと、裕貴が何年かぶりに私の家で過ごしたいと言ってきた。昼間はお互い用事があって出かける事はあったが、夜は殆ど一緒に過ごすことができた。そんな生活は何年ぶりなのかも思い出せないくらい久々のことだった。一緒に暮らす事を半ば諦めていた身としては、夜遅く帰宅すると家に裕貴がいるという事が何より嬉しい。例え毎晩食事を作らされることになろうとも。

「なあ裕貴、私は1月は海外出張がないから、このままウチに居たらどうだ? 昔みたいにセックス三昧できるぞ」
「こう見えても僕は結構忙しいんだよ。誰かさんが下腹出てるって言うから腹筋も鍛えなきゃいけないしね。ここからじゃジムには通えないし」
「ジムなんか行かなくてもうちにあるマシン使えばいいじゃないか。それにジムなんてホモばっかりだぞ?」
「誰もあんたには言われたくないと思うよ」  

人の気も知らず、同棲気分の正月休みが明けると裕貴はさっさと自分の家へ帰ってしまった。ゴールデンウィークには何年かぶりに箱根の温泉旅館でゆっくり過ごせたが、それ以降は数えられるほどしか会っていない。会えば思い切り甘えてくる癖に、自分から会いたいとは言わない。全くこの男は文字通り猫みたいな奴だ。それとも、前々から思っていた通り、やはり何か私に隠している事があるのかもしれない。サッカーの練習がオフになったある休日、今度は私が裕貴の家に行くことにした。これもいつ以来なのかも思い出せないくらい久々のことだ。    

朝早くメールで連絡したが、返信はなかった。どうせまだ寝ているのだろうと思い、インターホンを鳴らさずに部屋に入った。玄関に踏み込むと、今まで見た事がない位に散らかっていた。今までは、私が来るとわかっている時だけ綺麗にしていたと思われる。と同時に、これは来客がない生活をしている証拠だろう。1DKの部屋の床に、技術書、英語の教科書、雑誌などが散乱している。バイク雑誌やゲイ雑誌に混じって、ノンケ向けのファッション雑誌……これは新発見だ。身なりを構わなくとも見栄えがするように生まれついたこの男は、ファッションという ものに余り興味を示さない。これまで私が選んだ服を文句も言わずに着てくれていたが、もう50代のゲイのオッサンの趣味は受け入れられないという事なのだろうか? そう思われるのは仕方ないとしても、この雑誌に載っているような最近の若者の格好は、35才の男には似合わないと思うのだが。それ以上に不思議な発見物が、数冊転がっている「料理本」だ。食事を作る事にも皆目興味がなかった男が、何のためにこんな物を?

全開のカーテンから朝日が差し込んでいる部屋で、裕貴は、この部屋には大きすぎるダブルベッドに胎児のように丸まって眠っている。濃紺のTシャツと白い肌のコントラストが美しい。私が音もなく入ってきたのでまだ熟睡しているようだ。添い寝をしてやるべく、ベッドに潜り込んだ。後ろから優しく抱きしめて、ボクサーの中に手をすべらせ冷たい尻を撫でてやる。
「ねぇ、裕貴君、おじさんとエッチしない?」
「……」
「ねえ?」
「し な い」
「何で〜? おじさん裕貴君とエッチしたくて、早起きして車飛ばしてきたんだよ? それにほら、裕貴君だってこんなに元気に「こんにちは」してるじゃない」
「それは「おはよう」だよ……僕3時間ほど前に寝たところだっての……」
「3時間ほど前に寝たところなのにちゃんと朝勃ちしてるんだ? 若いっていいねえ」
憎まれ口が返ってこない間に、元気な股間の息子に挨拶をする。頬擦りをして「お目覚めのチュー」だ。昔はこれが日課だったのに……。
「んん……何? ……髭が、痛い……ってば」
ここ最近は社外の会議やメディアの取材もなかったので、無精髭風に髭を伸ばしている。知り合いのゲイの間では勿論のこと、まわりの評判は概ね良好だが、誰に誉められるよりも裕貴に気に入ってもらいたい。とは言っても、この顔を見せる前にコトを始めてしまったのは想定外だったが。  

寝込みを襲って、朝っぱらからくちゅくちゅと卑猥な音を響かせていることに久々の興奮を覚える。裕貴も同じ気分なのだろう、ご奉仕されながら自分の乳首を弄んでいる。
「あっあっあっ、ああ…...ぁん、い、逝っちゃう...…崇、イクぅ……」
お目覚めの一発目は、私の口の中で処理された。久々にザーメンが勢い良く飛んでいく様が見たかったのだが、シーツを汚すと後で文句を言われるので、口の中で味わった後で、裕貴の肛門に塗りたくり、挿入の準備にとりかかった。

これはほんのイントロだったが、残暑の日差しの暑さも手伝って、二人ともすでに全身が汗ばんでいた。男二人分の汗と体液の混ざった匂いが、フェラチオでその気にさせておいて、おあずけを食わせて帰ってやろう、などと意地悪を目論んでいた事などすっかり忘れさせていた。自分が着ていた服と裕貴のボクサーを取っ払い、裕貴を組み伏せてキスすると、裕貴が言った。
「僕が上になる」
「お馬さんごっこしたいのか?」
「それじゃ見えないからだめ」
「見えないって何が?」
「トレーニングの効果。ほら、もう下腹出てるって言わせないから」
そう言って、素早く私の上に跨った。
「どう?」
「うん、前と違ってぷよぷよしてないね」
「人のチンコ扱きながら言ってんじゃないよ」
「トレーニングの効果は後で確かめるから、今はチンコに集中させてくれないか」
「こ、この、チンコ星人がっ、ああん……」
猫
裕貴の希望どおり、全身にくまなく指と舌を這わせて、ジム通いの効果を確認した。確かに体幹部は以前より締まってきているようだ。私は自分の身体を鍛えてはいるが、筋肉フェチという訳ではない。希望を言わせてもらうならば、腹筋よりも大臀筋を鍛えてこの桃尻を維持していてほしい。それと、受けなのだから肛門括約筋は必須だ。

久々にベッド上の早朝トレーニングで、それまで溜まっていた欲望を放出した後は、シャワーでそれらを流し落とした。シャワーの後は、知り合いのリストランテで遅い朝食でもと思っていたら、裕貴が朝食を作ると言い出した。その昔まだ初々しかった頃、料理を手伝うというのでゆで卵を作らせたら、湯が沸騰している鍋に卵を放り込まれたことがあった。その男が今、オムレツとサラダらしきものを作っている。随分と成長したものだが、いったい何が起こったというのだろうか?

「オムレツは僕用に薄味だから、崇は自分で調整してね」
「私も減塩しないといけないので、このままでいいよ。しかし、なんでまた料理を始めようなんて思ったのかな?」
「まあ僕もそろそろ、真剣に体調管理をしないといけない年頃だから、外食とか出来合いのものは控えてるというわけ」
「ふーん。それだけ?」
「もし崇が料理作ってくれなくなったら、自分で作らないといけないし」
「私の家に居るならいつでも作って差し上げますけどね」  

いつものように、その返事はなかった。が、しかし、来年早々に事業所の移転が発表されたら、この態度が一変する事が期待できるかもしれない。極秘事項ではあるが噂は広まっている筈なので、すでに知っているかどうかは不明だが、裕貴の通勤時間は今の3倍以上になるだろう。新しい事業所は、私の自宅からは30分ほどしかかからない。自分の努力ではどうしようもなかった事を、こんな棚からぼた餅的な事での実現を期待するのは悔しいような気がするが、自信半分・期待半分で構えるとしよう。いかなるときも、猫は自分の居心地のいい場所を選ぶものだから。

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